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狩りの時間

「狩りへ行かないか?」

 ある日の事、突然王様からそう誘われた。

 狩りとは、追い込んだ獲物を弓矢で射ったりして獲るという例のアレだ。超インドア派の俺にとっては、そういうリアルが充実した系のイベントは苦手なのだが、実際の狩りがどんな物なのか気にはなるので、暇だし行ってみる事にした。


 晴天の日を選んで、王族だけが入れるという御禁制の狩り場に、王様御一行と一緒に出向いた。

 御一行の内訳は、王様の従者や護衛の兵士、狩場で獲物を追い込む為の勢子(せこ)、後は城の大臣なんかもいて、全部で50人ぐらいはいる大所帯だ。俺は王様が所有している馬を一頭貸してもらい、それに跨っている。例の如く馬はお付きの兵士が手綱を引いてくれていた。

 王様達に連れて来られた場所は、森や林が近くにある平原で、向こう側が見渡せるぐらいに広かった。

 到着してしばらくすると狩りが始まり、追い役の勢子達が森の中に入り獲物を見つけ、こちらが待機している開けた場所まで追い込んでくる。勢子達の上げる、「ワーワー」といった掛け声が近くなってくると、角を生やした一匹の牡鹿(おじか)が、木々の中から飛び出してきた。

 王様が持っていた弓で獲物に狙いを付け、(つが)えた矢を引き放つ。ちなみに王様はポニーのような小さい馬に跨がっている。

 王様が放った矢は獲物の方とは見当違いの、明後日の方向に飛んでいった。

「アーッ!向こうに裸の美女が!」

 みんなが矢を目で追っていると、王様の近習(きんじゅう)の一人が突然大声でそう言い、獲物がいる方向とは反対側の方を指差した。みんなが近習が指差した方を一斉に見る。だがそこには何もなく、ただただ平原が広がっているだけだった。

「あっ、見間違いでした!すいません!」

 近習がすぐに頭を下げる。意味がよくわからず首を(かし)げながら、牡鹿が逃げていった方向を見る。するとそこには、見事に矢が首筋に刺さり倒れている牡鹿の姿があった。

 みんなが拍手をして歓声を上げる。王様が片手を挙げてその歓声に応えた後、獲物の側まで行き見分を始めた。「見事な鹿ですね!」、「流石、陛下!」とか言って、みんなが口々に褒め称えている。

 見分が終わり、また狩りが再開された。次の獲物が俺達の前に追い込まれてくる。

 次に追い込まれてきた獲物もそんなに大きくはない牡鹿で、王様がそれに狙いを付けてまた矢を引き放った。しかし、矢はまたしてもとんでもない方向に飛んでいっている。

 近習がまたなにかを叫んで、別の方向を指差す。そちらを見てみるとやはり何もなく、すぐに獲物の方を振り返ると、矢が刺さり倒れている獲物の姿があった。

 露骨極まる接待だ。他の者達もそれを指摘したりはせず、それが普通とばかりに振る舞っている。

「勇者様もどうですかな?」

 王様が勧めてきたが、俺は断った。この方法なら弓矢を射った事がない俺でも、簡単に獲物を獲れそうだが、あんな露骨な接待を喜べる気はしない。

 そんな感じで王様は、鹿や兎や狐など獲物を弓矢で次々と狩っていった(本当に王様が自分で狩った訳ではないが)。


「……次は熊とか狩ってみたいなぁ」

 王様が普通の狩りに飽きてきたのか、なかなか無茶な事を言い始めた。

 追い役の勢子達が必死になって熊を探し出し、なんとか開けている場所まで追い込できた(追い込んできたというより、追われてきていた)。

 今度も王様が矢を放ち、近習がなにかを叫びだす。王様の目が少しだけ獲物の方から離れると、護衛の兵士達が熊に向かって一斉に矢を引き放つ。熊はハリネズミようになって倒れた。

 流石に不自然過ぎる。だが近習は、

「陛下の必殺ショット、『スターライト・シューティング・アロー』が炸裂したようです!流石、陛下!」

と、言っていた。

 その後、王様は『スターライト・シューティング・アロー』を連発していた。

 王様が、「(かも)鍋が食べたい」と言って、森の中に矢を放つと矢が入った鴨鍋が見つかったり、もうメチャクチャになっていた。


 王様が狩りに飽きると、城の重臣達も狩りに参加した。彼等の時には露骨過ぎる接待はなく、普通に狩りを行っている。

 昼を少し過ぎた頃になると王様が、「疲れたのでもう帰りたい」と言い出したので、今日はそこでお開きとなった。

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