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そして世界は平和になった!

 俺達3人はなんとか無事に、戦士の国まで帰り着く事ができた。

 

 俺達が魔王城の浮遊装置を破壊したので城は地上へと落下し、魔物達がかなり混乱しているという情報を、フレデリックさんに報告する。

 フレデリックさんはそれを聞き、魔物達に対する本格的な侵攻作戦を開始する事を決めたようだった。

 かつてから何かあった時の為にと召集しておいてもらった軍勢が、各地から続々と集まってくる。王都からの軍勢も当然やって来ている。流石にやって来た軍勢の中では一番数も多く、装備も立派だ。他の町などからも義勇兵がやって来ていて、驚いたのはその中にエルクレールとその子分達が混じっていた事だ。

 偶然、エルクレール達を見かけたので声を掛けると、彼女達も驚いていた。まさか俺達が、噂の勇者様だとは思っていなかったようだ。彼女は武器らしい物は何も持ってない様子だったので、どうやって戦うのか聞いてみた所、「アタイの武器は拳」だと答えた(彼女はモンクらしい)。


 まずは魔王城を囲うバリアーをなんとかする為に、『四魔鬼』と『悪魔四十八』を倒さないといけない訳だが、新魔王が魔王を辞めようとした事を知ってやる気を失くし、魔界へと帰ってしまった悪魔四十八も多く、残った者もこんなにも早くに人間達が攻めてくるとは思っておらずに油断していて、あっさりとやられてしまう者が多かった(各地の有志達に多勢で攻め込まれ負けている)。

 魔物側の頼みの綱でもある四魔鬼も、4つに分けられた人間側の軍勢に、各個に攻め込まれていた。

 アーリエが魔王城で仕入れてきた、『各四魔鬼の弱点の関する情報』があったので、それを元にした作戦を立てて攻め込んでいる。

 俺達3人は、あの面接があった南の砦を攻めかける作戦に参加している。面接の時にいたデカくて岩みたいな奴が、この砦を守る四魔鬼みたいだ。そいつの弱点はどうやら『水』らしいので、雨が降る日を選んで砦に攻め込み、砦の屋根を全部破壊した。情報通り岩っぽい四魔鬼は、雨を浴びて相当に弱っている。後はバケツリレーでまた水を浴びせまくり、岩っぽい奴の防御力が限りなくゼロになった所で止めを刺した。

 他の砦でも似たような感じで攻略が進み、四魔鬼をすべて倒す事が出来たので、城を囲んでいたバリアーも綺麗に消え去っていた。


 人間達の軍勢がゾロゾロと、魔王城の中へと侵入して行く。魔王軍はまだ新魔王が即位したばかりであり、体制を整えている最中だ。しかも例の俺と新魔王との騒動があったせいで、内情がかなりグダグダになっている。そのせいで城の魔物達は人間側の来襲に上手く対応する事ができず、戦わずに投降してしまう者が多かった。

 城に侵入した部隊に配属している魔道士達が魔法による通信システムで、「大広間の制圧完了!」、「厨房の制圧完了!」、「一階の全フロア、制圧完了!」などといった内容を、軍の司令部に所属しているアーリエに逐一報告してきている。

 俺とアーリエとプロヴダの3人、フレデリックさんや王都の軍を指揮している将軍などが、城の上階へと安全に歩みを進めて行き、遂には新魔王の部屋の前まで辿り着く事ができた。


 護衛などを含めた30人程の人間が、新魔王の部屋の前でワラワラと(たむろ)している。今の所、新魔王は俺達の前に一度も姿を見せてはいない。投稿した魔物からは、「新魔王様はあれからずっと部屋に引きこもられてしまっている」と教えられていた。

「オイコラッ、魔王!部屋から出て来い!」

 部屋の扉に向かってプロヴダが、代表して声を上げていた。

 すると扉が少しだけ開き、眼鏡をかけた新魔王が顔を出した。

「うるさいなぁ、ご飯はまだいいよ……」

 寝惚けているのか、そんな事を言っている。

「お前を倒しに来たんだよ!」

 新魔王がキョトンとした顔をした。それからプロヴダの後ろにいる人間達にやっと気が付いたようで驚いている。

「えぇ~っ!城の魔物達は!?」

「ほとんど倒しちゃったよ!」

 新魔王が『ムンクの叫び』みたいな顔をしながら、声にならない声を上げた。ずっと引きこもっていたせいで、状況がよくわかっていないんだろうか。

 みんなが新魔王を早く倒せと息巻いている。だが、俺は彼を倒してしまうのに内心では否定的だった。彼の心を裏切り引きこもりにまでなってしまったのは俺のせいだし、元引きこもりだった者としても哀れに思えてくる。俺から見た新魔王はそんなに凶悪には見えないし、まだ一度も人間側に危害を加えた訳でもない。

 オラオラと五月蝿(うるさ)いみんなの前に立ち、新魔王と顔を合わせてみた。新魔王は俺の顔をまじまじと見つめると、やがて目を見張りだした。俺は新魔王に部屋へと入るように促し、一緒に中へと入った。

 扉を閉めると、新魔王が高笑いを上げ始めた。

「フッ、……フハーハッハッハッハッ、ガッグッゲッゲホゲホッ…………。そうか、そういう事だったのか!素晴らしい!なんという策略だ!私ともあろう者がすっかりと騙されてしまっていたぞ!」

 まぁ、そう思うよな……。俺からすれば、なんでバレなかったかのかが不思議なんだが。

 高笑いしてちょっと冷静になった新魔王に、あれからの事を尋ねてみた。新魔王は俺達が逃げだした後、ショックで引きこもりになり、この部屋でずっと趣味の模型造りに(いそ)しんでいたようだ。魔王軍がどういう状況になっているのかについては、考える事を止めていたみたいだった。

「こうなってしまっては仕方あるまい……。この首を持っていくがよい。聖剣を持つ勇者に葬られるのなら、魔王としても悪くはない最期だ……」

 新魔王が全てを諦めて、俺に首を差し出す覚悟をしていた。しかし、俺に首なんか刎ねられる訳がない。なので、できればここから逃げて欲しいと説得してみる事にした。

 俺の懸命な説得にも関わらずに新魔王は、「生き恥を(さら)したくない」だとか言って、(かたく)なにそれを拒否している。「首を持っていけ」、「いらない」の押し問答が続いた。俺は最後の切り札として、新魔王の恥ずかしい行動をみんなにバラすと脅してみた。俺といるときだけに見せた甘えた態度や口調、その他諸々の恥ずかしい行為をちゃんとメモとして取っておいたのだ。新魔王はそれでもグズグズと言っていたが、「今回の事が悔しいと思うなら、ちゃんと生き延びて人間達に復讐しろ。それが本当の魔族としてのあり方ではないのか?」と偉そうに言ってみる。そうなっても困るのだが、そう言わないと人間達にこのまま殺されてしまいそうだ。彼はそれを聞くとやっと逃げる事に同意してくれた。


 新魔王が部屋にあった本棚の書籍の一冊の上端に手にかけ、それを傾けた。すると、棚と棚との間が自動的に開き、下へと降りる為の階段が出現した。それから新魔王は振り返ると、自分が模型の製作台として使っていた机を指で差してから、「あれを君に進呈したい」と言った。机の上には木の箱が置いてある。縦が40センチ、横が30センチぐらいの長方体の物だ。あれはなにかと新魔王に尋ねたが、新魔王は答えなかった。

「また会うかどうかはわからないが、とりあえずはさよならだ」

 新魔王が本棚の隙間を通ると、隙間はまた自動的に閉じていった。


 新魔王の部屋から出て、みんなの前に戻ってきた。けっこう時間が経っていたので、みんながかなり騒いでいる。後もう少し部屋から出るのが遅ければ、中に押し込もうという話にもなっていたらしい。

 みんなに新魔王を逃がした事を伝えた。すると、「なんで逃したのか」と兵士達に詰め寄られ、「今すぐに追っかけろ!」という意見も飛び出している。だが、何故かその意見にプロヴダがキレ出し、「弱い者いじめは止めろ!」と、さっき新魔王に向かって言ってた台詞(セリフ)を忘れたんじゃないか、といった言葉を吐いていた。アーリエも、「もう相手は逃げてしまいましたし、この戦いは私達の勝利です」と、なんとかまとめようとしてくれている。

 フレデリックさんや王都から来た将軍も俺の意を汲んでくれたのか、「この戦いはこれで終わりだ!勝鬨を上げよう!」と、騒動を終わらせようとしてくれた。どこか煮え切らない最後だが、魔王城のあちらこちらで勝鬨の声が上がっている。


 戦士の国に帰り着くと、俺は今回の戦いの英雄として、町のみんなから大歓声を持って迎えられた。出陣した軍勢の先頭に立ち、フレデリックさんや王都から来た将軍の側で借り受けている馬に跨り(馬に一人では乗れないの兵士の人に手綱を引いてもらっているが)、みんなからの歓声を受けながらゆっくりとマーチ家へ帰っていく。新魔王を逃し、実際の戦闘でもほとんど役に立ってはいなかったのだが……。

 その日、マーチ家で行われた祝勝会も終わり、夜半になっていたので俺も自分の部屋に帰ってきていた。そこで例の新魔王から貰っていた箱を机の上で開いてみた。

 ……中身はどうやら誰かの模型のようだった。その模型は魔王城で支給されていたメイド服を着ている。模型の顔の造りは(いびつ)で、人間なのか化け物なのかもよくわからない。だが、細部は新魔王の優れた技術により、見事に作り込まれている。模型の顔をよくよく(うかが)ってみると、どこかの誰かに似ているような気がしないでもない。

 ちなみに模型のスカートの中も覗いてみたが、中がどうなっていたのかは俺と新魔王だけの秘密だ……。

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