新魔王暗殺③
その後は特に何事もなく、部屋から帰された。「良い返事を期待している」とだけ、新魔王から言われている。
それからは度々、新魔王の部屋にお呼ばれされたりしていた。お茶をしながら話をしたりするだけだが。
新魔王は見た目的に言えば、青年ぐらいにしか見えない(背が高くてイケメンだ)。だが、実年齢はすでに50歳を越えているらしく、産まれてこの片、一度も城の外に出た事がないらしい。俺には一目惚れをしたそうで、今回が新魔王にとっての初めての恋になるらしかった。
新魔王の趣味などについても話をした。趣味は模型造りだそうで、一度だけ彼が製作した模型を見せてもらった事がある(模型は新魔王が魔王の部屋に移る前にいた部屋に置いてある)。この魔王城や建築物、モンスターや人間などの(人間の模型はわざとなのか、少し歪に作られている)様々な作品が部屋には飾られてあった。
戦争をする為の作戦会議での際、この模型を使って作戦の内容を煮詰めたりするらしい。
どの作品も細部まで作り込まれ、趣味に対する熱い情熱の様なものを感じた。
そんなこんなで俺の待遇も少しずつ変わってきた。この城に俺だけの個室を与えられたのだ(魔王城で個室を持っているのは、新魔王や一部の側近だけだ)。
アーリエもいつの間にか、魔王軍の幹部候補になっていた。会議でもなかなかの発言権があるらしい。
新魔王とそんな感じの付き合いをしていたが、后候補の件についての返事をまた聞かれてしまった。
一応、アーリエからは返事を延ばせるだけ延ばすようにと言われている。だが、流石にそれも限界かもしれない。仕方がないので、「マオちゃん(新魔王の事)とアタシじゃあ、身分に差があり過ぎるからなぁ……」とか適当に言ってみた。
すると新魔王はハゲるんじゃないかと思うぐらいに悩み続け、遂には、
「私は君の為に魔王を辞める。二人でどこかに隠れて暮らそう」
と、言ってきた。
最初は新魔王が本気だとは思えず適当に流していたのだが、彼は本当に二人で逃げる為の準備を始めていた。俺も今更断わり切れずに困り果て、アーリエにも相談してみた所、「別に二人で逃げても構わないんじゃないですか?」と、冷たく言われてしまった。
そして、とうとう新魔王と逃避行をする予定の日が来てしまう。しかし、計画が何故か魔物の幹部連中に漏れており、逃げ出そうとしている現場を押さえられてしまった。
新魔王が自分の部屋に押し込められ、俺も与えられていた部屋に監禁された。食事などを運んで来てくれている魔物などから聞いた話では、幹部連中は新魔王に魔王を辞めないように説得をしているらしい。
俺は何もする事ができず、部屋でただひっそりと過ごしていた。だが、ある日アーリエとプロヴダが城を逃げ出す為に助けに来てくれた。
プロヴダが魔王城を浮遊させている装置がある場所を教えてくれたので、そこへと向かう。プロヴダは魔王城のいたる所に仕事で出向いていたので、内部の構造について詳しくなっていた。
装置は魔王城の地下にあった。それをみんなで手当たり次第にブッ壊す。乱暴なやり方だが、止める方法はプロヴダにもわからないようなので仕方ない。
緊急事態を知らせる警報が鳴り、地震が来たかのように魔王城が振動する。魔王城には緊急落下防止システムがあるらしいので、いきなり地面に墜落したりする事はない。城はちょっとずつ降下していった。
城が地面に着地した時には、流石に大きな衝撃があった。俺達は隠れて脱出する機会を覗っていたが、城内がかなり混乱していたのでその隙にまんまと逃切る事に成功していた。




