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最初の夜

 アーリエと話をしていると、窓から入る陽射が陰ってきている事に気が付いた。外はもう、夕暮れ時が近いらしい。

「今日はもう遅いので、ここに泊まっていってくださって結構ですよ。ワタシは夕食の準備をしてきます」

 アーリエはそう言い、席を立った。

 彼女が外に出て行くと、俺はテーブルのすぐに上に突っ伏した。今日一日で色々な事があり過ぎて、かなり神経を擦り減らしていたからだ。

 しかし、そんな中でも実は沸々とした期待が自分の中に込み上がってきている。あんな美少女エルフとこれから一夜を供にするだなんて……。これは、俺が得た『モテスキル』のせいなんだろうか?そうでなければ得体の知れないブ男を、女の子がただ1人で住んでいる家に、簡単に泊めたりする訳がないと思う(彼女が凄く優しい子だからという可能性も当然あるが)。少し鼻息が荒くなってきていたので、深呼吸をして落ち着いた。


 一時間後、アーリエが今日の夕食である料理を、すべてテーブルに置き終わった。その頃には室内がだいぶ暗くなっていたので、アーリエはテーブルの真上に吊るしてあったランプに火を入れた。

 料理の献立は、黒くて丸いパンに野菜の入ったスープ。そして、ワインだ。アーリエは俺に、スープを入れて持ってきてくれている。パンはボソボソしていて正直不味い。スープも味が薄い気がする。だが、文句を言わずに黙々と食べた。

 特に会話らしい会話も行わず、ほとんど無言で食事を終えた。

 それからは、すぐに眠る事になった。電気のない異世界の夜は早い。俺は今から始まるかもしれないエロイベントを想像して、少し震えてきた。

 しかし、俺は二階で、アーリエは一階の俺がさっき寝ていた場所で寝る事になった(二階には、アーリエがいつも寝ているベッドがあるらしい)。

 慣れない藁を敷いたベッドだし、まだ興奮も治まらないしで、なかなか寝付けずにいたのだが、やはり疲れていたのでいつの間にか深い眠りに落ちていた。


 目を覚ますと、二階にある窓からは薄らと日が差していた。伸びをしてから一階に降りてみると、アーリエがすでに起きて働いている。

 どもりがちな声で恥ずかしそうに挨拶をしてみる。アーリエは笑顔で挨拶を返してくれた。

 小便をする為に外に出る。外には簡単な作りのトイレがあった。

 ついでに家の周囲を見回ってみる。すぐ側には山羊や鶏などが飼われた家畜小屋、小さな菜園などもある。家の周囲は開けているが、ほとんどが森に囲まれているようだ。

 家に戻るとアーリエが、朝食に麦粥を用意してくれていた。味が薄く慣れない食感なので、俺にはあまり味しくは感じない。朝食が終わってからも、アーリエは色々な仕事をしていた。

 気になった作業は、乾燥させたなにかの草を皿の中に入れて、木の棒で軽く叩いて粉々にしていた事だった。何をしているのか聞いてみた所、これは便秘によく効く野草らしい。近くの村の人が便秘で悩んでいるそうなので、その薬を作っているのだと教えてくれた。

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