マーチ家の人々
アーリエから何故俺達がここにやって来たについての話があった。
すると、フレデリックさんは現在の魔王の状況についての詳しい説明をしてくれた。
今から四百年程昔、魔王が全盛期で世界を征服しようとブイブイいわせていた頃、伝説の勇者が異世界から現れ、仲間達と供に魔王をケチョンケチョンのボッコボコにした。倒される事もなく生かされ続ける事になった魔王は、現在でも普通に生きており、自分の城で引きこもり生活を送っているらしい。
ここまではプロヴダの話でだいたい知っていた。
魔王の姿をそれから見た事がある人間はいないが、たまに捕まえた魔物から聞く話では、ちゃんと魔王城で生きてはいるらしい。
魔王が引きこもってしまってからは、魔物達の勢いも衰え、魔王城がある山の麓で稀に出会す程度だ(俺達がたまに遭遇するモンスターも、昔からすればかなり数は減っているみたい)。
ちなみに戦士の国を建てた伝説の戦士は、マーチ家のご先祖様なのだという話だ。
話が終わり、屋敷内をヘンリーさんが案内してくれた。俺とアーリエはしばらくこの屋敷でお世話になる事になった。大きな屋敷らしく、部屋数もかなり多い。いろいろな所から使者などがやって来るので、その為らしかった。
部屋の案内にプロヴダも何故か付いてきている。俺はプロヴダの後ろから小声で、「メグ……」と囁いてみる。プロヴダはビクッとなり、すぐに振り向いた。
自分が寝泊まりする部屋に案内されたが、俺は荷物を置き数十分待つと、アーリエの部屋を訪れてみた。予期していた通りプロヴダはアーリエの部屋にいる。俺はプロヴダに気になっていた、『何故、名前と年齢を偽っていたのか?』について聞いてみた。プロヴダの答えは、「名前は単に強そうだったからだし、年齢は低いと馬鹿にされそうだった」からだった。これからも家族の前以外では、プロヴダと呼んで欲しいとお願いしてきた。断ってキレられると怖いので、了承しておく。
夕食時になり、また食堂にお呼ばれした。今度はフレデリックさんの長男も顔を出している。名前はローリーといい、体格はフレデリックさんよりも華奢だ。だが、戦士長の息子らしく、ちゃんと身体は鍛えているらしい。性格もプロヴダとは違い、真面そうだ。
食事後のティータイムの最中、プロヴダが俺とアーリエに出会ってからの出来事で、自分が話したくない事以外のほとんどを家族達に話していた。すると話の流れで、今の俺の貧弱さついて触れる事になった。
伝説の剣の持ち主であり、これから魔王城へ行こうとしている者が、そんなに貧弱なようではいかんという話になる。
この国には、『戦士の穴』という少年達の為の訓練施設がある。そこに俺を入れて鍛えてみようという事になった。
そこでは13歳になる男子達が、一人前になる為に三年間、みっちりと鍛え抜かれるらしい(特例で入らなくても少年もいるらしいが)。俺には時間がないので三ヶ月間だけそこに入り、少年達と身体を鍛えてみないかと薦められた。
こちらの世界に来て、可愛い女の子達とイチャイチャしたいだけだったのに、なんだか話がおかしな方向に進んでいっている気がする。正直、そんな男ばかりでキツそうな所に行くのはお断りなんだが、このまま魔王城に行ったしても、何もできないのはわかり切っているので、結局行く事を渋々了承してしまった。




