マーガレット
「やめてよ、パパ!恥ずかしいよ!」
男性はプロヴダを抱き上げたまま、頬擦りをしている。
「髭が痛いからやめてよ!」
男性はプロヴダを降ろすと、家を飛び出した事や、勝手に家宝の斧を持ち出した事について叱りだした。後ろから襲われた事はどうでもいいみたいだ。
「ごめ〜ん、パパ」
プロヴダが甘えた声を出して謝っている。こんなプロヴダの声、初めて聞いた。
「こちらの方達は?」
プロヴダにパパと呼ばれた男性が、俺達の事を尋ねている。
「こっちがアーリエで、こっちがオーク!町で出会って一緒に旅をしてたんだよ!」
……またプロヴダが俺の事をオーク扱いした。流石に信じないだろうが、プロヴダの父親だから信用できない。
「娘がヤンチャしてすみません。末っ子なもんで、つい甘やかしてしまって」
プロヴダの父親は案外真面そうだった。髭面で背が高く、筋骨隆々だ。だが分別ある大人の雰囲気を醸し出している。どうやらジョウロで花壇に水を撒いている最中だったみたいだ。
プロヴダ父が男性の使用人を呼び出して、俺達が連れている馬を厩に繋いでおくように指示している。
それから屋敷の中へ招かれた。プロヴダが旅の最中にあった事をいろいろ話している。
さっきからやはり気になっているのが、プロヴダ父も、町の人達と同様にプロヴダの事を、『メグ』と呼んでいる点だ。後で聞いてみる事にしよう。
まずは屋敷の食堂に案内された。食堂の中央には縦長のテーブルが置かれている。俺達はテーブルの窓際の椅子に並んで座った。プロヴダ父はまた使用人を呼び出して、他の家族を食堂に集めてもらうように頼んだ(今度は女性の使用人だった)。しばらく待つと、5人の男女が食堂に入ってきた。その内の3人の女性が、テーブルの向かいの席に着く。
「まずは私から、あらためて挨拶をさせていただきます。私がこのマーチ家の当主であり、マーガレットの父親でもある、フレデリック・マーチと申します。この国の『戦士長』を勤めさせていただいております。そして、こちらが妻のジョゼフィーン。その隣に座っているのが、長女のエリザベス、その隣が次女のエイミー。そして、そちらに立っているのが、使用人のヘンリーとアンです」
プロヴダの父親のフレデリックさんが、テーブルの上手である長方形の短い側に座り、フレデリックさんから見て左手側の近い方から、紹介した順に女性3人が座っていた。ちなみに俺達はフレデリックさんに近い方からプロヴダ、アーリエ、俺の順に座っている。フレデリックさんの次女の側に、使用人のヘンリーさんとアンんが立っている(2人は年配の男性と女性で、さっき馬を預かってもらう時と、家族を呼び出す時に会っている)。それから、今は留守にしているがまだ長男がいるらしい。
しばらく談笑をしていると、娘さん達の年齢の話になった。長女が18歳、次女が16歳だらしい。
次女が16歳?確かプロヴダも16歳だと言っていた気がする。もしかして双子なんだろうか?の割には成長具合が全然違っている。次女の方は普通の16歳の少女といった感じだが、プロヴダは正直な所、まだ小学生ぐらいにしか見えない。
疑問を思わず口にしてしまうと、フレデリックさんの奥さんは、「メグは今年で12よ」と言った。どうやらプロヴダは年齢を鯖読んでいたみたいだった。
後、みんながプロヴダの事を『メグ』と呼んでいる件についてだ。みんながそう呼ぶので俺達も何故か気を使い、プロヴダの事を「娘さん」とかそんな感じで呼んでいる。
フレデリックさんがさっき紹介した時のように、プロヴダの本当の名前は、『マーガレット』なんじゃないだろうか(メグはマーガレットの愛称)。




