北へ
魔王城の近くには、プロヴダの故郷である『戦士の国』があるらしい
昔、伝説の勇者と供に戦った戦士が、魔王を見張る為に打ち立てたのが、その国なのだとか。
魔王を倒さなかったのは、魔王がまだ生きている方が、人間や他の種族との結束が強まるだろうという、伝説の勇者達の考えからみたいだ。後、魔王を倒すとまたどこかで新しい勢力が生まれ、争いが始まってしまう可能性もある。それを防ぐという意味もあるらしい(隠れ話だが、魔王が生きている方が勇者達の需要が高まり、その後も安心という理由もあったという)。
俺達は王様に挨拶をしてから、北へ出発する事にした。
「おぉ、勇者よ!お名残り惜しいが、お引き止めは致しませんぞ!貴方には大いなる使命があるのですからな!」
また仰々しい台詞を吐いた。
『北へ行く為に凄い装備とかお金が欲しいんですが、いいですか?』という事を遠回しに聞いてみた。王様は露骨に嫌な顔をして、軍資金を少々と馬を一頭だけくれた(セコい)。
そういえば、俺が持っている聖剣の名前を聞いていなかったので、王様に尋ねてみた。できれはカッコ良く、『聖剣○○』とか呼んでみたいからだ。王様から聖剣の名前は、『カニカニモグモグ』だと言われた。伝説の勇者が好きだった物から取ったという。ダサい。
王都を追い立てられるようにサヨナラバイバイし、北にあるという戦士の国を目指した。
王様に貰った馬なのだが、一頭しかいないので荷物を担がせるか、誰か一人だけが乗るかするしかない。だが、何故かこの馬は俺が乗ろうとすると、すごい暴れまくる。アーリエやプロヴダが乗ろうとすると大人しい。
もしかして、いらないからくれたんじゃないだろうかと王様を疑った。
今回もプロヴダが同行をしている。まだ故郷を飛び出してそんなに経ってはいないらしく、帰るのを少し嫌がっていたが、案内役としてちゃんと付いてきてくれていた。
王都を出てしばらくすると、平原の真ん中を走る道の上で、いきなりモンスターに襲われた。道の上でモンスターに襲われるのは珍しい事らしいのだが、とにかく襲われてしまった。
犬っぽいモンスターと鳥っぽいモンスターが3匹ずついる。アーリエとプロヴダが戦闘体勢に入った。
この戦闘に今回俺も参加する事にした。聖剣の威力を試す為だ。伝説の勇者が持っていた伝説の剣なのだから、さぞかし凄まじいに違いない。
剣を鞘から抜いてみた。特にまだ何も感じない。すでにアーリエやプロヴダが、モンスター達と戦っている。
試しに近くにいた犬っぽいモンスターに、剣を振り上げ雄たけびを上げながら向かっていった。そして、剣をモンスターに向かって振り下ろす。
だが、俺の攻撃はあっさりと躱され、逆に尻に咬みつかれてしまった。プロヴダがそれに気付き、犬っぽいモンスターを倒し助けてくれた。
おかしい……。これではただの刃物を持った危ないデブだ。気合いを入れて剣を空中で振ってみたりもしたが、やはり何も起こらない。
結局、モンスターはアーリエとプロヴダが全て倒した。




