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勇・者・爆・誕!

 一人の兵士が俺の様子に気が付いた。「あっ、あっ、あっ」と、声が出ないのかそう呻いている。その兵士の異常な様子にまわりの人達も、俺が剣を引き抜いている事に気付き始めた。

 皆一様に驚き、目を見開いて声も出せないでいる。

「……ぬっ、抜けたどーっ!!」

 そんな中、ついに王様が叫んだ。そして、そのまま部屋から駆け足で出ていった。兵士達も慌てて王様を追っかける。

 俺もまさか、そんな簡単に抜けるなんて思ってもいなかったので、剣を持ったままただ呆然としている。残されたアーリエとプロヴダがずっと俺を見ているので、なんだか恥ずかしくなってきた。


 王様や兵士がどこかへ行ってしまったので、俺達はこのままどうすればいいのかわからない。とりあえずはその場で待機をしていた。あらためて引き抜いた剣を見てみると、何百年も前の物のはずなのにさっき鍛え上げられたかのように、刃の表面に光が当たってキラキラと輝いている。材質は鉄ではないのだろうか? 

 しばらくすると、バタバタと何人かの人間が駆けてくる音がした。王様達がまた部屋に戻ってきた。急いで来たので王様はかなり息が上がっている。

 王様達に連れられさっき通った長い通路を抜けると、兵士達が左右にズラッと並んでおり、手したラッパを盛大に吹き鳴らし始めた。その中を潜り抜けその兵士達を後に連れ、また玉座の間まで戻ってきた。

「おぉ、剣に選ばれし勇者よ!アナタが現れる日を幾百年もの間、待ち続けておりましたぞ!我が城に伝わりし聖剣を携え、これより世界を救う旅へと()で向かわれよ!」

 王様は椅子に座り、大袈裟な口振りで言った。

 それからはパーティーが始まった。三日三晩にも渡る盛大なパーティーだ。市街地の方でも今日から特別な休日となり、お祭り騒ぎをしていた。

 俺はそのお祭りの中を王様と一緒に馬車に乗り、大通りを巡ったりもしている。馬車は屋根が外され、俺の姿がよく観えるようになっていたので、最初は見世物のようで恥ずかしかったが、巡っていくにつれそれにも段々と慣れ、逆に快感になっていった。下々(しもじも)の者達からの熱い声援を受けながら、馬車はゆっくりと進んでいく。

 一月程、城に泊まった後、俺達は宿屋に帰ってきた(宿代は宮廷持ちになった)。俺は王様から見栄えを良くする為に、服とか装飾品やらを色々貰っていたので、身形(みなり)がかなり豪華になっている。

 宿には数世紀ぶりに誕生した勇者を見物しようと、何人もの人達が訪ねてきていた。宿屋の外にも人が溢れ返っている。

 そのうち宿屋の人が見物料を取り出したりしたので、人数は少しずつ減り始めたようだったが。


 王都に滞在している貴族や一部の富裕者が、俺を自分の屋敷へ招待しくれたりした。その貴族や富裕者のご令嬢からも、密かに恋文を貰ったりして、俺も今ではなかなかのモテ男になっている。

 俺の口調や髪型がブームになり、なにやらもっさりとした動作や口調の人が町中に増えた。町には俺の顔に似せたお面(ほぼオークに近い)や前に着ていたTシャツのコピー品なんかも売られ(Tシャツの真ん中の萌えキャラはデザインが崩れ、訳がわからないモダンアートみたいになっていたが)、更には勇者饅頭(まんじゅう)なる物まで売り出されている。

 町の芝居小屋では、あのアーリエが誇張して語った、ゴブリンの退治の話が演劇として演じられていた。

 俺は民衆達からチヤホヤされ続け、かなり天狗になっていた。だが、数ヶ月もするとみんなは流石に飽き始め、宿を訪ねてくる人の数もめっきり少なくなっていた。女性関係についても、元引きこもりで童貞の俺は、女性に対しガツガツと接する事ができず、憧れられるだけの存在で終わっていた。

 民衆達は俺への関心が薄れてくると、今度はまだ何も行動を起こさない俺に対して、非難する感情のような物が芽生えてきているようだ。町の人達の目が段々と冷たくなってきているのを感じていた。


 なにかをしなければいけないのだが、なにをすればいいのかがわからない。

 王様は「世界を救う旅に向かえ」とか言っていたが、そもそもこの国は特にこれといった脅威もなくけっこう平和な方だ。

 もしかして、遠方の国に行けという事なのだろうか?聖剣に選ばれたからといって、そんなのは面倒臭いんだが。

 アーリエとプロヴダと一緒に色々考えた末、とりあえずは北の方にある『魔王城』に行ってみようという話になった。

 そこにはまだ、数百年前に伝説の勇者と戦ったという魔王が、実はまだ生きて住んでいるらしい。その魔王の様子を見に行ったり、場合によっては戦ってボコったりすれば(魔王は勇者に負けてからはショボくれて逼塞(ひっそく)し、しかも数百年も生きているので、かなり弱っているに違いないというプロヴダの話)、なんとか形がつくだろうという事になった。

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