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聖剣ぬきぬきタイム

 翌日には、城へ行ってみることした。伝説の剣は王都に城に安置してあると、ファディールちゃんが言っていたからだ。


 城に着いた。城はよくRPGとかで見る、敷地内からいくつかの塔が飛び出した、西洋風のわかりやすい形をしていた。

 城の周りには堀があり、その上に架かってある橋を渡って、門の前まで行く。

「チィ~ッス!王様いる?」

 門番をしている兵士にアーリエがファディールちゃんからの紹介状を見せようとすると、プロヴダが先を越してさっきのフランクな挨拶をした。おいおい、友達感覚かよ。

 失礼過ぎて捕まるんじゃないかとビクビクしたが、兵士はプロヴダの軽過ぎる挨拶にも笑顔で応対してくれた。

 ファディールちゃんからの紹介状を兵士に見せる。それを見た兵士の一人が、紹介状を持って城の中へ入っていった。しばらくその場で待っていると、さっきの兵士がもう一人の兵士を連れ立ち、「陛下がすぐにお会いになれるそうです」と伝えてきた。俺とアーリエはそれを聞いて驚く。流石にいきなり王様と面会する事になるなんて、当然思ってもいない。……っていうか逆に緊張するから嫌だ。しかし、さっき戻ってきた兵士と一緒にやって来た兵士が、『早く俺に付いてこい』という雰囲気を醸し出しているので、後に付いていくしかない。

 一応、城の中に入る前に軽いボディチェックを受けた(アーリエとプロヴダは城の中のどこかの部屋でボディチェックを受けていた。プロヴダは例の斧を持ってきていたが、流石にそれはお預かりされたみたいだった)。テクテクと城の中を進んで行くと、大きな両開きの扉の前に到着した。

「『聖剣ぬきぬきタイム』に挑戦したいという方を、お連れいたしました!」

 俺達を連れてきた兵士が、扉に向かって大声で叫んだ。

 『聖剣ぬきぬきタイム』って……。翻訳機能バグってんじゃないのか?風俗のコースみたいな呼び方だな、おい。

 扉が左右に開き、中へ通された。この部屋はこの城の『玉座の間』のようで、かなり立派な広間になっている。綺麗に装飾された内装は、豪華で威厳があった。

 正面にはこれまた立派な椅子があり、そこには小さな老人がチョコンと座っている。どうやらあの人がこの城の王様みたいで、カイゼル髭を生やし豪華な王冠を頭に乗せていた。側には数人のお付きの人と兵士がいる。

「……えっ~と、聖剣を抜くのに挑戦したいんだよね。いいよ、こっちに来て」

 なんか色々、挨拶的な物があるのかと思っていたが、王様が軽い感じでいきなり言った。調子が軽過ぎないかな?

 王様と兵士数人に城の中を連れて歩かれ、どこかの長い通路を通り、聖剣が安置されているという部屋の前までやって来た。

 部屋の重そうな扉の鍵を兵士の一人が開錠し、王様を先頭にみんなで中に入る。部屋の内部はけっこう広かった。造りは円形で壁は雑な石壁。部屋の真上からは光が差し込んできており、その真下にある台座を照らしている。その台座の上には剣が一本だけ突き刺さっていた。

 その剣がどうやら伝説の勇者が扱っていたという、伝説の剣みたいだ。剣を台座に突き刺していったのは伝説の勇者らしく、『剣が所有者として認めた者にしか抜けない』と言って、この地を去ったと伝えられている。それからすでに数百年が過ぎたが、引き抜けた者は誰もいないという事だ。

「僕も挑戦していい?」

と、プロヴダが聞いてきた。王様が、「別にいいよ」とフランクに答えので、まずはプロヴダにやらせてみる事にした。

 プロヴダは剣が突き刺さっている台座の上に乗り、剣の柄を両手で持ち引き抜こうとした。最初は軽く引き抜こうとしているみたいだったが、まったく抜けそうな気配がないので、今度は全力で力を込め引き抜こうとしていた。だが、それでも剣は引き抜けなかった。

 やがてプロヴダは引き抜くのを諦めた。プロヴダの怪力でも引き抜けないのなら、力尽くで引き抜くのはやはり無理なんだろうか。次は俺の番だ。

「しかし、君は変わった格好をしておるのぉ……。それ(ちまた)で流行ってるの?」

 王様が急に尋ねてきた。俺は着ている物がほとんど変わらないままなので(代わりの服を買う金銭はあるのだが、アーリエに記憶喪失と嘘をついているので、アーリエから「この服のままの方がアナタを知ってる人が見付けやすい」と提案されてしまい、なるべくこの服装でままでいるようになった)、ネルシャツの下のTシャツは着放しでヨレヨレになり、胸に描かれている萌えキャラなんかも残念な感じになっている。

 俺は「これからこの国でこの服装が流行ると思いますよ」と適当な事を言うと王様は、「あっ、そう」と言って、そっぽを向いた。そんなに興味があって聞いたのではないのかもしれない。


 さぁ、俺の番だ。「気を取り直して挑戦するぞ!」と気合を入れてみたが、王様はまったく期待していないのか側にいる兵士と談笑し始めた。しかも、アーリエやプロヴダまでもが、その談笑に加わっている。

 俺は寂しく剣の前に行き、プロヴダと同じように柄を両手で持つ。そして、力を少し入れ柄を上へと引いてみる。剣は簡単に台座から引き抜かれた。

 みんなはしばらく、その事に気が付いていなかった。

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