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ハゲたゴロツキ

 ファディールちゃん達が帰った後、また誰かが宿を訪ねてきた。

 今度はプロヴダに用があると言っているらしい。プロヴダが首を(かし)げながら一階に降りていった。彼女にはこの町に知り合いがいないので、訪ねてくる人など思い当たらないらしい。しばらくすると下からなにやら騷がしい声が聞こえてきたので、俺達も一階に降りてみた。

 一階の宿の受付の前に行くと、プロヴダとプロヴダに昨日やられたハゲたゴロツキが、激しく言い争っていた。ハゲはプロヴダに叩かれた頭の部分にデカい湿布を貼っている。

「いいから俺と一緒に来いつってんだろ!」

「行く訳ないだろ、このハゲッ!」

 どうやらハゲたゴロツキがプロヴダを、どこかへ連れて行こうとしているみたいだ。

「なにもしねぇつってんだろ!いいから来てくれよ!来てくれないと、俺が(あね)さんにぶっ飛ばされるんだよ!」

 ハゲたゴロツキが必死になって懇願している。体の大きな男が、まわりの目も気にせずに懇願する姿は、少し(あわ)れに見える。

「僕を呼び出して、なにか如何(いかが)わしい事をするつもりだろう!」

「そんな事する訳ないだろ!姐さんが呼んでんだよ!場所も市場の近くの広場なんだから一緒に来てくれよ!」

 もう土下座せんばかりに頼み込んでくる。筋肉ムキムキのゴロツキが、こんなにも恐れている姐さんとは一体どんな人物なんだろうか?

 結局、プロヴダは面倒臭くなったのか、不承不承(ふしょうぶしょう)ながらも付いて行くことに同意した。そんなにも恐い姐さんとやらに興味を抱いたのかもしれない。

 アーリエは持ち前の面倒見の良さを発揮し、私も付いて行くと言い出した。俺は当然行きたくはなかったのだが、こうなると一緒に行かない訳にもいかない。

 ハゲたゴロツキとプロヴダとアーリエと俺で、市場の近くの広場(俺達が前にプロヴダにミートパイをご馳走になった辺り)まで行くことになった。

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