狂戦士プロヴダ
泣いていた俺にアーリエが、古着のズボンを買ってくれた。
市場に併設してある野外食堂のような所で、3人でテーブルを囲んで座っている。俺はグスングスンと鼻を啜りながら、奢って貰ったミートパイを齧っていた。味はなんだかしょっぱい。
斧の少女は呆れた顔で俺を見ている。思えばこの娘が俺を襲ったりしなければ、こんな目には会わなかったんだ。「もっと責任を感じろよ!」と、心の中で思った。
「自己紹介がまだだったけど、僕の名前は『プロヴダ』!強くなる為の旅をしてるんだ!」
『へ~、そ~なんだ~、すごいね~』っていう顔を俺はした。
俺達も自己紹介をする。
「さっきは凄かったですね!軽々と斧を扱ってましたけど重くはないんですか?」
アーリエが聞いた。
「ちょっとだけかな!ご先祖様が使ってたウチの家宝なんだけどさ!家を出るときに持ってきちゃったんだ!」
『へ~、持ってきちゃったのか~、やるな~』という態度をとった。
プロヴダの話によると、この国の北の方に『戦士の国』というものがあって、プロヴダはそこの戦士長とかいう人(戦士の国で一番偉い)の娘さんらしい。最近は平和過ぎて国にいてもなんだかつまらないし、周りに自分よりも強い同年代の男子がいないので、ついつい家を飛び出してきちゃったんだそうな。自分を磨く為の旅をしながら、いろんな物を見たり聞いたりしているらしい。
プロヴダはよくよく見れば愛らしい顔をしている。目がクリッとして、口が大き目なので感情表現がとても豊かだ。髪は短く肩には届かない程度の長さで、毛先がまっすぐ下りずにカールしている。見た目は12から14歳ぐらいまでにしか見えないが、本人に尋ねてみると『16歳』だと答えた。出る所が出ていないし、身長も140センチまで届いていなさそうなので、成長が少し遅れているんじゃないかと思った。
ここはチャンスだと思いアーリエにも年齢を尋ねてみると、『自分は確か17歳のはず』だと答えた。俺の考えは当たっていたようだ。
「そっちの人って変な顔だし、変な格好してるよね!ホントに新種のオークかなんかじゃないの?」
まだプロヴダが言っている。
どんだけオークネタを引っ張るんだよ!もうオークに親近感湧いてきちゃったよ!こちらの世界で共感したのが人外ばかりで、先行きが思いやられる。
プロヴダはこの町に来てすぐらしく、まだ宿を取ってない様だったので、俺達が今泊っている宿屋を紹介した。彼女の荷物はかなり少なく、ナップサックのような物が一つしかない(例の斧もあるが)。
宿に来るとプロヴダは、俺達の部屋に来て、アーリエとずっと話をしていた。アーリエにかなり懐いたみたいだ。俺は男1女2という状況がなんとなく気不味くヨソヨソしくしていると、俺がプロヴダの部屋で一人で寝る事になった。