二度目の目覚め
「チュンチュン」と、小鳥が囀るような音が聞こえている……。
またしても、暗闇の中にいる俺はそう思った訳だが、暗いのは単に目を瞑っていたからだった。目を開けてみると、そこには青空が広がっていた。
仰向けに横たわっていた様なので、上半身を起こしてから辺りを見渡す。左右には緑の葉を繁らせた、俺の背丈よりは四倍程大きい木々が、ズラリと並んでいた。下は茶色い土の地面。地面は先の方で見えなくなるまで続いており、後ろの方ではすぐに曲がって見えなくなっている。どうやら、ここはどこかの森の中の道の上で、俺はそこに横たわっていたみたいだった。
少し驚いたのは、自分がバッキバキに『勃起』していた事だ。朝勃ちのようなものなのか、死からの復活を果たしたからなのかはわからないが、とにかく己の息子がいきり立っている。まぁ、別にそんな事はどうでもいい事なので、とりあえずはその場で胡座をかき、今までに起きた事を頭の中で整理してみる。
そうしていると、どこからか「チリンチリン」という音が、聞こえてきているような気がした。なんの音なのかを考えていると、次は「ガラガラガラガラ」という、何かが回っているような音まで聞こえてくる。「チリンチリン」という音の正体が、鈴が鳴っている音だと気付いた時には、「ガラガラガラガラ」という音も、かなり近くまで来ていた。その「ガラガラガラガラ」という音の正体が、車輪のような物が回っている音だと気付いた時、俺はすぐにその場で死んだ振りをしていた。
この音はたぶん、『馬車のような物』が近付いてきている音なのだろう。異世界に来て、まさかこんなにもすぐに、誰かと出会すなんて思っていなかった。死んだ振りをしたのは、単にパニくっていたからだ。心臓がバクバクと早鐘を打ち、ちょっとだけお漏らしをしそうになっている。
馬車のような物が近付いてきているのは、後ろの曲がった道の方からだった。その音の正体は道を曲がると、倒れている俺に気が付いたのか停車したようだ。俺はうつ伏せの状態で目を瞑り、必死になって音を聞いている。しばらくしてから、誰かが地面に降り立つような音がした。足音はゆっくりと、俺の方へと近付いてくる。足音が俺のすぐ横で止まった。足音の主が様子を窺っている気配を感じる──
「……大丈夫ですか?」
そんな声が聞こえてきた。女性の声の様だ。
俺は少しだけ瞼を開き、頭を軽く上げてから、その声の主を確認した。
俺の目には、屈んで様子を窺っている金髪の美少女の姿が映っていた。
脳内で歓喜の声が沸き上がる。異世界に来て、いきなりこんな美少女に出会えるとは!あの世にいた『神』も、なかなか粋な計らいをしてくれるじゃあないか(『神』の計らいかはわからないが)!
俺は素早く地面から起き上がると片膝を突き、
「大丈夫です!」
と、即座に答えた。
しかし、その反動で貧血になったのか、目の前が急に真っ赤になり、後ろに引っくり返ってしまっていた……。