巫女のファディール
そこにいたのは神秘的な広間に相応しい、神秘的な雰囲気を漂わせた少女だった。
この広間も白と水の青を基調とした美しく荘厳な物だ。
少女は俺達と正体する形で立ち、床が少し高くなったな場所の中央にいる。見た目は中学生ぐらいにしか見えないが、大人びた雰囲気を感じた。透き通るような白い肌と、深い海の色を思わせる澄んだ瞳。そして、少し冷たく見えるぐらいに整った顔立ちをしている。髪型はおかっぱだ。
広間の中は少し肌寒く感じる。実際に冷えている訳ではなく、広間の雰囲気がそう思わせているのかもしれない。少女の後ろには大きな鏡のような物があった。しかし、鏡面に当たる部分が水面のように揺らいでいる様に見える。
少女がこちらをジッと見詰めている。己の心の奥底まで見抜きそうなその澄んだ瞳に見詰められると、身体が何故か震えそうになる。
少女は神官服の人に手で合図をした。すると、神官服の人は頭を下げて部屋から出ていく。少女が俺達に語りかけてきた。
「私は『女神サハテ』に仕える巫女のファディールと申します。アナタは現在、記憶を失なっているとお聞きしました。私でよろしければ力をお貸ししましょう」
……声まで透き通っているかのように美しい。
俺はすぐに返事が出きず、「おっおっおっ」とアシカのように唸ってしまった。ファディールちゃんが、「?」っといった感じで小首を傾げる。アーリエが俺の代わりに詳しく説明をしてくれた。
「わかりました。アナタがよろしいと仰るのなら、記憶を少しだけ覗かせていただきます。もしかすると、知らない方が良かったと思うような事実を知ってしまう可能性もありますが、構いませんか?」
どちらかというとそんな事実ばかりなんだが。この娘が俺の記憶を見たら、一体どんなリアクションをするんだろうか?とりあえずは承諾の為に頷いた。
「それでは私の側まで来てください」
勧められるがままにファディールちゃんの側に行く。
「私が祈りを捧げると、この『真実を映す鏡』にあなたの断片的な記憶が、表れては消えてゆきます」
どうやらファディールちゃんの後ろにある鏡に、俺の記憶が映るらしい。ということは、アーリエにも記憶を観られてしまうという事ではないか。今更、アーリエに恥ずかしいからと部屋から出ていってくれとは言えないので、できたら○○○○している場面とかが出てきたら、モザイクとか処理して欲しいなぁ、と思った。
俺は理解した事を示す為に再度頷く。
「それでは始めましょう。まずはそこに跪いてください」
また言われるがままにファディールちゃんの前で跪いた。片膝を上げ顔の前で手を組むように言われたのでそうする。ファディールちゃんが俺の頭に手をかざし、呪文のようなものを呟き始めた。
けっこう長い。呟きが終わるとファディールちゃんは鏡の方に振り返った。
「時を紡ぎし女神サハテよ!此の者の願いを聞き届け、彼方へと忘却されしその情景を、此の鏡へと映したまへ!」




