旅路
元引きニートの勇者が、アッツアツ・チャーハン国で拳法の修業に明け暮れていた頃、アーリエ達もカルダモンまでの長い道程を旅をしていた――
元引きニートの勇者が、アルジェの町に一人で向かってから次の日には、アーリエ達もすでに旅の準備を終えていた。旅へ出る為に、王都の西方にある城門の前へとやって来ていたのだが、そこで馬を連れて門を潜り、そして馬に跨ろうとしている最中、「あのぅ……」と誰かに声を掛けられた。
声を掛けてきたのは、二十代ぐらいに見える男性だった。かなりの細身で背丈は、元引きニート勇者よりか少しは高いぐらい。無表情で目には活力がなく、服装もかなり地味な物だった(灰色の上着と黒いズボン、そして布製の靴を履いている)。
「……あのぅ、アナタ方が勇者様のお仲間で間違いないですよね?」
ボソボソと呟くような声で話しかけてきている。話を聞いてみると男性は、サクラコから言われてここに来ているらしい。カルダモンまでアーリエ達に同行しろと、命令されて来たのだと話した。
かなり陰気な空気を漂わせているこの人物に、アーリエとプロヴダも不安を感じずにはいられなかったが、サクラコから任務を言い付かされて来ているのであれば、追い返す訳にもいかない。それでは一緒に旅をしてくれるようにと、アーリエからも再度お願いをしてみた。
こうして3人でカルダモンまでの長い道程を旅する事になった訳になのだが、旅をしていくにつれ一応護衛として加わった男性(名前は『ヨハン』というらしい)は、けっこうちゃんと役に立つという事がわかってきた。何かを話しかけても、ポツリと小さな声で呟くだけで、コミュニケーション能力などは皆無に等しいみたいだが、野宿などをする際には、野ウサギなどの小動物を獲ってきてくれたりする。モンスターや野盗に襲われたり際にも、ヨハンは大いに活躍してくれていた。
そうして、ただひたすらに西へ西へと旅を続け、時には大きな河を舟で渡ったり、時にはまだ雪が残るような山を越えたり、時には大きな町に入り珍しい物を観て回ったり(門番がいるようなそこそこ大きな町に入る際には、王都の王様に事前に貰っていた身元引受証が役に立った)と、特に大きな病気や怪我もなく、それなりに順調に旅を続けていた。




