夜の訪問者
そんな特に何事もない平穏な日々の最中、とんでない事態が突然訪れた。
もうすでに夕暮れ時になっている、ある日の事である。アーリエやプロヴダと一緒に、食卓を囲っている最中の折りだった。
その時、家に訪問者がやって来たのだ。家の扉を誰かがノックしている。こんな時間に訪問者が来るのは珍しい事なのだがアーリエが、
「は~い!今、出ま~す!」
と、口の中に入っている物をカミカミしながら、扉の方へと向かった(ちなみに間取りは一間の二階付き。食事をしているすぐ側には、もう玄関の扉がある)。
アーリエが扉を開くと、そこには全身黒尽くめの何者かが立っていた。マントで体を覆い、目深に被ったフードのせいで、どんな顔付きかもよくわからない。だが、体付きが小柄なのだけは、アーリエとの身長差からもわかる(アーリエの方が少し背が高いようだった)。
「こちらが勇者殿の家で間違いないか?」
その人物が、そう尋ねてきた。
「はい……、そうなりますが?」
そんなアーリエの返事を聞いたその謎の人物は、風のようにアーリエの隣をすり抜け、家の中へと入り込んだ。そして、俺たちが囲んでいたテーブルの上に音もなく、いつの間にか乗ると、いつ抜いたのかもわからないような素振りで剣を抜き、それを俺の首に当てていた。
すべてが一瞬の出来事で、何が起きたのかを判断できたのは、俺の首の横に何かを当てられてから、数秒程過ぎた後だった。




