西の街
街の規模は、アーリエの家の近くの村と比べれば、流石に大きい。周囲をそんなに深くはない空堀と、2,5メートル程の高さの丸太を縦に組んだ柵で囲っている。
街の出入り口に当たる場所には、木製のそこそこ頑丈そうな門が備え付けてあるのだが、そこは開きっ放しになっており、辺りに番をしているような人も見当たらなかったので、誰にも見咎められる事もなく、街の中へと入る事ができた。
門を潜ると、すぐに荷馬車に乗せてくれた農夫の人に、礼を述べて別れた。アーリエが、これから宿泊する為の宿まで案内してくれる。その後を付いていく間に、街の様子をキョロキョロと観察していたのだが、建物のほとんどは石と木で出来た、高さ10メートル程の洋風建築であり、それが道を挟む形で間を空けながら密集していた。街行く人達は往来を、ゆったりと闊歩しており、人数も地方の繁華街程度にはいる気がする(俺基準)。
宿へはすぐに辿り着いた。宿の扉を開けて中に入ったアーリエは、すぐ前のカウンターにいる受付の人に挨拶をしてから、宿泊の為の交渉をし始める。宿は二階建てで、宿泊する為の部屋は六部屋あるらしい。一階の部屋はすでに埋まっているみたいなので、二階の部屋に宿泊する事になった。俺とアーリエは相部屋だ。金銭をなるべく節約する為にそうなった(部屋の中にベッドはもちろん2つあるみたいだが)。
アーリエは部屋に荷物を置いた後、そのままどこかへと出かけた。明日出向くという、『他人の記憶を覗ける巫女』がいるという神殿に、今からアポを取っておく為らしい。俺は足が痛いので同行はせず、部屋の中に置いてあった木製の椅子に座って、二階の窓からずっと外を眺めて過ごしていた。
窓から注ぐ陽射しが少し陰り始めた頃、アーリエは戻ってきた。
ついでに夕飯も買ってきてくれたようで、手にしているサンドイッチのような物がそうだ。パンで肉と野菜を挟んだそれは、街の出店で売っている物らしく、名物料理の一つらしい。まだ温もりがあり、甘辛いタレがかかったそれは、確かにこの世界に来てから食べたの物の中では、一番美味しかった。
アーリエも口の周りにタレを着けながら、頬張って食べている。




