霧の向こう側
アーリエが住んでいるエルフの村がある森の中を、三十人程の人間の集団が徘徊していた。半数の者は馬に跨がっているようだ──
「……この森の奥に、エルフの村なんて本当にあるんでやんすかねぇ、親分」
「この前、賭けでボロボロに負かしてやった奴からは、そう聞いたんだがな」
「そいつの話ってのは信用できるんでやんすかい?」
「まぁ、俺も別に最初は信じちゃいなかったんだがよぉ。だが、そいつが賭け代として出してきた『エルフから貰った御守り』ってやつを質屋に持って行ったら、どうやらそれが本物らしいってのがわかったんだ。だから、そいつが賭け代を出すときに話してた『エルフの村の話』ってのにも、信憑性が出てきたって訳さ」
「へぇ、そうなんでやすね」
「で、その話の裏付けを取るために、この森の近くの村にも聞き込みをしてみたんだが、昔からエルフの村がこの森の中にあるって話は、ずっと伝わっているようだった。エルフを捕まえて売れば高値が付くし、エルフは希少な宝石やらも所持しているらしいから、こうして集団を組んで村を攻めれば、かなりの稼ぎが見込めるって寸法よ」
「そいつはスゴいでやんすねぇ!」
そんな会話をしながら、集団は森の奥へと進んでいるのであった……。
それから数時間後──
「……しかし、けっこう森の奥の方まで来やしたけど、エルフの村ってのはなかなか見付かりやせんねぇ。なんか辺りに霧も出てきやがりましたし……」
「この森は『迷いの森』と言って、奥まで進むとかなり迷いやすくなっているらしい。だから付近の村の連中も、あまり森の奥にはまでが行かないらしいな」
「えぇ!?それじゃあ、あっしらも迷子になっちまうんじゃあないですかい!?」
「ハッハッハッ、安心しな!霧が出てきたのはエルフの村が近い証拠らしいぜ!だが、エルフ村ってのは周囲に魔法の結界を張っていて、簡単には中に入り込めないようになっているらしい。そこで役に立つのが、この『エルフの御守り』って訳よ!」
そう言うと盗賊達の親分は、懐から何か変わった物を取り出した。それは小さな人形のような物で、なんらかの植物を編み込み、中に何かを包めた物だった。
「この御守りがエルフの村までの道案内をしてくれるらしいぜ!」
親分は掌の上に乗せた人形に向かって、小声で何かの呪文を唱えた。すると人形はムズムズと掌の上で動いたかと思うと、ムクリと起き上がり、小さな腕でとある方向を示した。
「この人形が示している方向へと向かえば、結界を潜ってエルフの村に辿り着けるようになっているらしい」
「そいつは凄いでやんすね!」
盗賊達は今度は迷う事なく、霧の中を足早に進んでいった。




