獣子の場合
いちばん、ムカシのことをおもいだしたなら、ヤマのなかをはしりまわっていたころの、オモイデがある。サルやイノシシなんかをおっかけたり、ウサギやトリなんかを、ジブンでとってたべたりしていた。エモノをとるワナのつくりかたなんかは、ぜんぶジジイがおしえてくれた。ジジイはワタシをヤマでひろってそだててくれた人だ。ワタシのじまんのツメもジジイがつくってくれた。ジジイはほんとうにいろんなことをしってるし、キンタマもでかいので、ヤマでもかなりえらいにちがいない。
ジジイいがいの人を、このヤマでみたことは、ほとんどない。いちどだけミチのうえで、人をみつけたのでちかよってみた。そしたらオニギリをくれた。コメはたまにしかたべられないので、むちゅうでたべた。だけど、そのことをあとでジジイにはなしたら、「あまりよくしらない人には、ちかづいてはいけない」といわれた。どうしてかというと、ワタシのミミのカタチがかわっているかららしい。たしかにジジイのミミのカタチは、ワタシのとはちがってる。ミチでみつけた人も、ジジイとおなじカタチのミミをしていた。めずらしいからさらわれて、ミセモノにされるかもしれないぞと、ジジイはこわいカオでいってきた。おもしろいカオだったので、わらいそうになったけど、ミセモノになるのはいやだから、それからは人をみつけても、あまりちかよらないようにした。
あるひ、ジジイがガケからおちた。ワタシがガケのカベにさいていた、キレイな花をとろうとして、ガケをおりていったら、カベがくずれて、とちゅうでフクがキにひっかかって、ぶらさがってしまった。ながいあいだそうしていたら、ジジイがみつけて、たすけようとしてくれた。
ナワをたらしてもらって、なんとかガケのふちまであがったんだけど、またガケのふちがくずれて、こんどはジジイがしたにおちてしまった。ジジイをさがしに、ガケのしたまでいってみたら、まだジジイはいきていた。いきていたのはうれしかったけど、ジジイはカラダのあちこちのホネをおっていて、うごけなくなってた。ワタシはがんばって、ジブンたちのイエまで、なんとかジジイをはこんだんだけど、ジジイはそれからずっと、フトンからおきあがれなくなった。ジジイはうごけなくなってから、すぐにしんじゃったんだけど、さいごのときに、「なにかこまったことがあれば、このクビカザリをもってニシにあるミヤコへいって、『マキア』のイエをたずねなさい」、といってクビにかけるキレイなイシがついたやつをくれた。ジジイがなくなったあとは、ハカをつくってガケにおちたときにとっていた、キレイな花をハカのマエにおいた。
それから、さむいじきと、あついいじきがいっかいずつすぎたころ、なんだかへんなヤツラが、ミチであらそってるのをみつけた。かたほうのヤツラは、いままでにみたことがないようなへんなヤツラで、もうかたほうのヤツラは、たまにあうふつうの人にみえた。あのでかいケモノみたいなヤツラをつかまえれば、しばらくはタベモノにこまりそうにないので、つかまえることにした。かたほうのヤツラとたたかっているところをたすけるふりして、イッピキだけをもらうことにした。でもたおしたあとによくみたら、あまりおいしくはなさそうだったので、もってかえるのはやめておいた。
たたかってたヤツのなかでヒトリ、おいしそうなにおいがするヤツがいたので、ソイツをかわりにたべることにした。ソイツのにおいはすこしだけ、ジジイのにおいににていた。ジジイはやせていたし、あんまりおいしそうじゃなかったけど、ジジイのにおいとにているヤツは、ふとっていたので、くいでがありそうだった。
ソイツラをイエによんでむかし、ヤマのなかでたべてひとばんうごけなくなったときにたべたキノコを、ナベにいれてたべさせてみた。おもったとおり、ミンナうごけなくなり、アワをふいているヤツもいた。
おいしそうなにおいがするヤツをしめようと、ホウチョウをさそうとしたんだけど、キノコをたべてもうごけるヤツがいたので、しめられなかった。
ナワでしばられてうごけなくされたので、こんどはワタシがたべられるのかなとおもって、すこしふるえたけど、なぜかナワをはずしてくれた。
それからソイツラがたちさろうとしていたので、ワタシもついていきたいといってみた。ジジイとおなじにおいがするヤツがきになったからだ。そしたら、「いいよ」といってくれた。
いっしょにいくまえにジジイのハカにあいさつをしていると、ソイツラもいっしょに、テをあわせてくれたのは、ちょっとうれしかった。
ヤマいがいのところにいけば、おいしいものをいっぱいたべれるかな。




