雲は棚引き去ってゆく
俺達がこの国で最初に降りた港町のオザカに来ている。
カリンやミツハ、獣子やニニギ達も同行してきていた。
港湾では、皇家から遣わされてきた人工達が、皇家から授かった褒美の品々などを、俺達が帰国する為の船に運び入れてくれている。将軍家から貰った分と合わせると、けっこうな量になっていた。
船の側で見送りに来てくれた人達と最後の挨拶をしていた。
まずは、ニニギが最初に挨拶をする。
「……この国をお救いいただいた事、私からも新ためてお礼をさせていただきます。本来、私が彼の国に遣わされたのは、勇者様も知っておられる通り彼の国より軍勢をお貸しいただき、この国へと派遣していただく為でありました。ですが、私はその指令を危ぶんでおりました。皇ノ命様の企てが思惑通りに進んでも、今度は将軍家との戦になる事は必然でありましょう。もし、我が方がその戦いに勝利を得たとしても、軍勢をお貸しいただいた彼の国に相当な借りを作ってしまう事になります。ですので、勇者様方の御活躍を彼の国の国王陛下からお伺いした時は、渡りに船だとばかりに、我国にもいらしてはいただけないかとお願いした次第であります。まさか、これ程までの御活躍をなさるとは、正直な所思っておりませんでした。勇者様方にはいくら感謝しても感謝しきれません」
ニニギが深々と頭を下げている。ニニギも色々と、この国の事を思って苦労したんだなぁ。俺はなかなか頭を上げようとしないニニギに、頭を上げてくれるようにと頼んでいた。
次にカリンが挨拶をする。
「勇者様方に付けられておりましたが、大した働きもできずに申し訳ありませんでした。たぶん、そうは見えていなかったと思いますが、勇者様方との旅は結構楽しいものでした。貴方方との旅は、一生忘れる事はありません」
続いてミツハが言う。
「色々とご迷惑をお掛けしましたが、ワタシも姉と同様に旅が楽しかったです。また、会える日が来るといいですね」
また会える日が来るのかなどわからないが、会えるのならば会いたいと俺も思った。
最後に旅の最中と同じ格好をした獣子が挨拶をする。
「ずっとワタシを連れてってくれて、アリガトウ。アソコにいれば食べ物も出るからいるけど、嫌になったら山に帰るかもしれない」
それから獣子が俺にいきなり抱きついてきた。やはり別れが寂しいのか。俺を食べようとして狙ってきたりする危ない娘だと思っていたが、可愛い奴め。
と、思っていたら腹の辺りにいきなり激痛が走った。獣子を引き剥がそうとしたが、凄い力で抱きついているので自分の力では引き剥がせない。回りのみんなに窮状を伝え、獣子を引き剥がせしてもらう。獣子は俺の腹の肉に噛みついていた。こいつは本当に大丈夫なんだろうか……。
船に乗り込みしばらくしてから船は沖の方へと進み始めた。見送りに来てくれたみんなが手を振っている。
その人達が見えなくなる程、港から離れた時、自然と涙が頬を伝っていた。俺以外のみんなも涙ぐんでいる。
どちらかと言えば面倒くさい出来事しかなかった気もするが、今となってはそれも懐かしい記憶の一部になっている。
この国に来る事は、もう二度ないかもしれないが、俺はこの反対向きに棚引いていく雲を観る度に、今回の旅を思い出すだろう。




