雲の上の獣子
それから……。
獣子は皇宮で暮らす事になった。ここで次代の皇ノ命ととしての教育を施される事になる。本来皇ノ命の位は、現在皇ノ命の位に着いている者が、女性の民草の中から指名をする仕組みになっているらしいのだが、現皇ノ命は獣子が自分の娘である事実を隠して、次の皇ノ命に指名するつもりらしい。かなりの私情が入っている気もするのだが、獣子には皇家の御先祖に当たる神熊の血が何故か出ているらしいので、『まぁ、大丈夫だろう』と皇ノ命は語っていた。
俺と『まぐわいをする』という話は、獣子が現れた事でどうでもよくなったらしく、それからは何も言ってこなくなっていた。
あれからまた何日かが過ぎ、獣子の希望で彼女と皇宮で対面する事になった。
例の皇ノ命と謁見した広い板間で獣子と会う。獣子は化粧をして、十二単衣のような着物を纏い、正面の段の真ん中に敷かれた分厚い座布団の上に、ちょこんと正座している。そんな格好の獣子は、丸い獣の耳を頭に生やした、ただの美少女にしか見えなかった。
そして、獣子が俺達に向かって語り出した。
「……これまでの貴公らの数々のご厚意。ワタシより厚く御礼を申し上げさせていただきます。ワタシはこれより皇ノ命陛下の跡継ぎとして精進していきますので、どうぞ心配なきようお願い致します……」
『どうしたんだ!獣子!?もしかして獣子の替玉とかじゃないのか?』と少し疑ってしまうような態度でしっかりと語っていた。
だが、そこまで語り切った獣子はしばらく沈黙した後、細かくプルプルと震えだした。
それから、「痺れた!」と言って、足を前に投げ出した。
後ろの脇に控えていた獣子に付いている女性が、「姫様!まぁ、なんとはしたない!」と言って、そんな獣子を窘めたが、獣子はまったく言う事を聞いていなかった。
『ここは出てくるご飯の量が少ない』だとか、『用事がいっぱいあってめんどくさい』だとかの愚痴を言い始めた。やはり皇宮で暮らしは、獣子には窮屈過ぎるのだろうか?その内、逃げ出したりしないか心配だ。
俺達が国に帰った後の話になるが、都やオエドなどではその後、薄い本なる物が流行していた。俺が源安さんと供に考案した物で、源安さんが開発した印刷機を使い、巷で有名な絵師達に依頼をして、いろんな内容の『ワ~オ』な内容の薄い本を描がいてもらった。その商品は見事にヒットし、男性達の間で大流行していた。
オエドなどでは、
「つまり、アッシはこの獣耳っ娘で抜きゃあいいのかい?」
「べらぼぉめぇ!オイラらは今日はこの耳長っ娘で、いたす事にするぜぇ!」
とかいう会話がなされていたという。




