皇宮物語②
「お主の事を想い、忍んで来たぞよ……」
それはなんと、皇ノ命だった!
俺は思わず布団から飛び出していた。そのまま布団の脇で固まってしまっていた。
「どうしたのかへ?厠にでも行くのかへ?」
皇ノ命はここへ来るまでに持ってきていたのであろう、灯火の火を枕元の行灯に移した。部屋が少し明るくなり、皇ノ命の様子がわかる様になる。皇ノ命は俺と同じような薄い小袖しか纏っておらず、厚かった化粧も落としてきている。薄明かりの中で見る皇ノ命の素顔は、露骨に年齢が出ていた。
「なななな、なんでぇ!?」
パニックになりながら俺が質問した。
「オナゴが夜にオノコの褥を訪れるのは、まぐわいをいたす以外、他にはないであろう?」
また、まぐわいという言葉を、こちらの世界で聞いてしまった……。つまり、俺に逆夜這いをしに来たという事なのだろうか?
まさかの事態に、ただただ布団の脇で固まっていると、皇ノ命は布団の上から四つん這いで、こちらの方ににじり寄ってきた。俺も尻餅を突いたような格好で、ちょっとずつと後ろに下がる。じりじりと迫ってくる皇ノ命に、とうとう部屋の隅まで追い詰められてしまっていた。窮鼠となった俺は、『何故俺とまぐわいしたいのか』について尋ねてみた。
「……まぁ、其方の容姿に惚れたとは決して言えぬのじゃが、其方の面影は何故か心に強く印象を残しておる。そして、それ以外にもこちらの事情とがあってじゃな……」
俺の『能力』も関係しているのだろうが、別の理由もあるみたいだ。その理由とはなんだろうか?
「……本来であればニニギが、お主らの国より軍勢を借り受けてくる予定であったが、代わりにお主らを連れてきおった。もし、軍勢を借り受ける事ができれば、その軍勢を持って魔王を倒した後、将軍家よりこの国の統治権を取り戻すつもりでおったのじゃ。じゃが、それもできなくなってしまった……。しかし、代わりにやって来たお主らは、見事に魔王を倒してのけた。なれば、我とお主が結ばれる事により、民草からの人気を集め、ゆるゆると将軍家に対抗しようと思った訳じゃ」
そういう計画あったのか……。かなりざっくりとした計画内容に見えるが、将軍家にはなかなか思う所があるらしい。それはその将軍家との、対抗手段として使われようとしていた訳だ。
正直、めんどくさい。




