ショーグン!!!
オエドに帰ってきてから一週間。俺の身体も流石に元に戻っていた頃、オエド城からの遣いがまたやって来ていた。
「此度の貴殿等の働き、将軍家も誠に感謝致ししておりまする。つきましては此度の働きに対する感謝の品々をお渡ししたいと思っておりますので、明日未の初刻(13時ぐらい)。城の方までお越しくだされますよう、よろしくお願い致します」
そんな内容を伝えに来ていた。褒美を貰えるというのに断るのもおかしいので、迷わずに承知しておく。
翌日、十一時頃には迎えの籠が宿の前までやって来た。城へ向かうのは俺とアーリエ、プロヴダ、ワタナベさん、そして獣子の五人だ。例によってカリンとミツハは同席しない。徳田さんは将軍家から付けられていた用心棒だが、今回の席には呼ばれているのだろうか?徳田さんはいつも連絡したい事があれば、自分からブラリと宿を訪ねてきていた。こちらから連絡を取る事はできない。
城に着くと、また前と同じ待合室で待たされ、時間が近くなれば以前に将軍と謁見した、あの大きな座敷に通された。前回と同じような流れで将軍が、正面の段の上手の方からズカズカと現れる。例によって後には小姓も従えている。座敷にいる人数も前回とさ変わらない。護衛の侍が段の左右に二人と、あの将軍の話を左脇辺りで代弁していた家老だけだ。
「……貴殿等の今回の働き、上様も誠に感謝いたしております。将軍家からも褒美の品をお渡したいと思っておりますので、是非お受け取り下さい。こちらが褒美の品々のとなっております」
家老がそう話し、俺達に渡す為の褒美の目録を読みはじめた。刀が一振りと名馬一頭、金子五貫(18,75キログラム)に、絹三十反、米百俵が目録に書かれた褒美の品々だった。
「これらの品を貴殿等で持ち帰るのは苦労するであろう故、護衛と運ぶ為の人手もお貸ししよう。……それとな、そこな女性」
家老が、またアーリエを扇子で指した。
「上様が其処許の事を、どうしても諦めきれぬと仰っておられる。やはり其処許のみこちらに残り、上様の側室となってはいただけないだろうか?」
なんと、例の話を蒸し返してきた。
俺はまた固まってしまっていたが、すぐに家老の老人に責っ付かれる。今の話をアーリエに通訳した。アーリエの反応は前と同じだ。家老があれこれとアーリエに都合の良い条件を上乗せして交渉をする。領地を上げるとか、親族をこちらに呼び寄せてもいいとかだ。だが、アーリエの態度をまったく変わらなかった。
「これ程、申しておるのに何が気に食わんというのじゃ!」
業を煮やしていた将軍が怒鳴り声を上げた。とんでもなく勝手な言い分だ。権力者とは、こういうものなのだろうか。
それを聞いたアーリエは俺が通訳もしていないのに喋りだした。
「アナタ、カッコワルイ。ワタシ、キライ」
神国語でハッキリと言ったので、将軍と家老が唖然としている。
「き、貴様……、ワシを愚弄しおったなぁ!?者共、であえぃ!であえぃ!」
その声が響くと、横手や後ろの襖などから、大勢の侍達が座敷に雪崩れ込んできた。みんな長い棒を手にしている。俺と仲間達は侍達に四方を囲まれていた。
どうやってこの場を切り抜けようか?またパワーアップを使うしかないんだろうか?仲間達と目配せしていると、
「待たれよ!」
といった大声が、後ろの方から聞こえてきた。
それはどうやら徳田さんの声の様だった。徳田さんが俺達と侍達の間に割って入る。徳田さんは、ちゃんと裃を付けた城での正式な格好をしていた。
「この者達を無事に国へ帰してやってくだされ!兄上!」
徳田さんがそう言った。
「新ノ進よ!貴様、弟の分際でワシに指図する気か!」
将軍が言う。二人は兄弟なのか?
「実はこの者とこの者は深い仲になっておるのです!その仲を引き裂くのは、オエドの政を差配する将軍家として、あまりにも無体な事ではないでしょうか!」
将軍から新ノ進と呼ばれていた徳田さんが、俺とアーリエを手で示しながら言った。「そうであろう?」と、こちらを向き俺とアーリエに同意を求めてくる。俺はとりあえず首を縦に振った。
「彼等は国元に帰り、婚儀の予定までしておるのです。それを引き離すのはあまりにも哀れに存じます……」
「ムムム、そうであるか……。それならばワシも引かざるをえまいか……。しかし、この娘は先程、ワシを愚弄しおった。流石にこれを咎め立てはいたさない訳にはいくまい!」
やはり、さっきの台詞を将軍に言い放ったのは拙かったか……。だが、アーリエを非難するような気は俺には毛頭ない。よく言ったなと逆に感心していたぐらいだ。
「そうですなぁ……。ならば、彼等をオエドから追放いたす事にしましょう。某が責任を持って追放いたします」




