中間管理職魔王②
「……確かに私は一度死んでから、こちらの世界にやってきた者です」
ビンゴ!やはり、転移者の様だった!もしかすれば話次第では、戦わなくてもよくなるかもしれない。こちらの世界で、なんで魔王なんかやっているのかについても尋ねてみる。
「……私は元居た世界では、『田中宏』という名の、しがないサラリーマンでした。製造業をしている会社の経理部で働いており、もちろん妻と娘もおりました。しかし、妻とはずっとセックスレスで、思春期を迎えた娘からも『臭い』と言われ嫌われています。そんなある日、トラックに跳ねられ死んでしまった私は、あの世で神様に出会い、こちらの世界に送られる事になりました。私は元々製造業に勤めていたので、『前の世界では造る事にばかり係わってきたので、次に行く世界では破壊の権化となりたい』と申しでると、神様は私に魔王としての能力を与え、この世に送り込んでくれたのです」
……まさか、あちらの世界のストレス社会が、こちらの世界にも影響を与えてくるとは思わなかった。
不味いのは、別に不本意で魔王をしているという事ではない事だ。事情を聞けばなんとかなるとかなる物でもなかった。
「それでは、話しをするのは止めて、そろそろ戦いを始めましょうか……。魔王と勇者は、戦い合う運命にあるのだから……」
魔王である田中宏が、臨戦態勢に入った。
まずは魔王からの攻撃だ。広範囲の激しい炎攻撃をいきなり放ってくる。それはまるでの炎の壁が迫ってくるようだった。アーリエが魔法による防御壁を作り、みんなに迫る炎を防いでくれた。アーリエは色々な経験を積み、魔法のレベルをアップさえていた様だった。
炎攻撃を防いだ後、ワタナベさんがバズーカ砲(89mmロケット発射筒M20改4型という物らしい)のロケット弾を魔王に向かって撃ち込んだ。ロケット弾は見事に魔王に命中。だが、ロケット弾による煙が晴れた後には、無傷で立っている魔王の姿があった。
プロヴダと獣子が魔王の元に駈け寄り、同時に攻撃を加える。魔王は即座に伸ばした手の爪で、それを軽々と防いでいた。それを見た徳田さんも、槍を取り攻撃に加勢した。
怒濤のような三人の連係攻撃に、流石の魔王も押されている様に見える。そして、防戦一方の魔王の隙を突き、獣子が素早く後ろに回り込んだ。そのまま背中に攻撃を加えたが、それは何かに弾かれてしまった様だった。羽生えていないただの背中だったのに、なんだか様子がおかしい。だが、よくよく見てみると、魔王の尻の部分からはトカゲのような尻尾が生えていた。そんな物はなかったはずなのに、どういう事なのかよくわからない。三人は異常を察知し、一旦魔王から距離を取った。
「フフフ、流石は勇者の仲間達ですね……。私も少し本気を出しましょう……」
魔王はそう言った後、魔王の両腕が少しだけ膨れ上がった。腕はそのまま膨らんでいき、ついには下椀に嵌めていた黒い腕カバーも破いてしまった。下から現れたのは、毛むくじゃらの太い獣の腕だった。
魔王の腕力が単純に増し、それによって攻撃が弾き返さられるようになっていた。攻撃が弾かれ、仲間が攻撃されようとしている所を、ワタナベさんがライフル銃を撃ってで魔王の気を逸らす。弾は魔王の躰に当たっても、かすり傷を付ける程度で、すぐに再生されてしまっている。遠距離攻撃は通じにくいのかもしれない。




