第53話 圧倒的な実力差
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2019/3/11 誤字脱字指摘誠にありがとうございました。
「はりゃあ!」
先に動いたのはソードレイの方だった。
シンプルな直突きだが、裂ぱくの気合が籠ったその一突きはなかなかの鋭さであった。
だが、セーラは黒剣をわずかにずらすように払うと、その一突きをあっさりと弾く。
それすらも予想通りとばかりにここから連撃を繰り出すソードレイ。
弾かれた剣が円軌道を描きながら鋭く戻って来てはセーラに襲い掛かる。
黒剣を鋭く、最小限で動かしながら連撃を防御するセーラ。だが、ソードレイの剣撃は鋭さを増し、まるで踊るかの如く剣先がセーラに迫りくる。
「いいぞっ! ソードレイその調子だ!」
「圧倒しろ!」
「いけいけっ!」
コルネリアスの声掛けを皮切りに次々とソードレイに応援の声が飛ぶ。
その様子をグランリスタ将軍は苦々しく見つめていた。
(一騎打ちを「殺さぬ」「試合」などと宣う魔王殿に完全に呑まれたか・・・。だが、ここで応援を止めろと言えば士気が下がる。まったくもって・・・)
グランリスタ将軍はやれやれと溜息を吐く。自分が勝つ以外に生き延びるすべはない。そう言い聞かせながら。
やがてソードレイの剣撃が一瞬止まる。
「奥義:千手斬波!」
無数の斬撃から衝撃波が生まれ、一斉にセーラに襲い掛かる。
だが、セーラは、
キキキキィ――――ン!
そのわずかな剣さばきで悉く衝撃波を打ち消したのだ。
「ば、ばかな!」
驚愕するソードレイ。
「貴殿の剣術は正当な流儀に基づくものであろう。その剣撃は素晴らしい物があるが、それだけではこの私を打ち破ることは出来ぬ」
始めてこの試合、セーラが剣を構える。右手を引き、剣先をゆっくりと前方に向けて倒していく。
「剣技:<無限幾何学>」
シュパァァァン!
ソードレイに見えたのは超高速で迫りくる剣先。その軌道はまるで幾何学模様の様に美しく、複雑であった。円軌道が折り重なり、大きな翼を開くかの如く剣先の世界が広がった。
一瞬にして切り刻まれるソードレイ。
かなりの手加減があったのか、表面を切られた程度で、出血は派手だが、動けないほどではなかった。
(手加減なのか、手数が多い反面威力が薄いのか・・・、どちらにしても見切れるしろものじゃねえ・・・)
剣を杖代わりにしてどうにか立ち上がるソードレイ。
応援していた騎士たちからは一切の声が消えた。
ソードレイの剣舞とも言うべき高速の連撃はいつも通りの冴えを見せていた。いや、本気で確実に殺す気でいった分、今まで見てきたソードレイの剣技を上回っていた。
そのソードレイが相手に一太刀も浴びせることなく、逆に倒されるとは、誰もが信じられなかった。信じたくはなかった。
(手数が通用しねえんだ、後は高威力の剣技の一撃にかけるしかねぇ!)
ソードレイは剣技を準備しながらセーラに剣撃を見舞っていく。
(コイツは発動までに時間ががかるのが難点だが、相手はありがたい事にこっちを舐めているからな、ある程度攻撃しながらチャンスを見つける!)
お互い至近距離で剣をぶつけあう二人。
不意にセーラの視界を遮る様に横一文字に剣を振るうソードレイ。スウェーするように後ろに上半身を逸らして剣を躱すセーラ。
「今だっ! 剣技:<灼熱の一撃>!」
発動とともに剣が真っ赤になり、熱を帯びる。それを右上から左下へ振り下ろす!
だが、
ギャリィィィン!
またも黒き剣は柔よく剛を制すかの如く、斜めに掲げられた剣の刃を滑り、地面へと受け流された。そして、セーラの姿が掻き消える。
鋭く浮かび上がり、宙を舞うその姿は、まさに黒き天使。
「剣技:<万華鏡>」
空中から放たれたその技は、剣先が無限に別れ、まるで万華鏡の世界を描くようにその空中に華麗な斬撃を放つ。
「美しい・・・」
ソードレイは、回避不可のその斬撃を、心の底から美しいと思った。
シュパァァァァ!!
再び無限とも感じられる斬撃に切り刻まれるソードレイ。
全身から血を吹きだし、仰向けに倒れた。
「そこまで! 勝者セーラ・ガルウイング!」
魔王新太は笑顔で勝利者を宣言した。
ソードレイの応急処置のため、少し時間の空いた第二試合。
副将コルネリアスの相手は魔国十二将軍序列二位の竜騎士シェタッフガルドである。
コルネリアスも身長は190cm近くある。だが、真っ黒な全身鎧に身を包んだ黒衣の騎士は優に身長2mを超えている。
背中に背負った真っ黒な大剣も2m近い長さがある。
「バケモノが・・・」
コルネリアスは毒づいた。
この鎧と剣を操れるならば、相当なパワーの持ち主だ。
コルネリアスとて兜こそ外しているものの金色の全身鎧を着ている。
(どう見ても俺の相手は俺の上位互換・・・決め手に欠けるな。ならば・・・)
コルネリアスは頭をフル回転させる。この男、短慮だが口先だけでのし上がったわけではない。実力を認められてこの地位にいた。
「ザグレブ、お前の腰のショートソードを二本とも貸してくれ」
「ええっ!? ええですけど・・・あんなグレードソードとぶつけたら業物とはいえ、粉々になりますよ?」
「ああ、分かっている」
自分の背負っているグレードソードを外し、両手に二本ショートソードを持って前に出た。
「・・・いいのか? 手加減はするが、そのような小剣で我が剣を受ければ、命にかかわるぞ?」
シェタッフガルドは忠告するように宣言した。
「元より承知だ! 構わん、始めるぞ!」
コルネリアスが少しだけ腰を落とし、二本のショートソードを両腕で構える。
それに合わせ、シェタッフガルドも黒き大剣を抜き放ち、正眼に構える。
「第二試合、始め!」
魔王新太の掛け声に、二人は同時に踏み込んだ。
低い姿勢で踏み込み、ショートソードを向けるコルネリアス。
迎え撃つシェタッフガルドが無造作に黒き大剣を振り下ろす。
コルネリアスは僅かに体を捻り、二本のショートソードを合わせ、大剣に当てて軌道をずらす。先ほどセーラがやって来た事を真似ているようだ。そして大剣では不利な超接近戦で、肘関節部分を狙って両腕のショートソードから斬撃を放つ。
コルネリアスの目算では、これで肘の腱を負傷させ、体勢が崩れたところで首を刺突でねらう算段だった。
だが、超接近戦を挑んだのに、ショートソードの斬撃が悉く躱される。
恐るべきスピードと動体視力だった。
やがて、黒き大剣の柄で左手の甲を打たれ、ショートソードを取り落としてしまったところへ、黒き大剣の腹による一撃を横っ腹にモロに喰らって応援していた騎士のところまで吹き飛ばされて気を失った。
「狙いは悪く無かったが、シェタッフガルドの技量はそれ以上だったな。勝者、シェタッフガルド!」
魔王新太は朗々と告げた。
ここに魔国軍の二連勝が確定したのである。
「まおテン!」よろしくお願い致します。
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