第52話 話し合いなら剣で語れ
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さすが鍛え上げられている、と言うべきか。
黒衣の騎士団は十騎のワイバーンを駆る飛竜隊と<古代竜>を操る竜騎士に囲まれても誰一人としてパニックになったり泣き叫んだりしない。
これほどの戦力に囲まれれば通常であれば発狂したり絶望したりしてもおかしくないものではあるのだが。
最も、爽やかな笑みを浮かべているこの魔王様が当人を除いた、ここに集まる魔国の戦力を併せても魔王様一人を上回れない事をどれほどの者が認識をしているかは不明である。
「話し合い・・・かね。とりあえず何を望まれるのかな?」
グランリスタ将軍は努めて冷静な口調で魔王新太に問いかけた。
「もちろん、君たちの去就についてなんだが」
「去就?」
副官のコルネリアスが首をひねる。
「だが、このまま飛竜隊や竜騎士に囲ませておいて話し合いを行っても、高圧的というか・・・弱い者いじめというか・・・なんとなくイマイチな感じだな」
「な、なんだとっ!」
再び副官のコルネリアスが反応する。
「そうだ、こうしよう。君たちはそこの剣士、そしてさっきからうるさい君、そして明らかに大将格の貴殿の3名を代表に、それこそ一騎打ちを行おうではないか。こちらも3名を選んで対応する。どうかね? ちなみにワイバーンや<古代竜>は今回騎獣としての役割のみで選定している。一騎打ちの戦力としては数えないことにしよう」
魔王新太は笑顔を崩さぬままそう告げた。
「異存はない。一騎打ちの結果に何を望むのかね?」
「三戦の内、誰かそちらが一勝でもすれば君たちの勝ちとしよう。今回は好きなだけ塩を持っていくといい」
「できれば今後とも定期的な供給とその分量をまとめて決めて頂けるとありがたいが」
グランリスタ将軍は次回以降もトラブルが無い様契約の締結を求めた。
また、魔王新太がそれなりに信用できるとしての判断だった。
「ふむ、確かにな。いちいちまた一騎打ちを行うのも面倒だしな。よかろう、その案を飲もう。その際は文書を作成し、協議によって決められた項目を守るとしよう。書類の取り交わしにはソルテア国の国王であるシュヴァルツ・ガルム・ソルテア殿にも立ち会ってもらおう」
「それで結構」
「では、こちらの要望だ」
「聞こう」
「お前たち全員の命だ」
一瞬、その場の空気が固まる。
「な、なんだと貴様ッ!」
コルネリアスが再び剣の柄に手をかけ、一歩踏み出る。
「よせ・・・、魔王新太殿。我が部下の命は我が物にあらず。その意思を我が強制できるものではない」
少しうつむき加減にそう説明するグランリスタ将軍。
だが、魔王新太は思った通りと唇をにやりとさせる。
「うむ、実に優秀で部下思いなグランリスタ将軍だからこそ、そのような説明が出るとわかっていた。逆にだからこその提案でもあるのだよ。君の部下が君自身の一騎打ちに自らの命をかけることに異論などないだろうと思うのだがね」
その言葉を受けて返事を返したのは千人隊長ソードレイであった。
「その通りだ。いいだろう、我らの命をかけようではないか。三戦の内、一つでも勝てばこちらの勝利、間違いないのだな?」
「うむ、間違いなく約束しよう。魔国シャングリ・ラを統べる魔王新太がその名においてな。」
その返しに、グランリスタ将軍がソードレイの方を見る。
「勝手なことを・・・」
「すみません将軍。しかし、この竜騎士たちと戦えば我らの全滅は必定。ならば、三戦の内、一つでも勝てば生き残ることが出来る一騎打ちにそのすべてをかけるのみです」
「やりましょう!」
副官のコルネリアスもソードレイに同調する。
(・・・何もわかってはおらんか・・・彼らにどれほどの実力があるのか、正直底が見えん。
ワシでも誰一人確実に勝てるなどと見積もれる者など誰もおらぬ。だが、それ以外に手段が選べぬのもまた事実・・・魔王新太、なんとも策士よの)
いかにも公平に一騎打ちで決着と持ちかけている様で、実のところ圧倒的戦力でこちらの手を封じて、思考の幅を狭めてきている。その上でいきなり攻撃してこずに話し合いの雰囲気をちらつかせたのは、さらなる意図があっての事であろうとグランリスタ将軍は推測した。魔王新太の恐るべき戦略家としての一面を感じ取ったグランリスタ将軍であった。
「それでは、第一試合をソードレイ君が、第二試合をコルネリアス君が、第三試合をグランリスタ将軍が受け持つという事でいいかな?」
「一騎打ちを試合と申すか・・・」
グランリスタ将軍は目を細める。
「別に他意はない。もともと一騎打ちに三勝したらこちらの言い分である「全員の命をくれ」という条件が整う。条件が整う前にその命を奪ってしまうことはフェアではない。違うかな?」
「むっ・・・」
グランリスタ将軍は黙り込む。魔王新太にそう説明されれば、返す言葉が無かった。
「だから、こちらは一騎打ちではそちらの代表者の命を奪うことはしない。だが、それはこちらの条件だけのもの。無論そちらに強要するものではない。全力で殺す気でかかって来てくれたまえ。またそうでなくては面白みもないであろう」
些か下に見るように話す魔王新太にやはりコルネリアスが反応する。
「ふざけるなよっ!吠え面かかせてやる!」
息まくコルネリアスを無視して、魔王新太は最初の対応者を告げる。
「それでは第一試合といこう。そちらはソードレイ殿でよかったかな?」
「ああ、いいぞ」
前に歩み出るソードレイ。
「それでは魔国シャングリ・ラ側もこの一騎打ち三戦に最強の戦力を当てようではないか」
不敵に笑う魔王新太。
「魔国シャングリ・ラが誇る魔国十二将軍第七位、セーラ・ガルウイングよ。お前の剣技に託す」
魔王新太は朗々とその名を告げる。
「ははっ!ご指名ありがたき幸せ。見事な勝利を飾って見せましょう」
ゆっくり、そして優雅に歩み出るセーラ。
「魔国十二将軍とやらの第七位? 第五位の者がいるのに良いのか?」
セーラではなく、ドロステラを見てソードレイが口を開く。
「わたくし、直接戦闘はそれほど得意ではございませんので。それに剣技だけならわたくしはセーラの足元にも及びませんわ。何しろ、剣速と太刀筋に関して言えば、セーラは魔国随一と言っても過言ではありませんわよ?」
ドロステラが不敵に笑う。
「貴殿は剣技においては相当な自信を持っているだろう。見ればわかる。だからこそ我ら魔国側も剣の達人であるセーラを指名しているのだ。存分にその剣技を振るわれよ」
まるでソードレイを応援しているかのような魔王新太のセリフに、ソードレイも面食らう。
「そうか、それほどの者ならばなんの不満もない。ゲンプ帝国が千人隊長ソードレイ。参る!」
腰の直剣を向き放つソードレイ。
「魔国シャングリ・ラ、魔国十二将軍第七位、セーラ・ガルウイング。参る」
あくまでも優雅に腰の剣を抜き放つ。
その刀身は黒く磨かれており、艶めく輝きはすべてを飲みこもうというほどに深い。
長いストレートの黒髪、黒を基調とした鎧。アークエンジェル族特有のダークエルフほどではないが浅黒い肌。全体的にモノトーンなイメージすらするセーラであったが、艶めく黒色がその美しさを引き立てている様でもあった。
「我は話し合いを求める。まずは双方十分に剣で語れ。それでは始め!」
魔王新太の合図に、二人の構える剣先がわずかに揺らめく。
ここに魔国シャングリ・ラとゲンプ帝国の代表者による一騎打ち第一試合が開始された。
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