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第49話 進軍する黒衣の騎士団

ブックマーク追加誠にありがとうございます!

大変励みになります。

今後もコツコツ更新して参りますのでよろしくお願い致します!


「チッ・・・!」


完全に判断ミスだ。敵は圧倒的に実力巧者だ。

すでに三人の人間に囲まれつつある。さらに三人の人間が後詰に来ている。六人に囲まれれば完全に逃げ場はない。

俺はもうどうにもならない。だが、敵の戦力は必ず伝えなければならない。

敵の戦力は二千。それも一人一人が一騎当千のオーラを出している。さらにその先頭にいるこの真っ黒な騎士団のトップであろう黒衣の騎士は絶対にヤバイ。規格外だ。危険な存在だと自分のカンが警鐘を鳴らす。


懐から緊急伝達用の苦無を取り出す。帯は赤。自分の指先を傷つけ、血を出す。苦無の柄に自分の血で印をつける。魔国の諜報部で決められた暗号をである。



「フッ!」



全力で苦無を投げる。それは狙いたがわず目的の木に刺さる。

それを別のオークが引き抜き持ち去る。


「!」


「逃がすな!」


その逃げて行くオークを追いかけようとする人間を一瞬邪魔するように動く。


「くっ!」


これで自分が逃げ切る事は間違いなく出来なくなった。

だが、敵の情報は持ち帰る事が出来ただろう。

一番の問題は諜報部隊が全滅して敵の情報が届かないまま急襲されることだ。

それが回避できただけれも自分が死ぬ価値はある。

・・・1点心残りなのは、ソルテア国へ駐屯する時にオーク隊3000人の前で魔王様がいわれた言葉。


『・・・ソルテア国で従事するお前たちに最後に一つ言っておく。お前達は魔国シャングリ・ラの国民だ。お前達は魔国民として幸せになる権利がある。だから何があっても死んではならん。良いか、お前たちの命より大事な任務などない。死んではならんぞ。必ず生きて帰れ』


魔王様の指示に応えられない、その事だけが心に刺さっていた。






「ゲルリック様!」


ガガン!ガガン!ガガン!


超緊急警報が鳴る。


「どうした? 最重要警報だなんて」


ソルテア国警備隊長であるゲルリックが慌てて戻って来た諜報部隊の一人に声を掛けた。

見れば諜報部隊は15名出しているのだが、その内の14名が戻って来ている。明らかに異常だ。報告に数人が戻って来る事があってもほとんどが戻って来ることなど無い。


「報告致します! 敵兵がC地点を超えてこちらへ進軍しております! その数総勢二千!」


「なんだと!」


「しかも、全て乗馬した騎士で、フル装備の状態です!」


「騎馬兵なのか! しかも騎士だと!」


魔国シャングリ・ラで軍事教育を座学で受けた際の話だ。

最も攻撃力のある敵、それが騎馬兵である、と言う事だった。

最も魔法など、別の攻撃を除いての話だが、物理的攻撃力で言うと、その突撃力は侮れないとのことだ。


「・・・ところで、リーダーのボーデックはどうした?」


諜報部隊として、15名を選出したゲルリックだが、そのリーダーに抜擢したのがボーデックであった。戦闘力も高く、冷静な判断も出来る男だった。


「リーダーは・・・敵に囲まれました。この苦無をゲルリック様に届けるために囮になりました」


「なんだとっ!」


「敵の戦闘力は我々と同格か、もしくはそれ以上かと思われます! 敵の先行する諜報部隊と接触した際もボーデックリーダーのこの苦無を受け取って逃げるのが精一杯でした。ボーデックリーダーの指示になりますが、もし残っていたら、我々は2~3名ずつの部隊で散らばっていましたから、各個撃破されて、情報が届けられなかった可能性が高かったのではと・・・」


「それほどか・・・、ではボーデックは・・・」


「・・・はい、少なくとも捕らわれているか、もしくは・・・」


「くっ!」


魔王様にソルテア国に送り出される時に、「一人も死んではならん!」と御言葉を言われたことを思い出す。

だが、今はこのソルテア国を守らねばならない。


「また、敵軍の先頭を進むひと際大きな黒い馬に乗った騎士は、完全に別格の雰囲気を持っており、明らかにレベルの違う戦闘力を有していると思われます」


「なんと・・・」


我々オークの戦闘力を個人で越えて来る人間の騎士が二千もやって来る。

余りに条件が厳しい。


「ゲルダーを呼べ! 採掘に言っているメンバーにも召集をかけてもらってくれ! それから魔王様よりお預かりしている魔道通信機を使う。大至急情報を纏める!準備してくれ!」


「「ははっ!」」







「ソルテア国に敵軍二千の騎士団来襲。騎馬隊で戦闘力も高く、敵指揮官は高位の実力者の模様。至急援軍を要請します・・・と」


魔王様より預かった魔道通信機に手紙を書き、挟んでスイッチを押す。

これで書いた手紙の内容が魔国の魔王城へ届いているはずだ。


先の情報では諜報部隊は敵がC地点を超えて来ているところまでは確認している。

確認場所で決めているのは残り、B地点と最もソルテア国に近いA地点だ。

そのまま進軍して来ているとすればそれほど時間に余裕はない。


「ゲルリック!敵が攻めてきたという事だが?」


すでに鎧と戦斧を装備しているゲルダー。


「ああ、敵軍の精鋭部隊の様だぞ。諜報部隊のリーダーであるボーデックが捕らえられたようだ」


「なんだとっ!」


「諜報部隊も離脱が後一歩遅かったら捕まってこちらに情報が送れなかったようだ」


「それほどの相手か・・・」


ゲルリックの説明にゲルダーも深刻さを感じ取る。


「魔王様に報告は?」


「済ませた。やはり魔道通信機をお借りしてよかった。後は何とか持ちこたえたら誰かは援軍に来るはずだ」


「飛行できる将軍クラスの方が来てくれるとありがたいが・・・、遅くてもワイバーンの竜騎士が派遣されてくるならば、三時間というところか?」


「ただ、敵は二千の騎兵だ。どれほど持ちこたえられるか・・・」


ゲルリックが腕を組んで難しい顔をする。


「なんだ、弱気だな。俺たちにできる事はこの身を盾にして進軍を止めるのみ!」


「そうだな・・・敵は二千だ。どう対峙するか、陣形を考えよう」


「そうだな。部下たちには武器と鎧を装備させておこう」


ゲルリックとゲルダーは敵を迎え撃つための準備を早急に始めるのだった。






「随分とてこずらせてくれたやないか」


すでにボーデックは捕らえられ縛られていた。


「三対一じゃキツかったっすね」

「それに、なんでかこっちを殺す気が無かったみたいですね」


「よーわからんが・・・、敵の斥候がオークってヤバないか?」


ゲンプ帝国黒衣の騎士団、百人隊長ザグレブは頭を掻いた。

ソルテア国に亡命する・・・それくらいの覚悟で来たのに出てきたのがオークとは・・・。


「で、ソルテア国ってどーなっとるわけ?」


「・・・・・・」


ある程度痛めつけられてから縛られているボーデックが引き立てられて来た。

だが、ボーデックは一言も喋らない。


「魔物が何でソルテア国にいるのよ? まさか魔王軍に蹂躙されちゃったわけ?」


「!!」


一瞬、ふざけるなと言いかけたボーデックだが、グッと我慢して黙り込む。


「ん~、諜報部隊でもある俺らとしちゃ、情報ゼロってわけにゃ~いかないんだよな」


そう言って縛られたボーデックの後ろに回るザグレブ。

後ろ手に縛られているボーデックの右手の人差し指を引っ張り出す。


「聞いても答えへん悪いコにゃ、オシオキがいるわなぁ」


ボギィッ!


「!!」


思いっきり逆向きにねじってボーデックの人差し指をへし折るザグレブ。

だが、一言の悲鳴すら上げずただただ耐えるボーデック。


「ん~? 魔物やと人間の言葉喋られへんのか?」

「いや、最初遭遇した時に「チッ」っと舌打ちしてましたからね、多分喋られるとは思いますよ?」


それこそボーデックは心で舌打ちした。

このザグレブという男の隙の無さもそうだが、部下も一流の観察眼と戦闘力を持っている。

正直人間にこれほどの連中がいるとはボーデックは思っていなかった。

常日頃隊長のゲルリックが魔王様より人間は多種多様であり、千差万別であるから、その個体の見極めが大事なのだと注意されていたのに、この失態である。何より自分自身に腹が立った。


「お~、頑張るねぇ。何本耐えられるか、ちょっといってみよか?」


ボギィッ!


さらに中指を折る。


脂分を掻くボーデックだが、声は漏らさない。


「大したもんやなぁ、次いこか?」


だが、三本目を折る前に本体が到着したようだ。


「アカンな。本体到着前に情報が何一つあらへんわ」


肩を竦めるザグレブ。


「どうした、何かあったのか?」


副団長のコルネリアスが声を掛けてきた。


「敵の諜報部隊の一人というか・・・一匹と言うか・・・を捕まえたんやがな」


「オークだと?」


どういうことだ?という表情でザグレブを見るコルネリアス。


「この分やと・・・ソルテア国に魔物が入り込んどる可能性が高いなぁ」


「なんだとっ!」


コルネリアスが腰の剣を抜く。


「すでにソルテアは魔物の巣と化していると言うか! ならば殲滅するのみだ!」


「ちょっと待ちいな。だからどれくらいの魔物が入り込んどるかコイツから情報を得ようとしとるんやないか」


「魔物が喋るのか?」


ザグレブの言葉に疑問を呈するコルネリアス。


「喋れるらしいんやがな、指二本へし折ったってもうめき声一つ上げへん。魔物ってタフなんやろか?」


「そんなもの、魔物に慈悲は無い!腕の一本も切り落とせば泣き叫んで命乞いをするだろう」


そう言って剣を掲げるコルネリアス。

ボーデックは地面に膝を付けさせられた姿勢のままコルネリアスを見上げた。

魔物に慈悲は無い、魔物は喋れるのか、多くの人間が我々オークのような魔物、魔族、亜人に対する基本的な考え方なんだろうと思った。

魔王様は言った。人間は多種多様な考え方を持つ。その取捨選択が大事なんだと。

だが、この人間は残念な部類のようだ。取捨選択するなら、捨てる方だろうか。

殺される寸前ではあるが、ボーデックは魔王様のいった取捨選択でいう拾い上げねばならない人間に会ってみたかったと思った。


「おいおい、マジかいな?」


ザグレブが少し心配になるが、コルネリアスが剣を振り下ろす前に怒鳴り声が上がった。


「何をしている!」


コルネリアスが振り返ると、そこにはひと際大きな馬に乗るグランリスタ将軍と千人隊長のソードレイの姿があった。


「これは将軍、今魔物の討伐を行うところです」


グランリスタ将軍は馬を止めると、馬から降り、コルネリアスに近づいた。


「将軍?」


「何を勝手な真似をしているか!」


バキッ!


いきなりコルネリアスを殴りつけるグランリスタ将軍。


「しょ、将軍?」


殴られたコルネリアスは一体なぜ自分が将軍に殴られたのか全く理解できずにポカーンとしてしまった。


「見ればすでに縛られて拘束されているようだが。ザグレブ、お前の仕業か? 一体どういうことか?」


そこでザグレブはこれまでの一連の状況をグランリスタ将軍に説明した。


このオークがソルテア国の斥候である事。

すでにソルテア国が魔物に蹂躙されている可能性が高い事。

オークの仲間がソルテア国に逃げ帰っている事。


そこまで聞いたグランリスタ将軍は縛られているボーデックの前に片膝を付いた。


「しょ、将軍?」


コルネリアスが驚く。


「縄を解け、ザグレブ。部下が大変失礼した。貴方はソルテア国の兵士で間違いないだろうか?」


「しょ、将軍?」


今度はザグレブが驚く。


「早く縄を解け、ザグレブ。俺は使者としてソルテア国に向かっているのだ。別に戦争を仕掛けに来ているわけではないのだぞ!」


ここで初めてボーデックは驚く。これほどの騎士が使者として来ている、戦争をしに来ているわけではない、とはっきり言った上に、俺のような魔物に膝を付き丁寧な声を掛ける。


(この男・・・本物か)


「使者として来ている・・・とのことだが。ゲンプ帝国の将軍とお見受けするが間違いないだろうか?」


「オ、オークが喋った!」


コルネリアスが素直に驚く。

じろりと睨むグランリスタ将軍。


「部下が無知で申し訳ない。早く縄をとけ、ザグレブ」


「は、はい」


「私はグランリスタ・フォン・ゴッセージという。ゲンプ帝国では将軍の座を預かっている」


ボーデックの縄を解くザグレブ。腕が自由になったので手首をぶらぶらさせて立ち上がる。


「・・・?指をどうかされたのか?」


「貴殿の部下に二本ほどへし折られたのでな」


「貴様ッ!」


ザグレブに殺気を飛ばすグランリスタ将軍。


「それ自体は気にしなくても結構。我に力が無かったから捕らえられただけの事。ところで、ソルテア国には使者として向かわれるとのお話であったが、何用で向かわれるのかお伺いしても?」


余りに流暢に喋るオークに完全に飲まれているコルネリアスとザグレブ。

ソードレイは油断なくグランリスタ将軍の後ろに控えている。


「我がゲンプ帝国はソルテア国から塩の供給を受けております。その塩の供給が滞っておりましてね。その確認のために使者として任命された次第です」


少し考えていたボーデックだが、


「なるほど・・・では、このまま我を捕虜として進まれるが良いでしょう。ただ、お話は城門の外で聞くようになると思いますが。それから特に縛られなくても問題ないですぞ。貴殿の腕ならば、我が逃げようとする一瞬でこの体を真っ二つに出来るでしょうからな」


そう言って不敵にボーデックは笑った。


今後とも「まおテン」応援よろしくお願いします!

(自分で愛称呼んでます(苦笑))

よろしければブックマークや評価よろしくお願い致します。

大変励みになります(^0^)

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よろしければぜひご一読頂けましたら幸いです。

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