第47話 ゲンプ帝国動く
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「一体どうなっておるのだ!」
ここはゲンプ帝国、帝都ゲンプリーアの帝城ゲルドアーク。
謁見の間で皇帝の座に座り、怒鳴り散らすのはゲンプ帝国、皇帝ドムゲスタであった。
「何故塩が届かぬ!ソルテア国は一体何をしているのか!取り立てを担当しているのはどこの領か!」
大事な塩の確保を担当する領を治める責任者を知らぬ時点で愚鈍な皇帝であるとの誹りを免れないであろう。だが、それを指摘するものはここにはいない。すれば首が飛ぶ。
「はっ! 北のズアノーン子爵領かと」
「今すぐズアノーンを呼べっ!」
「ははっ!」」
「お、お呼びたてとの事・・・ズアノーン参りましてございます」
「貴様ッ!どういうつもりか!全く塩の納品が滞っているではないか!どう責任をとるつもりか!」
「ひいいっ!も、申し訳ございません!すでに、三度、塩を回収する部隊を送っております。が、一度も部隊が戻らないのです・・・」
「な、なんだとっ!?」
声を荒げたのは国務大臣を務めるベルガー卿であった。
「い、一体どれほどの期間でどれくらいの人材を送っておるのだ!」
声を荒げて詰め寄るベルガー卿。
塩の納品が滞っている実態は把握していても、まさか三度もソルテア国へ使者を送っているとは思っていなかったのだ。
「あ、あの、その・・・」
「はっきりと申さんか!」
ベルガー卿の怒声にズアノーン子爵は震え上がる
「は、ははは、はいぃぃぃ! 帝国3級兵士を三度、最初は500名を百人隊長ゲスガンに率いさせて派遣しました。次は700名を同じく百人隊長ドドーリアに率いさせました。そして最後は千人隊長のザボーンに1000人の兵と盗賊上がりのカバル兄妹を付けて送りました・・・」
「な、なんだとっ・・・、そ、それで、その期間は!」
「に、二週間の間にです・・・」
「ばかなっ!」
「なんだ、騒々しいぞ、大臣」
ベルガー卿が声を荒げるのを見て、自分今まで一番やかましかったことを棚に置いて注意する皇帝ドムゲスタ。
「こ、これが驚かずにいられますか! 僅か二週間の間に三度も遠征してその総兵力は2000を超えております!その悉くを退けられる戦力が今、ソルテアにあるという事ですぞ!」
使者を送ったのならともかく、まさか兵団を送っているとは。
そして、それにも関わらず塩は納品されず、兵士たちが一人も戻ってこない。
ベルガー卿はソルテア国に2000を超える兵士を撃退するだけの戦力が残っていないことを承知している。それだけにこの状況はまさに非常事態であった。
帝国に置いて兵士は1級から3級までの3つに分けられている。1級が最も鍛え上げられており、それ以上は兵士ではなく騎士扱いとなる。3級は新人や野党、盗賊などの寄せ集めなどで構成されているため、戦力としては大きくはない。だが、それが総勢2000を超える部隊を一蹴されているとなれば話は別だ。ただでさえ戦力のないソルテア国のはずなのに。それにカバル兄妹と言えば凶悪な盗賊上がりの連中であり、千人隊長も手を焼くほどの存在だったはずだった。それすらも退けられているというのか。
「だからなんだ。大体ソルテアは北の山奥ではないか。断崖から落ちたりしたのかもしれん」
「それはそうですが・・・」
帝王ドムゲスタの余りの楽観的な見解にベルガー卿は呟くのが精いっぱいだった。
「ならば、誰かを使者に立てればよかろう。この帝国に弓を引くのかどうかを確認にな!」
「・・・誰を送るのですか?」
「無敗の将軍、グランリスタ・フォン・ゴッセージ」
「じょ、常勝将軍を送るのですか!? 使者に!?」
ベルガー卿は驚くとともに、帝王ドムゲスタの思惑を感じ取った。
常勝将軍と虎の子の黒衣の騎士団を送り込み、ついにソルテア国を滅亡させ、帝国に併呑するつもりなのだ、そうベルガー卿は思った。ここにいる諸将たちもそう思っただろう。
グランリスタ・フォン・ゴッセージ伯爵は2年前に亡くなった先代帝王ドランスタの頃から仕えている騎士で、この国最強の戦力でもある。戦場に出れば一度も敗退することなく必ず勝ちを治めてきた。それだけに絶対的な信頼と実績を勝ち取って来ている将軍なのである。
そのいで立ちは黒く染まった魔法の大剣と漆黒のフルアーマーに身をゆだね、正しく黒衣の騎士の名にふさわしいものであった。
だが、この将軍は堅物で真面目でもある。そのため帝位がドムゲスタに代わり、他国への侵略戦争を開始した際には最も強く反対したのがこのグランリスタ将軍であった。
事あるごとにドムゲスタを諫めるが如く反対意見を述べてくるため、ゲンプ帝国元帥の位置にいたグランリスタ将軍はその地位を解かれ、遊軍として、指示のある場所に移動しては戦闘を繰り返していた。だが、グランリスタ将軍の元につく2000の歴戦たる騎士たちは正しく一騎当千のつわものたちであり、グランリスタ将軍の着る黒いフルアーマーと合わせ、全員に漆黒に揃えた武具を装備している事から黒衣の騎士団と呼ばれていた。
その常勝将軍を使者に立てる、それは、相手を攻め滅ぼす、そう言っているのか。
ベルガー卿は額の汗を拭いた。
「我が向かうのですか・・・?」
「そうだ、お前一人で出向け。使者としてな」
「なっ!」
声を上げたのはベルガー卿であった。
グランリスタ将軍は黙ったまま皇帝ドムゲスタを見つめている。
「使者なのだから兵などいらん。どういうつもりなのか正してまいれ。早く塩を治めよとな!」
ニヤリと口角を上げ、言い放つドムゲスタ。
その皇帝ドムゲスタを信じられないと見つめるベルガー卿。
「(ま、まさか・・・)」
ベルガー卿は嫌な思いが胸を渦巻くのを止められなかった。
「(まさか、グランリスタ将軍をソルテア国に殺させる気か!)」
その上で常勝将軍を殺されたと喧伝し、ソルテア国に攻め込む大義名分を得るつもりなのだ。自分の意図に従わないグランリスタ将軍を始末した上で。
「(だが、自分の意に沿わないからと言って、自国最強の将軍を切り捨てるとは・・・)」
余りの残忍さにベルガー卿は冷汗が止まらなかった。
すでに三度の軍を送り、2000人以上がソルテア国に向かったのに誰一人として戻って来ないのだ。将軍が一人で出向けば如何に常勝将軍と言えども間違いなく殺されるだろう。
「すぐに出立せよ! 早く塩を送らせろ!」
「・・・御意」
そういうとグランリスタ将軍は謁見の間を出て行った。
多くの諸将はグランリスタ将軍の背中を憐憫の情をもって見送った。
多分、もう二度と常勝将軍が戻って来ることは無いであろうと。
そしてその思いはある意味正解であり、ある意味間違っているものとなるのであった。
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