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第46話 ソルテアを守る双璧

ブックマーク追加誠にありがとうございます!

大変励みになります。

今後もコツコツ更新して参りますのでよろしくお願い致します!


ソルテア国―――――


ガッ!ガッ!ガッ!


岩塩を採掘する鉱山内に今日も派手に岩石を砕く音がこだまする。


「ゲルダー隊長。今日も予定よりハイペースですぜ。この分だと一か月の納品予定分を大幅に上回る塩が精製出来ちまいますよ?」


部下からの声がかかる。確かに予定よりも順調に採掘が進んでいた。


「精製した塩は防湿に気を付ければ長期保存が可能だ。なにより岩塩のままならいくら保管してあっても品質の劣化がない。俺たちが掘り出す分にはいくらあってもいいだろう」


どこまでも真面目なゲルダー。

魔国に、というか、魔王新太に得になることであれば、どんどん進める。ゲルダーの根幹にあるのは「魔王様のために」であった。


「ですが、ちょうど昼休憩ですよ、ゲルダー隊長。隊長が休憩に行かないと部下が休みづらいですぜ」


部下からの指摘にさもありなん、と頷くゲルダー。


「部下に気を遣わせては隊長失格だな。しっかり休憩をとって午後の作業に備えるとしよう」


ゲルダーはつるはしを担いだまま、部下たちにも昼休憩をとるように指示し、鉱山を出ることにした。





鉱山を出たゲルダーたちを待っていたのはハンナ達女性給仕だった。


「ゲルダーさん、お疲れ様です!」


そう言ってタオルとともに渡してくれたのは水筒とサンドイッチが3つほど入った籠であった。


「これは?」


いつもは昼休憩の時は樽に用意してある飲み水を汲んで飲み、座って一息入れる程度だった。だが、ここ最近は女性給仕たちがお気に入りのオークたちに果実水の入った水筒や自分の手で作ったクッキーやサンドイッチなど、軽くつまめる食事を持ち寄ってプレゼントしていたのだ。ゲルダー狙いのハンナもこの流れに乗ってしっかりと準備してきていた。


「いつも肉体労働で大変でしょうから・・・お昼の休憩でも軽く何か食べられるものを、と思って」


そういいながらハンナは休憩場所の隅の方へゲルダーを案内して座らせると、水筒のフタを開けてゲルダーにコップを渡し、果実水を入れてやる。


「これは、わざわざハンナ殿に注いでもらうなど・・・」


「クスクス、遠慮しないでください、ゲルダーさん」


遠慮しようとしたゲルダーを先んじて制すハンナ。

みれば他の連中も思い思いの女性給仕たちがお目当てのオークを誘って二人っきりになって果実水を飲んだり、ちょっとした手作りの食材を食べさせている。


ちなみにゲルリック率いる警備隊チームは昼間行われる訓練の合間にある休憩時を狙って女性給仕たちが集まってきていた。




その時だった。


カンカンカンッ!


けたたましく鐘の音が鳴る。敵襲を告げる警報の音だった。


「むっ!」


ゲルダーの顔が一瞬険しくなる。


「また、敵が攻めてきたのでしょうか・・・」


「うむ、その可能性が高いな。すまない、私も出る」


そう言って立ち上がるゲルダー。


「誰か、俺の鎧と戦斧を持て」


「「はっ!!」」


休憩中ではあるものの、ゲルダーの部下たちの動きは速い。

ゲルダーのテントにある鎧一式と兜、そして戦斧を取りに行く。


「ゲルダーさん・・・まさか、戦場へ? それはゲルリックさんたち警備隊のお仕事ですよね?」


暗にゲルダーに危険なところへ行って欲しくない、というハンナの気持ちが漏れた言葉だった。


「警備隊の隊長はゲルリックであり、奴の部隊がソルテア国の警備を任されているのは事実だが、相手の戦力によっては俺たちも兵として戦場に出る。その判断を俺とゲルリックで行わなければならん。万一ゲルリックの部隊が破れ、このソルテア国に敵兵が流れ込むようなことがあってはならぬからな」


そう説明している間に部下たちが取りに行った武具が到着する。鎧を着けさせるのを手伝わせるゲルダー。

装着が完了し、歴戦の勇士としての雰囲気を醸し出したところで、ハンナが改めて声をかける。


「必ず、戻ってきてくださいね、ゲルダーさん」


「もちろんだ」


ゲルダーは大きくうなずいた。






「ゲルリック隊長。すでに後方奇襲部隊の700名、展開準備完了しております」

「また、撤退勧告を無視して突っ込んできますかね?」

「随分と知能の低い連中だったからな、その可能性は高いだろう」


部下たちが口々に意見を言う。前々回500名、前回700名のゲンプ帝国兵士が塩を奪いにやってきた。

その時ゲンプ帝国兵士たちに対峙したのがゲルリックである。

ゲルリックは早々に立ち去るならば命はとらないし追撃もしないと明言したのだが、ソルテア国にオークが駐屯しているなど想像もしていないゲンプ帝国兵士たちは魔族が攻めてきたのかと勘違いしたのか、城に突入してきた。そのため、伏せていたオーク兵と真正面に陣取ったゲルリックたちで挟撃を行い、これを殲滅したのだった。



「油断するな。前回の兵士たちは練度も低く実力のない者たちばかりだったが、今回もそうとは限らん。魔王様より撤退する者たちには手出し無用と言われている。逆に敵として向かってくる者たちは殲滅してこちらの情報が漏れないようにしろも言われている」


「なんとなく矛盾している気もしますが」


部下の一人が首をかしげる。


「人間国とすべてにおいて敵対したいわけではない、というのが魔王様の御心であろう。敵として向かってこなければ、対等に付き合う用意があるし、危害も加えないという意思表示であろう。逆に手向かってくる者たちは俺たち魔国の者たちが人間国に駐屯してることを危険だととらえるだろう。危険な情報として持ち帰られて更なる討伐隊を引き寄せることはあまり好ましくないともお考えのようだからな」


「魔王様は思慮深いお方でありますな」


「ああ、そして敵兵が見えた。これは諜報部隊の情報通りだ。前回よりも多いようだな」


腕組みをしながら、ゲルリックは城壁の上から集結した敵の軍を見つめた。



「おらあ!てめえら何塩を送らず籠り切ってやがんだ!ブチ殺すぞ!」

「俺たちカバル兄弟が来たからには女はすべて俺たちがかわいがってやるぜ!」


約1000人程度の軍団のようだが、兵士というよりはやはり野盗にしか見えない連中だった。


「うーむ、ゲンプ帝国とやらは盗賊の集まりなのだろうか?」

「所詮人間の国ですからな、この程度のレベルなのでしょう」

「待て、人間は多種多様だと魔王様も申しておったろうが。目に見えた一面だけで人間という種族を判断すると極めて痛い目を見ることになる、とな」


部下の人間を甘く見がちな判断に釘を刺すゲルリック。


「確かに、そう仰っておられましたな」

「つまり、あの連中のレベルが低くても、その後に控える帝国の連中はまた別、と考えねばならないということですな」

「その通りだ」


そういうとゲルリックは手に持っていた槍を天高く突き上げる。


「我はソルテア国を守りし警備隊隊長のゲルリックである! 貴様らが無法を侵さず、このまま帰るのであれば命を取らず、追撃もしないと約束しよう。返答はいかに!」


朗々と声を張り上げて伝えるゲルリック。だが、カバル兄弟は1000人の兵士がいることに自信があるのか、城にそのまま突撃命令を出す。


「アホが! 貴様らオークごときが舐めた口をきいてんじゃねえ!」

「お前ら! 城内の女は好きにしていいぞ!」

「「「「「おおおおおっ!!!」」」」」


「愚かな・・・、ではその命を持って判断の過ちを償うといい」


そういうと城門の前に飛び降りるゲルリック。


「開門!出陣!」


自分を含めた約800名のオークを出撃させて、その城門を閉める。


「はっはー!俺たちの方が多いぜ!」

「殺しまくれ!」


雄たけびを上げながらカバル兄弟を先頭に突撃してくるゲンプ帝国兵。

だが、


「うわあああ!」

「なんだ!?」

「う、後ろからも!」


伏兵として潜ませていた700名のオーク兵が一斉に敵の背後から襲い掛かった。

まして魔国の兵として鍛え上げられたオークたちである。盗賊まがいのゲンプ兵たちなど、10人束になってかかってもオーク兵一人を打ち倒すことさえかなわない、それほどの戦闘力の差があった。


「ちぃ!」

「こうなったら指揮官を仕留める!」


カバル兄弟が交互にヒットアンドウェイを繰り返し、的を絞らせないように攻撃してきた。

ノッポのショートソードと投げナイフ、チビで太っちょのショートスピアーでの攻撃で相手をかく乱しながら攻めるのがカバル兄弟の戦術だった。


「そこそこやるようだが、俺を甘く見すぎだ。俺は『戦槍(せんそう)のゲルリック』!槍さばきにおいてはお前ら人間なんぞに負けてはおれんよ」


ショートソードや投げナイフを駆使して飛び回るような攻撃を仕掛けてくるカバル兄弟に鋭い槍回しで対抗するゲルリック。


そこへ、


ギィィィィィ


城門が開いたと思ったら、さらに鎧に身を固め大きな戦斧を持ったオークが現れた。


「『戦斧のゲルダー』参る」


「なっ!てめえら卑怯だぞ!助っ人なんて!」

「魔物は卑怯な連中だぜ!」


自分勝手に喚き立てるカバル兄弟をゲルリックの高速の槍がとらえる。ノッポの方の肩を貫き、即座に引き抜くとチビの太っちょの方をゲルダーの方へ弾き飛ばす。


「「これで・・・」」


ジャキッと槍の先端をノッポに向けるゲルリック。

戦斧を大きく振りかぶるゲルダー。


「「終わりだっ!」」


ゲルリックの突き出した穂先は寸分の狂いなくノッポの胸板を貫き、ゲルダーの振り下ろした戦斧はものの見事にチビの太っちょを真っ二つにした。


指揮官の二人を倒されたゲンプ帝国の兵たちはただでさえ劣勢だったのに頼るべき指揮官もいなくなりパニックに陥ったところをすべて討伐された。


「この程度の敵ならば、いくら来ても恐れることはない・・・が」

「うむ、何度兵を送っても帰ってこないとなれば、より上位の兵士が派遣されてくる可能性もあるな」

「油断はできぬな」

「うむ、念のために、魔王様にアレ(・・)の支給をお願いしておくか。万一のためだ」

「そうだな、我らの命はともかく、突破されればソルテア国に大きな被害が出る。これまでの戦況報告とともに、具申しておくとしようか」


ゲルダー、ゲルリック、二人の指揮官はまさしく勝って兜の緒を締め直し、より盤石な防衛準備を計画するのであった。


今後とも「まおテン」応援よろしくお願いします!

(自分で愛称呼んでます(苦笑))

よろしければブックマークや評価よろしくお願い致します。

大変励みになります(^0^)

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