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第44話 絵本の影響と塩の販売

ブックマーク追加誠にありがとうございます!

大変励みになります。

7月7日から書き始めましたこの「まおテン」も約半年続けることが出来ました。

ひとえにお読みいただきました皆様の応援のおかげでございます。

年内の「まおテン」更新はこの44話が最後になります。

皆様も良いお年をお迎えください。

そして、来年もコツコツ更新して参りますので応援よろしくお願い致します!


シスターは泣いていた。

開いた『絵本』を濡らさない様に慌てて涙を拭う。


この山村は裕福ではなく、日々の食糧確保にも困るほどであった。だが、この教会には孤児となってしまった子供たちが10人近くもいた。

食べ盛りの子供たちに満足な食事を用意してやれないことにシスターは心を痛めていた。

だが、先日この村を訪れた商人のキャラバン隊がたくさんの食糧を寄付してくれたのだ。その時に絵本と呼ばれる書物も寄付してくれた。

書物など、あまりに高級で魔術師か貴族、国でもなければ持っていないほど高級そうな本であった。

キャラバンで来たゼゼコペンギンの隊長は「子供たちに夢物語として聞かせてやって欲しい」と言っていた。

生きるのに必死な痩せた山村なのだ。娯楽など望めようも無かった。

その自分たちに食料は元より、絵本をプレゼントしてくれた。


その『絵本』を読み聞かせる前に自分でまず読んでみよう、と思ったのだ。

だが、読み進めると、その内容はとんでもなかった。


『異世界』に住んでいた人間の少年が、いきなり『この世界の魔王』になってしまった。

そして人間を滅ぼせ、と。

シスターは自分がそんな目にあったら正しく地獄だ、と思う。心が折れて絶望してしまうだろう。

だが、この少年は違った。

人と魔族が争う事を止めようとしている。

人と人が争う事すら、なかなか無くならないこの世界で、人と魔族の争いすら、「悲しい事」として止めたいと願う魔王になってしまった人間の少年。

彼の心にはどれほどの重圧がかかっているのだろうか?

そして彼は元々人間だったのだ。魔族を人間に攻め込ませない様に止めているのだ。

なのに人間は彼を「魔物だ」といって敵視する。排除しようとする。


「・・・・・・」


シスターの信仰する教義はマイナーなもので、魔族はすべからく敵だ、殲滅だ、みたいな教えが無かった。

そのため、あまり魔族を忌み嫌う気持ちが無かったのも幸いしたのかもしれない。

シスターはシンプルに『絵本』で子供たちに、人をいつくしむことに大切さ、そして、異種間でも争ったり、傷つけ合ったりすることが辛く悲しい事だと教えてあげたいと思った。







「いや~~~、この俺が石を投げられて泣いて走って逃げる絵が凄く良いんだよ~、哀愁漂って泣かせるね。さすがエリー、いい仕事するね!」


「えへへ・・・魔王様に褒められちゃった・・・」


エリーが頬を染めて嬉しそうにほほ笑む。


「わたしくは新太様が虐められる絵なんて、辛くて見ていられませんわ・・・」


ドロステラが目を伏せる。


「でもでも、この最初の嬉しそうな笑顔を見せる少年の絵! とっても可愛いですわ! 新太様の素顔をエリーに見せて参考にさせただけありますわね!」


最初のページに書いてある挿絵は、異世界で幸せに生活している頃の俺をイメージして描いてもらっている。

楽しそうな笑顔、蛇口を捻って出て来る水で手を洗う姿、たくさんの食べ物に囲まれる姿。


「新太様の元居た世界って、こんなに素晴らしいのですわね・・・」


ドロステラが少し憧れと羨望を込めた視線で新太を見る。


「え、いや、その・・・空想だよ、空想。人間とうまい関係を築かないといけないからね」


慌てて手を振りながら説明する。


「ふふふ・・・新太様慌てられたお姿も可愛いですわ!」


「(アレ・・・この絵本のままだと思われてる・・・? まあ、事実なんだけど、そうすると魔王の中身が入れ替わってることになっちゃうわけで・・・)」


ドロステラがとても暖かい目で新太を見つめている。


「新太様・・・わたくし、何があっても新太様の味方ですわ・・・」


キラッキラに目を輝かせて新太を見つめるドロステラ。


「わ、私も何があっても魔王様のお味方です!」


エリーも真剣な眼差しで新太を見つめる。


「あ、ありがと・・・」


素直に喜んでいいのかわからないが、応援してもらえることは素直に喜ぶことにした。






「こっ・・・これは・・・あんさん何ちゅうモンを手に入れてくださったんや・・・」


ゼゼコペンギンキャラバン隊の隊長、ヘイジは魔王新太がそっと出してきた白い粉を手先にちょびっとつけて、舐めてからそう言った。


「くくく・・・魔王の力を持ってすればこれくらい容易き事」


「なっ、なんて恐ろしいんや・・・。これが出回ったら、もしかしたら、いや、間違いなく戦争や・・・」


ヘイジは驚愕した。魔王様の持ってきた『白い粉』。恐るべき精製度。そして質の高さ。味の良さ。これほどの品質の『白い粉』をヘイジは知らなかった。


「出来れば、少しずつでも世に広めて行こうかとな・・・」


「なんて恐ろしい事を・・・コイツを知ったら、もう後戻りは出来んくなる・・・貴族や金を持つ商人程欲しくなるで・・・」


ヘイジは遠い目をして考える。

口が堅い取引先に少しだけ卸して様子を見る・・・。

高くて少々でも定期的に出せるなら、上流階級向けのレストランや大商人には目を引くかもしれない。


「だが、今のところ、生産もそんなに多くなく、量も準備出来ないのでな。どうしても少量で高い物になるだろう」


「コイツは、出すところを間違えんようにせんと問題になりそうやなあ・・・」


ヘイジは冷汗が止まらない。


「それほどか?」


「それほどですわ、この『塩』は。こりゃあヘンに知られれば間違いなく戦争になるで・・・、こっちも身を守らんと・・・」


そう、今まで話に出ていた『白い粉』は『塩』である。

ヘイジの話では、今まで市場に出回っている『塩』は海水を天日干ししたもので生成されており、精製技術が荒く、不純物が結構混じっている。

そのため、新太がソルテア国から輸入している岩塩を精製した『塩』は圧倒的品質であり、ヘイジからすれば信じられないほどの品質であった。


ヘイジの心配に魔王様が協力を申し出る。


「この前、国境近くのエルフの村のピンチを救ってね。仕事の協力申し出がエルフからきてるから、亜人OKの国にはエルフの護衛を付けようか。亜人NGの国は、人間の護衛を増やしてもいいけど、変身術を持つ魔族の護衛を付けるよ」


「魔王様・・・本気でんな。本気で『塩革命』を起こすつもりでんな・・・」


冷汗を拭きながらヘイジが覚悟を決めようとする。


「いやいや、実際のところ、世の中をひっくり返すほどの量は作れないよ。今までの塩の流通は変わらないかな? ただ、今までよりも数段上のクオリティを誇る魔国の塩が僅かでも流通し、一部だけでもその高い品質の味に慣れてくれればありがたいよ」


新太はヘイジににっこりと笑いかけた。


今年一年(実質半年ですが)ご愛読誠にありがとうございました。

来年も「まおテン」応援よろしくお願いします!

(自分で愛称呼んでます(苦笑))

よろしければブックマークや評価よろしくお願い致します。

大変励みになります(^0^)

他にも投稿しています。


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よろしければぜひご一読頂けましたら幸いです。


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