第43話 絵本を製作しよう
この話の後、サンタさんの代わりとして聖夜にプレゼントを届けられたら・・・と思っております。
俺は試作品の紙を持ってイラストレーターのエリーの工房へ出向いた。
「エリー元気にしているか?」
「あ、魔王様こんにちは! お仕事たくさん頂けてとても幸せです!」
机に向かってイラストを仕上げていたエリーは顔を上げて挨拶してくる。
「ちょうどリーンハート嬢の新作姿絵が完成したんですよ! モンスター娘の3人組が揃った姿絵の新作もオースティン商会から注文が来てますけど」
どうやらリーンハート嬢やモンスター娘たちの姿絵も順調に販売が伸びているようだ。
「忙しいところ悪いんだけどね。実は『絵本』を作りたいんだ。何枚か挿絵を製作して欲しくてね」
「絵本・・・ですか?」
エリーは首を傾げる。
「そう絵本」
「絵本とはどういう物でしょうか?」
エリーには絵本では伝わらないようだ。
新太は絵本とは何か、細かく説明して行った。
「では、文章と絵を組み合わせて読み物にしていく感じですね」
「そう。だから、エリーに書いてもらったイラストの横に俺が文章を書いて完成する感じかな」
「ま、魔王様自ら物語を書かれるのですか?」
「そうだよ。何とか人間の国と魔族の国が仲良くなれないか考えていてね。その一つに『絵本』でのアプローチを試みてみようかとね」
「は~~~、魔王様本当に人間の国と仲良くするつもりだったんですね」
「そうだよ。だからモンスター娘達にも頑張ってもらっているのさ」
「じゃあ、私もそのお手伝いが出来ていますね!」
「もちろんさ。むしろエリーの絵がないと困っちゃうよ!」
「私、頑張ります!」
こうしてエリーと打ち合わせながら絵本の製作を進めて行く事にした。
「親父さん、製本については準備出来ているかい?」
「おお、魔王様。これを見て下され」
製紙の仕事を任せているドワーフ工房にて、最初の製本技術も同時に進めさせていた。
うまく軌道に乗れば、ここは別々の工房に分けて集中的に製作したいところだが、今は技術の集約と進歩が大事だ。
見せてもらったのは製本のテスト品。
今までの魔国の会議議事録をまとめた物を本にしてみた。
表紙と背表紙は厚めにしてしっかりとした造りをイメージして打ち合わせたのだが、なかなかよく出来ていた。
「おお! いいね。これをベースに絵本の製作に取り掛かるとするか」
「絵本・・・ですかい?」
「そう、絵本。同じものを大量に作って売るんだ。原紙を俺とエリーで製作するから。できた原紙を複製魔術で転写したものを大量に製本するぞ」
新太の説明に職人たちが唸る。
「それでは、紙を集中的に作る職人と、製本作業を担当する職人とグループを分けて効率化を図った方がいいな」
「さすがは大将だ。最終的には工房も移して、紙の製作は専用工場を建てる予定なんだ」
「なんと!それほど大規模に製造専用拠点を作られるおつもりですか」
「ああ、紙はめっちゃくちゃ使うよ。大きさも様々な物を用意する必要があるしね」
「なるほど、大きい本や小さい本なども作れるようになるわけですな」
「そう。テストで作った会議議事録書はともかくとして、最初に作った絵本はある程度大きくして文字や絵を見やすくするけどね」
「それは楽しみな事ですな」
新太は大将とがっちり握手をすると本の製作の指示を出して行くのであった。
「こ、これ・・・マジですかいな」
ゼゼコペンギンのヘイジは、魔王新太から渡された『絵本』なる物を見てまさに魂消ていた。
丁度自身が運営するキャラバンの商品補充の部隊と会い、魔王様に挨拶でもと魔国シャングリ・ラを訪れていた。
そこへ、ヘイジにお願い事があるとして魔王新太直々にキャラバンへやって来たのだった。
ヘイジが渡された物、それは『絵本』という書物だった。
世の中、書物は非常に貴重である。魔術書や歴史書は書く者達も大変だが、管理する者も大変である。
それらを売買する者は更に大変である。
だが、この魔国シャングリ・ラで製作された書物は傷みにくく、まためくりやすかった。
そして中身を見れば、大きな絵と文章で読みやすいのだが・・・。
「魔王様・・・、もしこれ、ウィリバアル・メルカー神聖国とかで販売したら即刻死刑間違いなしですがな」
「なんだっけ? 聖女様システムのある魔族ぶっ殺せ的なイカれ宗教国だっけ?」
「・・・いや、そうと言えばそーなんですが・・・もちっと革袋に包んだように言った方がよくないでっしゃろか・・・」
「オレ、根が正直者なんだよね」
「魔王様とは思えないほどすがすがしい発言ですな」
「よく言われる」
「あんまり褒めてへんのですが・・・」
ヘイジが苦笑する。この魔王様と話しているととにかく気持ちがいい。付き合いたくなる一つの理由ではあるのだが、この『絵本』の中身はヤバイ。
間違いなくこの『絵本』をウィリバアル・メルカー神聖国で販売しようものなら、極刑は免れないだろう。最も、ゼゼコペンギンであるヘイジたちもウィリバアル・メルカー神聖国にはあまり近づかない様にしているし、一瞬問題ないかと思ったのだが、隣国にも聖騎士が出没するし、神殿もある。どこで目を付けられるかわからないのだ。
「まあ、最初はこの魔国近くの、しかも山村や大きな町から遠い村で無償配布して欲しいんだ。特に娯楽のない孤児院を運営しているような教会のシスターに寄付して欲しい」
「え・・・ええ―――――!! コレ、無料で配るんでっか!? この質の紙で出来た書物を!? タダで!?」
ヘイジは顎が外れそうな程驚く。
それはそうだ。この質の紙。これだけでも人間の国にこれ以上勝る質の紙がない。それだけでもとんでもない事だが、表紙の仕上げ、書物としての完成度、どれをとっても国宝級に見える。
「そう、お金無さそうな教会のシスターに多少の食料と一緒に本を寄付して。子供たちに友達の大切さを教えてあげてって伝えてよ」
「・・・あんさん、なんてこと考えはるんでっか・・・、食料も付ければ、受け取りは断らんでっしゃろ。それに、本は如何にも高級・・・絶対手に取って読まはりますわな・・・」
ヘイジはちょっと遠い目をして魔王様の戦略に嘆息した。
「そんなわけで、よろしく頼むよ、ヘイジ君」
「はあ・・・」
ヘイジは偉い事を引き受けてしもたなぁ・・・と再び溜息を吐いた。
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