第42話 魔国シャングリ・ラの産業革命スタート!
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新太は週一回の幹部会議の後、町に視察に出ると言って魔王城を後にした。
お供にはいつものようにドロステラ。だが、今回はなぜかセーラとメリッサまでもが同行を申し出ていた。
「どういうつもりですの? お二人とも魔王様と同行したいだなんて」
いつものように魔王様と二人っきりでデート・・・もとい、市井の様子を見に行こうとしていたドロステラにとっては、お邪魔虫が二人も増えたことになる。
「いや、魔王様が町の何を見ているのか、私も勉強したくてダナ・・・」
若干しどろもどろになり、汗を拭きながらも魔王様の後をついて回るセーラ・ガルウィング。ソルテア国に護衛として出かけてから、どうも魔王様の近くに居座ろうとしている事が多い。
そしてメリッサである。ちっとも帰って来なかった事を恨んでいるのか、朝の着替えどころか、目覚ましのキスなどとわけのわからない仕事を申し付けてきたので、新太はきっぱり断っておいた。だが、魔国に戻って以来、メリッサは魔王様の側近兼秘書として常にかなり近いところにいる。
「きょうはどちらを視察する予定でしょうか?」
メリッサは仕事も超有能なため、魔王様のそばにいる事を禁止できない。なぜなら、魔王様自体の仕事が停滞してしまっては意味がないからだ。
ドロステラもぷりぷりしているのだが、メリッサの同行は拒めない。
何しろメリッサはラインハルト公国に出向き、外貨獲得のための活動を行っていた時、ちっとも連絡を寄越さなかったり、帰って来なかったりしたのはドロステラの管理能力に問題があるからだとドロステラの責任を追及したのだった。
「(ぷんぷん、二人っきりが長かったからって、あんなに怒らなくてもいいのに!)」
ドロステラはメリッサからやり玉に挙げられて怒られたことをまだ根に持っていた。
「真っ先に『紙』の生産を担当している職人たちの元へ行く。あれがうまく出来ればやりたいことが山ほどあるからな。その後は魔鋼を使った武具を製造している職人工房の視察、それからガラスの製造をテストしている職人の元へ行き、その進捗と必要があればアドバイスを行うつもりだ。その次は娯楽アイテムを製作している職人たちの元へ激励にな。それが終われば、魔国の南に立っている『悪魔王ガルアードの塔』と呼ばれるまっすぐに立った塔があるだろ? あれ、ものすごくしっかりした建物で、中も迷路みたいになっているのに、今はゴーストのたまり場で有効活用出来ていないだろ? だからあの塔の有効活用方法を検討するために視察する予定だ」
「あ、あのやたら高い塔を有効活用ですか・・・?」
メリッサは懐疑的な視線を向ける。
遥か太古、悪魔王ガルアードが世界を蹂躙した時代、この塔の最上階に君臨し、世界を恐怖のどん底に陥れたという。
今でもその建物は朽ちる事無く、そびえ続けている。その中は迷路構造、やたらと高い階層の塔。無駄に広いわりに倉庫としても使いにくい。あれをどうやって役立てるのか、メリッサには皆目見当もつかなかった。
「(でも、新太様ならば思いもよらぬ方法で我々の度肝を抜かれるのでしょうね・・・)」
とても嬉しそうにメリッサは微笑んだ。
一行は大通りの屋台の前を歩いて行く。
「さあさあ、今日は大判振る舞いだ! いつもの2倍の塩を振りかけちゃうよ! 今だけだよ! 揚げたてのフライドポテト!おいしいよー!」
食糧難で餓死者が出かねないような状況から、「ジャガーイモ」というお芋の集中生産により危機を乗り切っただけでなく、ふかしただけでは飽きやすいジャガーイモを焼いたり煮たり、油で揚げたりと色々なジャガーイモ料理を魔王新太は伝授して行った。
特に「じゃがバター」と「フライドポテト」は大通りの屋台でも大人気だ。
そう思ったら、今度は塩不足で国民の不安と不満が溜まる。
その回避のためにソルテア王国という塩を特産とした人間の国と貿易を始めてしまった。
ほんの少し前まで人間を滅ぼすと声高らかに掛け声をかけ、戦争準備をしていた国とは思えない状況である。
さらに貿易は人間国との初めての国交という結果をもたらし、今では非常に質の高い塩がどんどん送られてくる。
派遣したオークたちの作業員や兵士たちも人間の国で評判が良いらしく、魔国シャングリ・ラのイメージも魔族イコール、残忍、怖い、人間の敵、のようなイメージは今や全くなく。お隣様として仲良くしたい国、という認識を持ち出しているらしい。
「塩が2倍もかかってるのか・・・血圧大丈夫かな・・・いや、魔王は大丈夫か?」
などと、よくわからないことを言いながらもフライドポテトを買おうか悩んでいる魔王様を見ると、ついつい和んでしまう。
「魔王様、1つだけ購入して、皆で少しずつ分けましょう。そうすれば、魔王様がご心配なされている「塩の取り過ぎ」も抑えられますよ?」
「おお、さすがメリッサだ。素晴らしいアイデアだ」
「お褒めに預かり恐悦至極」
優雅にお辞儀を返すメリッサ。
この後、魔王様にポテトあーん、の権利がどうとか言いながら3人娘がケンカし出すのだが、ここでは割愛する。
「親父さん、薄い紙は出来たかな?」
そう言って「紙」生産の依頼をしている工房へ足を踏み入れる。
「おお、魔王様。ちょうどよかった。これを見てください。最新の試作品ですよ」
そう言って紙の束を出してくる。
まだ、よれていたり、茶色がかっていたりするが、概ね「紙」と呼んでも差し支えないものに出来上がっている。
「やったな親父さん!この品質なら十分に使えるよ!」
「そうか、やっと魔王様のお眼鏡にかなう紙が出来上がったか。しかし、今の言い分だと、まだまだ紙の品質は上を目指せるって事だな」
新太の言い方に感じるものがあったらしい。ドワーフの職人は更なる品質を求められていると悟った。
「そうだな、上質な紙を目指すなら、色はもっと白く、厚みももっと薄く、表面も今のごわつき感を無くしもっとすべすべになると最高だ」
「カーッ! さすが魔王様、見つめるレベルの先が高いね! そうまで上の世界を見ているんなら、職人として応えないわけにはいかないぜ!」
そう言って気合を入れるドワーフの職人たち。
「とりあえず今の品質を最低ラインとして出来るだけ大量に作って欲しい」
魔王新太はこの紙を使った大プロジェクトの構想を練るのであった。
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