第41話 駐屯スタート
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「ここがソルテア国か・・・」
「ふむ、かなり小さい、というべきだろうな・・・」
ゲルダーとゲルリックはそれぞれ呟く。
ここが今から彼らが働く国なのである。
それぞれの部族1500人も到着している。
ただ、ワイバーンに100人乗れる大きな籠を付けて山脈を超えて飛んできたのだ。
到着した時、ソルテア国は蜂の巣を突いたような騒動になったのだが、城の外壁の外側に着陸したので、今は落ち着いていた。
そして城門が開けられる。
「魔国シャングリ・ラの皆様でしょうか?」
「うむ、我が魔王様より、こちらソルテア国にて従事せよとのことで参った」
「国王様にご拝謁願いたい」
ゲルダーとゲルリックが伝える。
「おお、挨拶が遅れたの。ワシがソルテア国国王のシュヴァルツ・ガルム・ソルテアじゃ。よろしく頼むぞ」
城の城門を開けて真っ先に出てきた男がまさかこの国で一番偉い国王だとは二人も気が付かなかった。
「おお、これは失礼致しました」
「ご無礼を」
ゲルダーとゲルリックもその場で膝を付き礼を取る。
後ろの3000人近いオークたちも膝を付いた。
魔王新太よりソルテア国への魔国軍派遣駐屯隊としての任を受けた時、いくつかの指示を賜っていた。
その一つが「ソルテア国という他国の生活は魔国とは違う事を認識せよ」というものと「ソルテア国国王はその国のトップであるから、対応には相応の敬意を払うように」とのことであった。
「おお、お待ちくだされ!皆様は我が同盟国シャングリ・ラよりお越しいただいた同胞でありますぞ! そのような儀礼は不要ですぞ!さあお立ち下さい。城にご案内致しましょうぞ!」
その言葉に何人ものメイドがやって来て、ゲルダー、ゲルリックらの到着したオーク族を案内して行く。
「・・・随分と歓迎されているようだ。俺はもっと奇異の目で見られたり、この姿を恐れられたりしたり・・・」
「俺もだ。嫌がられたり怖がられたりするものと・・・」
ゲルダーもゲルリックもソルテア国の対応に驚いていた。
まずもって城の城門が開いた時にいの一番で飛び出てきたのが国王がという事に衝撃を受けた。
「我が魔国の魔王様であれば、さすがにそんな軽い対応では・・・」
そう思ったゲルダーだったが、魔王様は市井の見回り時はかなり気さくで温和な反応であった。
「それなりに軽いところもあるか」
「・・・だが、忘れてはならん。あの方の逆鱗に触れれば、殲滅の魔王たるお姿が現れてしまう事を」
「・・・そうだったな」
二人は思い出していた。同じオーク族の2部族が魔王様に反乱を起こし、殲滅されてしまったことを。
それだけに、普段は明るい雰囲気で、魔国の未来を見据えて指示を出して行く魔王様に全力でついて行くと決めていた。
それは恐怖だけではなく、魔王様の向かれている方向、実際に魔国を良い方向へ向けてくれている実績、そう言った物がゲルダーやゲルリックたちオーク族に魔王新太を信じるという心を生んでいた。
ちなみに3000人も収容できないという理由で王城の中での歓迎式が出来ないとのことで、先に分かれて宿舎の案内を行うことにした。
ただ、宿舎も、もともと王国兵の宿舎として使用していた建物は1000人程度しか許容できない。残り2000人を寝泊まりさせる宿舎を用意する事はソルテア国の住人の大半が女性しかいないことを考えれば、短い時間で建物を建てたりすることは難しいことであった。
「宿舎を使う者と、テントを設営してしばらく凌ぐ物と別れなければならんな」
「うむ、交代制にすればよいだろう。一週間程度でよいか?」
「そうだな、毎日ではせわしないだろう。やってみてテント側が厳しければ2~3日で早めに交代させればよいか」
ゲルダーとゲルリックがテキパキ指示を出して行く。
その姿を、遠くから見守る女性たちがたくさんいた。
最初、王家からは各人一人ずつホームステイで受け入れられないかと打診があったのだが、さすがにそれは無理があると立ち消えになっていた。
オークという女性を襲うと噂の魔物、男性、というよりはオスのオークが3000人もやってくるのだ。
正直、ゲンプ帝国から守ってくれた魔国の魔王様が来るならともかく、その配下のオーク族がやって来ることに不安が渦巻いてもいた。
だが、ふたを開けてみればオークたちは非常に紳士的で落ち着いた雰囲気だった。
ゲンプ帝国の盗賊のような男たちばかりを見てきた女たちからすれば、オークたちは非常に好感が持てる男たちだった。
「宰相殿」
ゲルダーはソルテア国宰相のゴーランを呼んだ。
「何でしょう、ゲルダー殿」
「あの山斜面にある洞窟の奥が岩塩の取れる作業場になるのだろうか?」
「ええ、そうですね」
「では、あの位置口近くにテントを設営して作業を迅速に対応できるようにしていきましょう」
「洞窟の近くですが? もっと城内の人のいる方へ設営された方がよろしいのでは?」
「お気になさらず。我々の使命は岩塩を掘り出し、塩の精製をお願いして魔国へ送る事と、ソルテア国の防衛ですから」
そう言ってテキパキとテントをどんどん設営して行く。
「いやはや、とてつもなく真面目で勤勉ですなぁ」
宰相のゴーランは女性給仕たちにこのテントの近くで料理を準備するように指示を出すのだった。
ある日の事。
女性給仕に志願した者達が集まって大きな鍋を竈に掛けている。
テントの近くに竈を設営し、テントに住む多くのオークたちの食事の世話をしているのだ。
食事時は朝晩、二回。
ソルテア国には正直3000人のオークを賄う程の食糧は準備出来ない。
そのため、食料の大半を魔国からワイバーンで空輸していた。
「ゲルダーさん、お疲れ様です!」
洞窟から作業を終えて出てきたゲルダー達に声を掛ける少女。
女性給仕の中でもリーダー格のハンナがゲルダーに声を掛けたのだ。
「あー! ハンナさんずるい!」
「ハンナさん!抜け駆け禁止ですよ!」
真面目で寡黙、紳士的な対応でオークたちはとてもいい人だという事が分かって来た。
そうなると、女性比率の極端に高いソルテア国である。
イケメンオークに女性たちの関心が高まるのは当然のことであった。
あまりにろくでもないゲンプ帝国の男たちを見続けてきたからだろう。もはやオークが魔物である概念すら薄まっている、というより、他の亜人と何ら変わらない対応になっていた。
「やあ、ハンナさんお疲れ様。今日も食事を準備してくれてありがとう」
ゲルダーは真面目に挨拶した上に頭を下げた。
これが毎日だというのだから、固すぎるという反応もあるのだが、そこがいいというファンも多い。
「はい、これタオルです。食事の前に汗を拭いて着替えて来てくださいね。その間においしいご飯を用意しておきますね!」
「ああ、ありがとう。いつもすまないね」
僅かにニコリと笑みを浮かべるゲルダー。普段笑わない無表情なゲルダーの僅かな表情の変化にも黄色い声が上がる。
「いやー、ゲルダー隊長には敵わねぇな」
「まったくだ。俺たちもあやかりたいもんだ」
「お前のような根性なしはゲルダー隊長の足元にも及ばんぞ」
「何を~」
ゲルダーの部下たちがやいのやいのと騒ぎ出す。
隊長格のゲルダー狙いじゃない娘たちも多く、各々が狙っているオークたちへ声を掛けたりタオルを渡したりしている。
「グォォォォ!!」
いきなり獣の咆哮が聞こえたと思うと、山から大きなイノシシが降りて来て、こちらに突進してきた。
ハンナたちの作るうまそうな鍋の匂いにつられたのか、ハンナに向かって突進してくるイノシシ。
「キャア!」
あまりの迫力に腰を抜かしてその場にへたり込んでしまうハンナ。
その前に颯爽と立つゲルダー。
「ぬううううん!」
ドシィィィン!!
ゲルダーが自分よりも大きなイノシシを身一つで受け止める。
「ゲルダーさん!!」
ハンナの悲痛な叫び声を聞いて、心配かけまいと力を入れなおすゲルダー。
「大丈夫だ、そりゃあ!」
なんとゲルダーは巨大なイノシシを持ち上げて頭から落とす。
ズドォォォォン!!
頭から落とされた巨大イノシシは動かなくなった。
「お前達、イノシシに止めを刺して、血抜きして解体準備をしておいてくれ。解体は食後にしよう」
「「「おおーーー!!」」」
「隊長自ら仕留めたエモノだ!無駄にするなよ!」
「了解です!」
部下たちが声を掛け合いイノシシの解体を準備して行く。
「ゲルダーさん!!」
ハンナがゲルダーに飛びついてくる。
「助けてくれてありがとうございます! でもあんな大きなイノシシがぶつかってゲルダーさんに何かあったら・・・」
ゲルダーの胸に飛び込んで目をウルウルさせて見上げるハンナ。
周りの女性たちからはやっかみと嫉妬の声が木霊する。
「いや、俺は大丈夫だ。頑丈なだけが取り柄なのでな」
「そんなことありません! ゲルダーさんのおかげでみんなが助かったんです。もちろん私も・・・」
顔を真っ赤にしてゲルダーを見つめるハンナ。
「オホンオホン!」
わざとらしく咳をしてゲルダーとハンナの注意を引く他の女性たち。
「さあさあ夕食の準備が止まってますよ! ゲルダー様も汗を流して着替えてくださいね?」
「あ、ああ、すまない」
「ひゃいっ!」
二人は追い立てられる様にそれぞれの準備に移動する。
魔国シャングリ・ラからの派遣駐屯軍は非常に順調にソルテア国に馴染んで行った。
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