第38話 魔王は神様の代わりになりますか?
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ソルテア国―――――
大陸の北東に位置し、魔国とは山脈を挟んで西に位置している。
山脈の麓に広がる国土は非常に狭く、南西はゲンプ帝国が支配する領域であった。
麓とは言え、かなり山脈は険しく、ゲンプ帝国からの通行も崖ギリギリを通る道だったり、谷にかかる吊り橋を渡ったりする箇所もあり、さながら天然の要塞であった。
だが、現在ソルテア国はゲンプ帝国の締め付け及び人口の減少に伴い、軍事戦力をほとんど持てなくなってしまった。
現在は山の奥の洞窟から出る岩塩を掘り出したり精製する作業員が確保できるぎりぎりで対応している状況であった。
そして、ゲンプ帝国の傍若無人振りはエスカレートの一途を辿って行った。
「ギャーハッハッハ! この100人隊長ゲスガン様がテメエらソルテアを支配してやるぜぇ!」
「さすが隊長でさぁ!」
「隊長!俺にもオンナ回してくだせーよ!」
ソルテア国の城壁外側で農作業をしていた若い女性たちを人質に取り、ゲンプ帝国の100人隊長ゲスガンは城壁の開門を迫っていた。
「くっ・・・どういうつもりだ! 塩はちゃんと納めているだろう! 無法な真似を止めよ!」
国王であるシュヴァルツ・ガルム・ソルテアが城壁の上から声を荒げる。
「馬鹿かテメー!もうオメーらソルテアなんざ俺が支配してやるって言ってんだよ! 文句があるなら降りて来い!」
「くっ・・・貴様らが徴兵の名目で若い男たちを大半連れ出しておきながら・・・!」
兵士として戦力になる若い男性をかなり連れ出されて、多少国に残っているのは岩塩を織り出す作業に従事している者達だけ。ゲスガンは戦える戦力がほとんどない事をわかって喋っていた。
「おう、オメーら!国王様はこのゲスガン様の声が聞こえねぇようだぜ! そのオンナひん剥いて声を出させろや!」
「いやっほぅ!」
「隊長待ってました!」
そう言って兵士とも呼べない様なならず者たちが、捕らえていた女性たちの服を破いたり馬乗りになったりし始める。
「キャアア!」
「やめてー!」
「助けてー!」
「貴様ら!外道な真似は止めよ!」
国王シュヴァルツが声を枯らして叫ぶが、ならず者たちは止まらない。
「そんなに助けたいか?」
嫌らしい下卑た笑みを浮かべてゲスガンが国王シュヴァルツに問いかける。
「当たり前だろう! 何が望みだ!」
「シルヴァーナ姫を出せ! そしたらコイツらは解放してやるぞ?」
より一層下卑た笑いを浮かべてゲスガンが伝えてきた。
「馬鹿な!ふざけるのもいい加減にしろ!」
国王シュヴァルツは城壁の上から怒鳴り返したのだが、城門が少し開き、少女が一人で表に出た。
「シルヴァーナ!!」
シュヴァルツは慌てた。まさか自分の一人娘がその身一つで敵の前に出るとは思いもしなかったのだ。
「さあ、約束通り女性たちを放しなさい!」
足が震えながらも、堂々と言い放つシルヴァーナ。さすがは王族の娘と言ったところだが、いかんせん相手が悪すぎた。
「ギャーハッハッハ! 馬鹿かこのオンナ! のこのこ出てきやがって! この100人隊長ゲスガン様が直々に犯してやるよ!」
そう言ってシルヴァーナのドレスを引き千切り、白い肌を露出させる。
「他の人たちを放しなさい! 約束を守りなさい!」
自分のドレスが引き裂かれているのに、自国の女性たちの心配をするシルヴァーナ姫。鏡ではあるのだが、やはり相手はならず者であった。
「ギャハハハハッ! ブァ~~~~カ! 約束は破るためにあるんだよ! オメーら!女を全員犯せ!」
「ヒャッハー!待ってましたぁ!」
「隊長サイコーだぜぇ!」
それぞれ捕まえていた女性たちに襲い掛かるならず者たち。
「止めてぇ!」
「助けてぇ!」
「イヤ―――――!!」
「酷い!人でなし!」
シルヴァーナ姫は悪態を吐いた。
「騙されるオメーが馬鹿なんだよ!」
ゲスガンがついにシルヴァーナ姫に馬乗りになった。
「シルヴァーナ! もう我慢できん!槍を持て!助けに出る!」
国王シュヴァルツが城門を空け外へ出ようとする。
「いけません!今城門を空けたらゲンプ帝国の兵たちが城内になだれ込みます!」
部下の一人がシュヴァルツを押し止める。
「娘のシルヴァーナが襲われているのを黙って見ていられるか!」
「何卒!何卒!」
「ギャハハハ!オメーは見捨てられたみてぇだなぁ!」
押し問答をしている国王達を見て、ゲスガンがシルヴァーナ姫を罵る。
そして、シルヴァーナ姫の頬を片手で掴み、高笑いする。
「うううっ! た、助けて神様っ!!」
「ギャーハッハ!ハラ痛ェ!神なんざ助けてくれるわけねーだろーがよ!」
そう言ってシルヴァーナ姫に襲い掛かるゲスガン。
「神様じゃなくて魔王様でゴメンねキ―――――ック!!!」
ドバキィ!
いきなり飛び蹴りを喰らわせてゲスガンをふっ飛ばす魔王様。
ふわりと着地すると、付けていたマントを外し、シルヴァーナ姫に纏わせる。
「あ、貴方は・・・?」
「あ、神様じゃなくてゴメンね? 隣の魔国の魔王様です。よろしく」
そう言ってにっこり新太は微笑んだ。
時は少し遡る。
「・・・メッチャメリッサに怒られた・・・」
戸隠新太は現在、魔王の真正形態をとって空を飛んでいた。
魔国から山脈を飛んで越えてソルテア国へ向かっていた。
目的は国の警備を請け負う代わりに、報酬として塩を貰おうという戦略である。
「お土産を買い忘れたからですわ・・・」
暗い表情で呟くのは魔国12将軍序列5位 サキュバス族のトップ、ドロステラ・フル・レミントルグである。こちらも真の姿をしており、翼を羽ばたかせて飛んでいる。
「慌てて飛び出てきたからな・・・」
新太は溜息を吐く。
メリッサにはお土産をせがまれていた。それをブッ千切ったのだから、怒りも一入だ。
「最近魔王様がいない間はメリッサが会議を仕切っているのですよ・・・、あまりの迫力に全然文句が言えません・・・」
こちらも暗い表情で目のハイライトが消えかかっている美人がいた。
魔国12将軍序列7位、アークエンジェルのトップ、セーラ・ガルウイングである。
こちらも自前の翼を持っているため、空を羽ばたいて飛んでいる。
「大体、魔王の真正形態で行かなくてもいいんじゃないかなぁ?」
「いや、ダメですわ! 新太様のカッコよさをアピールして取引をうまく纏めなければならないのですわ!」
ドロステラのものすごい押しに首を傾げながらも言う通り真正形態を保つ新太。
「それにしても・・・カッコイイですわね・・・」
セーラも横目でチラチラ見ながら頬を染める。
「ですわよね!ですわよね! 新太様はチョーカッコイイんですの! シルエット姿でなくて、いつも新太様のお姿でいて欲しいのですわ!」
新太は自分の両側で美女が翼を羽ばたかせながら頬を染めて自分を見つめて来るのを若干居心地悪く感じていた。
「さて、そろそろソルテア国に到着するぞ・・・って、なんだあれ?」
城門前で100人近い兵士というか、ならず者のような連中がたむろしており、何人か女性が襲われていた。
「うううっ! た、助けて神様っ!!」
襲われているお嬢さんが神様に救いを求めていた。
馬乗りの男は・・・うん、アウトだな。
「神様じゃなくて魔王様でゴメンねキ―――――ック!!!」
とりあえずアウトな男を吹き飛ばしておいた。
・・・・・・
「んで、なんだいコイツらは?」
お嬢さんに問いかけてみる。
目が点になっていた少女は、我に返ると、問いかけに答える。
「このならず者たちはゲンプ帝国の兵士なんです・・・」
「てめえ!ゲンプ帝国にケンカ売ってただで済むと思うなよ!ブッ殺してやる!」
口から血を流して品のない男が立ち上がってくる。
「プププッ!お前のような下種にケンカを売るほど暇じゃないし。だいたい雑魚程自分の事を所属する隊や団になぞらえて偉そうにすることが多いが、お前は最低だな。お前を蹴り飛ばしただけで、国にケンカ売った事になってんの?お前、そんなに偉いヤツ?違うよね?ただのザコだよね?ザコ!」
滅茶苦茶馬鹿にして煽りまくる魔王様。わざわざ口に手を当てて笑っている。
「てめえ!ふざけやがって! おい、この女たちが大事なら逆らうんじゃねーぞ! 俺たちに逆らったらこの女どもを殺すぞ!」
「うはははは! 今度は人質取って殺すって! 自分たちの実力じゃ俺たちに全くもって、完膚なきまでに、勝てません!参りました!って事だよね? だから、人質殺すぞ!だから逆らわないで、俺たち攻撃しないでって、俺たちに頼んでるの?哀れだね、ここにザコ極まれり!」
大げさに両手を広げて笑ってやる。
「ててて、てめぇ! おい、人質を1人殺せ!」
男は人質を1人殺すように命令した。
「<悪夢の恐怖>」
サキュバスのドロステラが種族スキルを発動する。
「ギャアアー!」
「やめてくれぇ!」
人質を取っていた男たち、その周りの男たちも巻き込んで恐怖に白目を剥いて泡を吹いて倒れていく。
「な、なんだ!?」
男が振り返った時には、人質の近くにいた連中がバタバタと倒れていた。
「あーあ、極まったザコはやることなすこと全てザコだな」
新太の如何にも呆れてますと言った態度についには切れる男。
「ゲンプ帝国100人隊長ゲスガンを馬鹿にしやがって! 後悔させてやる!お前ら!殺せ!」
「ここまで来て、まだ部下に頼るって・・・哀れを通り越して無様だな。で、お前のような下種が隊長なら、ゲンプ帝国は盗賊の集まりだって事だな。セーラ、盗賊の処分はどうなるんだっけ?」
「即刻死刑であります。魔王様」
「うむ、許可する。実行せよ」
「はっ!」
そう言ってセーラは腰の剣を鞘から抜き放つ。
そのまま歩みを進める。
「我が主は非常に慈悲深い。このまま立ち去るのならばその命は長らえるであろう」
「馬鹿言ってんじゃねえ!殺せ!」
「愚かな。剣技:ソードテンペスト!」
超高速で空を切り裂くように舞うセーラの剣技。
その剣圧が真空波となり、嵐のようにならず者どもに襲い掛かる。
「ぐわわわわっ」
「げぇ!」
「ギャアア!」
その威力はならず者どもをばらばらに切り裂いていく。
舞う血しぶきが納まった時、ならず者どもはゲスガンを除き、生きている者はいなかった。
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(自分で愛称呼んでます(苦笑))
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