第37話 会議で報告された問題
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テーブルにドスンと資料を置いて手をパンパンと叩く女性。
メイド長のメリッサであった。
一瞬ジロリと横目で見られたような気がして、慌てて席に戻る魔王様。
すまし顔で会議のスタートを待つ。
「今回はちょうど月例会議となります。一月分のまとめと、中長期の展望も含め、各署での報告をお願い致します」
宰相ドラグロアが進行ではなく、まさかのメリッサが進行と相成っている。
「それでは、兵の鍛錬結果から報告をお願いします」
「あいよ、じゃあ報告するぜ」
そう言って魔国十二将軍序列十位のオーガキング・クーガーと魔国十二将軍序列十二位の獅子王ダルカスが立ち上がる。
「兵士の鍛錬は順調だ。俺たちが扱っている兵士は新兵と配属三年未満の経験の浅い連中が主だが、午前中は畑の開墾を対応し、午後は基本の型と一対一での模擬戦を中心に個の力を伸ばす事に注力している。個人の体力がついてきたら、集団戦闘のトレーニングと、軍師や将軍の合図で動く集団移動や戦略のトレーニングも少しずつ始めて行く予定だ」
「こちらも大型の種族を預かってトレーニングしているが、新兵や経験の浅い連中が多いので、まずは個人の能力を伸ばすべくダルカスと同じようなトレーニングメニューで対応している。ただし、魔王様のご指示通り、大型の種族は防衛時壁としての能力を高めるため、防衛戦術を中心に今後は鍛えていく予定である」
(やべえ、かなりマジな報告してやがるな。ちゃんと出来てるなんて、ダルカスらしくも無い)
存外に酷い事を思っている魔王様であった。
「結構です。次に中堅から幹部クラスの兵を預かるシェタッフガルド様、セーラ様、ご報告をお願いします」
「ええ、わかったわ。こちらも個の力を再認識させるとともに、鍛えなおすべく対応しているわ。こちらは開墾作業には回さず、午前中に体力トレーニングと技術基礎を、午後からは座学を中心とした戦略トレーニングを行っているわ」
「騎士団も同じだ。今は雌伏の時とトレーニングを中心に対応させている」
「結構です。お二人のトレーニングの進捗は今お配りしました報告書に記載がありますのでご確認ください。それでは次に国内の魔物討伐任務報告をルーラ様、イザベル様お願い致します」
メリッサの呼びかけに序列六位のラミア族・ルーラ、序列八位のメデューサ、イザベル・ド・メディチが席を立つ。
「私たちの担当である魔獣討伐については、現在北の山奥に限定されているわ。それ以外の地域での魔獣の活性化は今のところ報告されていないわ」
「魔獣についてはワイルドボア・ギガントボアの猪系の他、フォレストウルフやフォレストリザードのような雑魚も多い。少し奥へ行って魔鉱石や魔香草の採取に向かう場合はワイバーンやジャイアントバジリスク、マンティコアと言ったランクが比較的高めの魔獣も出ている。それらは狩りの後魔王様の用意した北の魔獣倉庫で魔術師の氷魔法による氷漬けの保管を行っている。量が多くなってきたので、倉庫を増やすか、処理を進めるかご判断いただきたい」
イザベルの発言にメリッサが魔王に視線を送る。
「いかがいたしましょうか?魔王様」
「それについては現在外貨獲得のために動いている者達の報告を聞いて判断したい。すでに実力、信頼共に高いレベルで獲得できていれば、比較的ランクの低い魔獣から人間国の冒険者ギルドに持ち込んで換金する。特にエルフのエリシアはスキル<異空間収納>を持っていたはず。彼女に出来るだけ捌いてもらいたいところだ。だが、あまりに数が多いと怪しまれるしな。できるだけエリシア以外で<異空間収納>を使える者を見つけ出して、冒険者探索に加えて行きたいところだな」
「畏まりました。陰の一族に調査を依頼しておきます」
瞬時に判断し、予定を組むメリッサ。実に有能である。
「その冒険者活動を行っている者達からの報告ですが」
宰相のドラグロアが報告書を読みながら発言する。
「狸人族のマコたちを中心としたグループ、ダークエルフのエルファ達を中心としたグループ、キース殿を中心としたグループそれぞれ活躍しており、続々と外貨が届けられております。特にキース殿の活躍は目覚ましく、かなりの金貨が届けられております。キース殿やエルファ殿達はギルドマスターからの信頼も厚く、無くてはならぬような戦力として認識されているようです」
「それは重畳。ではエルファ達に魔国の境近くの山で狩ったという事にして上級の魔獣たちを引き取らせよう」
「はっ、こちらで順次換金できるようランク付けを行っておきます」
ホント、優秀だね、メリッサは。
「ゼゼコペンギンのキャラバン隊が販売している『魔王様の戯れ』、『魔王様の嗜み』、『魔王様の大戦略』ですが、生産が追い付かない状況が続いております。担当職人に残業を含め出来る限り生産体制を強化してもらってはおりますが、品薄状態が改善出来ておりません」
「それはもはや仕方がないな。足りないくらいの方が価値が上がるだろう。現状を維持し、職人に負担が続かないようにせよ」
「御意」
恭しく頭を下げるドラグロア。
最初の頃俺に怒鳴り散らしていた頃を考えれば、だいぶ協力的になってくれたものだ。
「後、国内事情の報告ですが」
宰相のドラグロアが続ける。
「食料はジャガーイモの供給とゼゼコペンギンキャラバンが買い付けてきた食料で何とか賄えております」
「うむ、食料不足で飢えた民が出ないだけでも重畳である」
「ですが、やはり飢えを回避できますといろいろと不満が出るものです。特に不満が強いのが『塩』でございます」
「塩?」
「はい。塩です。塩が圧倒的に不足しております。塩は沿岸部で取れるものが基本でございますので、魔国からするとかなり遠い国からの輸入に頼らざるを得ません。ゼゼコペンギンキャラバンキャラバンにも依頼は掛けていますが、食料そのものを優先しておりますので、ほとんど入って来ていないのが実情です」
「塩か・・・、近くで手に入る所が無いか、影の一族の調査項目に追加してくれ」
「魔王様、塩については影の一族より報告が上がっております。沿岸部の国より仕入れるとかなり割高になるようですが、この魔国の北にある山の裏手に人口約7000人ほどの小国ソルテアがあります。このソルテアの岩山には岩塩が多く含まれており、塩の生産をメインに行っているとのことです」
メリッサが資料を見ながら報告してくれる。
影の一族・・・いい仕事してますねぇ。
「ふむ・・・、うまくこのソルテア国と取引出来れば塩が手に入りそうだが・・・」
「この報告によりますと、このソルテア国は山の中腹近くにあり、北側は断崖となり冷たい海が広がります。この国へたどり着く唯一の道はその南にあるゲンプ帝国が抑えており、塩の全てをゲンプ帝国へ輸出しているようです。ただし、このゲンプ帝国の皇帝が二年ほど前に代替わりしてから、周辺国への工作や侵略を繰り返していて、非常に評判が悪いようです。特にソルテア国へは法外な治安維持費という名の名目で金銭を要求しており、ほぼ塩をただで納入させている実態があります」
眉をひそめながらメリッサが報告を続ける。
「それ、ひどすぎね?」
「最近では、ゲンプ帝国の兵士がソルテア国の女を連れ去り犯したり奴隷にしたりと無法を働いているようです」
もはや顔が怒っているレベルですよ、メリッサさん。眉が吊り上がってマス。吊り上がった眉は角度45°を超えている!
「ソルテア国では軍事対応は無理なのか?」
「国としての規模が違いすぎるようです。ソルテア国は衛兵がわずかにいるものの、軍隊そのものは有しておらず、全く戦闘対応が出来ないようです。たまに出る魔獣に対応するための人員がわずかに確保できているレベルです」
首を左右に振りながら溜息を吐くメリッサさん。だいぶソルテア国に感情移入しているようだ。
「ふむ、それほどの傍若無人ぶりならば、もしかしたら国を守ると言えば交渉の余地が生まれるかもしれんな」
「ただ、ゲンプ帝国は軍事国家としてはかなり強力です。軍事力としては、現状でも編成できる兵として10万規模の軍隊を有しています。緊急時になればさらに徴兵を行うと思われます。この規模は周りのウォルフガング王国、ラインハルト公国、アーテンボーロ王国と比べても強大です」
「ふーむ、一国対一国では難しいな。連合を組みたいところだ。だが、それはまだ先の事だな。ソルテア国だけを防衛するだけならいくらでもやりようはある。早速ソルテア国へ手向いて交渉してみるか」
魔王様はテーブルに肘を付き、両手を組んでニヤリと笑った。
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