第3話 対策
さあ、これから戦争案以外で国を立て直すための対策を説明していこう。
この対策で納得させないとやっぱり戦争GO!ってなりかねない。気合を入れよう。
魔国12将軍序列2位、黒騎士シェタッフガルドの問いに答えて行く。
「うむ、地道ではあるが、自国の食糧自給率をアップさせる。
ただ、これには時間がかかるため、並行して外貨を獲得し、その外貨を以て他国より食料を買い付ける」
「な、何ですと!」
宰相ドラグロアが声を荒げる。
「人間の国から食料を買うってのか!」
獅子王ダルカスが円卓を叩きながら驚く。
「そうだ。自国の生産力を上げて行くが、それまで待てるほど余裕もない。なければ買うしかなかろう」
「そんなもん奪ってくればいいじゃねーか」
「食糧庫の強襲なら戦争よりも楽であろう」
ダルカスの言葉にクーガーも便乗する。やっぱ脳筋だわ、コイツら。
「簡単に言うなよ。それこそ奇襲なら戦力は出来るだけ少なくする必要がある。しかしながら食料を奪ってくるためにはそれだけの輸送力が必要になる。焼き払うだけの奇襲とは違うのだ」
「確かに・・・少数精鋭で奇襲が成功しても食料自体を持って帰ることは不可能ですわ・・・」
序列6位、ラミア族のルーラさんだ。下半身がヘビ以外はとっても綺麗なおねーさんって感じだね。序列6位って、高いよな。脳筋ズよりもずっと高い。ちなみにオーガ族のクーガーが序列10位、獅子王ダルカスが序列12位で最下位だ。
「しかし・・・、我々魔族の国との交易が開かれるものでしょうか?」
序列9位、イケメン剣士キース君、君の言うとおりだよ。最初は無理だ。そう、最初はな。
それにしても、キース君もキース・フォン・オーフェンスってフォンの名がある。金髪イケメン貴族って・・・なんかやるせないぜ、俺。
「もちろん最初は無理だ。我々魔国との国家間による取引など夢のまた夢の話だ。だがそれは夢であって不可能な話ではない」
俺が断言するように話す。
「どういう事でしょうか?魔王様」
小首を傾げて尋ねるサキュバスお嬢様ドロステラ。くっそ~、かわいいなぁ、このお嬢様は。
「要は人間国の方から、魔国との取引をしたいと思わせればよいのだ。そうすれば否が応でも魔国との取引に臨まなければならない。向こうが取引したいのだから」
ポカーンとする円卓の将軍たち。
「あの、不躾ではありますが、取引をしたいと言っているのは我々の方では・・・?」
イケメン剣士キース君が分からないと言った感じで尋ねる。
「確かに、今はそうだ。我々は人間国から食料を輸入したい。つまり取引だな。では取引が成立するためにはどのような条件が必要か?」
「それは・・・取引の対価が認められれば良いのでは・・・」
「そうだな。この場合、我々が欲しい食料に人間の国のお金で支払えれば取引が成立する可能性が高くなるだろう。だが、現在魔国は人間の国との国交がなく、信頼も無い。そのためには何か別の受け皿が必要になるだろうな、今の段階では」
「・・・! 魔国の存在を隠して行商人などを装い、大きな商いとして食料を買い付けてくる・・・!」
キース君、思わず立ち上がってしまうほどびっくりしたのかい。
「その通りだ」
俺は会心の「ニヤリ」を作って笑った。
「では、食料を買い付ける外貨はどうするのです?」
「それこそ奪ってくればいいんじゃね?」
今度こそといった感じでダルカスが腕を組みながら発言する。すがすがしいほどにブレない脳筋だ。
「それも考えなくはないが、将来的に魔国の信頼度を勝ち取ろうとすると下策になる。何、外貨を獲得する良い方法がもう俺の頭の中に浮かんでおるわ」
俺は嬉しそうに笑う。
「もしや魔香草や魔鉄などの人間国では手に入らない物資を売るわけですか」
イケメン剣士キース君が商売について気づく。
「それは最終目標の一つだな。我々の国が一国家として人間の国から認められ
信頼を以て取引を可能とした暁にはそういった魔国でしか手に入らない特殊な部材を特別に出していくことも考えて行く。だが今はその時期ではない。品質に優れる魔香草や魔鉄の外国への流出はそれを以て攻められるというリスクも背負う。真に国と認められるまではこちらからの輸出は留め置くつもりだ」
「そ、そうか! 売った高品質の物でこっちが攻められちゃ元も子もねぇ!」
クーガーが気づいたように膝を打つ。少しずつでも脳筋が解消されればよいが。
「なるほど・・・、真に向こうもこちらを信用するようにこちらも向こうを信用できるほどにならねば貴重な物資は出せないということですね・・・」
キースは顎に手を当てて考えるように呟く。その通りだ。物事には段階というものがある。階段を一足飛びに飛び越えようとすることはリスクが高くなるのだよ。
「うむ、それまでは向こうの得になるような対応のみで外貨を稼ぐことにする」
「それは?」
「その件は少し後回しにして、先に食料自給の改善のための案を発表する」
「ははっ!」
一同が座りなおして俺を見る。緊張するな。
「食糧自給率向上のための第一の切り札、ジャガーイモだ」
「ジャ、ジャガーイモですか?」
「そうだ、ジャガーイモだ。このジャガーイモはみんな知っているかどうか知らんが、
北の大地でもさらに北の幻獣の森近く、比較的寒いところで栽培されている。
それを魔国全土で栽培する」
「ぜ、全土ですか?」
「そうだ、全土だ。僅かな小麦の栽培で苦慮しているのももったいない。
栽培しやすく、比較的量も取れやすいジャガーイモを主食に据えて食糧難を一時乗り切る」
「ジャガーイモってあのヒョウ柄の皮をしたおイモですわよね・・・?」
ドロステラが小首を傾げて確かめるように尋ねる。人差し指を唇に当てる仕草、可愛すぎます。
「そうだ、コレだ」
コロンと卓上にジャガーイモなるものを転がす。
先ほどメイドのメリッサに持ってきてもらった資料をざっと目を通した時に気づいた食材だ。台所の食糧貯蔵庫に実物があったので取り寄せてもらった。
【ジャガーイモ】(ヒョウ柄の見た目、蒸せばホクホク、焼いてもおいしい)
「おいおい、芋ばかりでは飽きちまうぜ!」
ダルカスが肉も食いたいと言いたげな表情で勘弁してくれと宣う。
「それはあくまでも次の段階での問題だ。現状飢えて生きるか死ぬかの瀬戸際に近いものたちが芋に飽きたと言って餓死したりはしまい。勘違いするな、今の問題を解決せずに次の問題に目を向けることは結局今の問題で困っている人たちを殺すことになる」
「う・・・」
「もちろん危機を乗り越えれば、いろいろな物が食べられるよう農作物の多様化を進めて行かねばなるまい。だが今は食料不足の危機を乗り越えることに集中する」
「なるほど、比較的簡単に植えられて収穫もしやすく量も見込めるジャガーイモに生産を集中することで乗り越えようとするわけですな」
大魔道が自分で理解を深めるように呟く。
「そうだ。それも国家命令で行う。農業従事者にはジャガーイモのみを製作させ、畑も出来る限り新しく起こす。新規畑の開拓には軍の兵を当てる」
「なんですと!軍兵に畑を耕させるのですか!」
宰相ドラグロアが声を荒げる。
「そうだ、いくら槍をついても腹は膨れん。畑を開拓することにより農地を広げ生産量を増やしていく。畑仕事は筋肉トレーニングにもなり、軍兵の体づくりの一環ともなろう」
「なるほど!鍬で土地を耕させることで筋力トレーニングか!それは一石二鳥ですね!」
キース君が嬉しそうに右手をグーにして左手のパーにぶつける。君、分かりやすくていいね。
「軍兵の連携や戦術トレーニングもあるだろうが、国内の畑面積がある程度メドが付くまで集中的に開墾に従事してもらいたい。出来た畑から順に農家にジャガーイモの生産に入ってもらう。なんとしても今年の秋の収穫で国内食料を賄えるくらいまで持っていく」
俺の力強い宣言に一同黙り込む。
「むうっ・・・、今は雌伏の時ですか・・・」
いかにも無念と言った感じで宰相ドラグロアが呟く。攻勢を先導していたからな。無念もひとしおと言ったところか。
「それで、魔王様は我々に何を求めなさるので?」
今まで腕を組みながら目を瞑って一言も喋らず黙って聞いていた、アークエンジェルのセーラ・ガルウィングが切れ長の目を開いて聞いてきた。かなり理知的なイメージの人だな。今までの話をずっと頭の中で咀嚼していたのかな。序列は7位。ドロステラの方が強いんだね。
「黒騎士シェタッフガルドとアークエンジェルであるセーラにはそれぞれ軍の精鋭を鍛える作業を受け持ってもらいたい。クーガーとダルカスも歩兵を中心に鍛錬と開墾を対応してほしい。ドラグロアを中心に、ドロステラ、ルーラ、は再度資料を見直し、最適化を図るのに協力してくれ」
「「「はっ!」」」
「ギュピー」
「おおっと、アトラス君。君も畑の開墾を手伝ってくれるかね?」
「ギュピー!」
両手を挙げて笑顔を見せる一つ目巨人のアトラス君。頼りになりそうだ。
「みんな、頼むぞ」
「「「「「ははっ!!」」」」」
みんな、頼もしく見えるな。何とか改革がうまくいけばいいが・・・。
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