第25話 商人に売り込みをしよう
冒険者ギルドでギルド登録を行った新太とドーラは再度公都の大通りを歩いていた。
「今度はどこへ行かれるのです?」
ニコニコしながら聞いてくるドーラに新太は次のプランを伝える。
「次は商店に出向く。それもこの公都で2番目の規模ながら、1番目の商店に押されて大苦戦中の商店にな」
ニヤッと笑って出向く先を伝える新太。
「え? 2番手で苦戦中の商店に出向くのですか? どうせなら1番景気のいい商店に出向かれた方がよいのでは?」
至極当然な疑問をぶつけてくるドーラ。
「こちらは商売の素人であり、信頼も全くないと来ている。好調な商人は我々の話に耳を傾けない可能性が高い。逆に苦戦している商店に、起死回生のプランとして話を進めることが出来れば、必ずこちらの思惑に乗ってくる」
「なるほどっ!さすが新太様ですわ」
腕を取りながらぴょんぴょんと飛び跳ねるように喜ぶドーラに新太も苦笑いだ。
「そんなわけで、影の一族が調べて来たデータを元に、オースティン商会に出向くとしよう」
「何でも、売込みのネタがあるので話がしたいとか?」
オースティン商会の会頭ゼブル・オースティンがテーブルの向こうに座りこちらをジッと見てくる。
最初、忙しいという理由で門前払いを喰らわせようとしてきたのだが、それならこの話は勢力3番手であるドッコイ商会へ持っていくがいいか、今後同じような儲け話を継続する場合はもうこちらへは来ないがいいか・・・そう念を押したところ、少しの時間なら・・・ということで会ってもらえることになったのだった。
「現在の商売、だいぶ苦しいようですな」
新太が現状を確認するように言う。
「どうやら、いろいろとご存じのようだが、まさかゴーツク・ヴァリー商会の息がかかっている方ではありますまいな?」
新太が商会1番手のゴーツク・ヴァリー商会からの回し者ではないかと訝しむゼブル。
「ははっ!私ならそんな面倒な事はしませんよ。ただ、あなたに儲け話を持って来ただけの事」
「なぜ私なのです?」
まだ疑問が抜けないゼブルにわかりやすく説明して行く新太。
「それはもちろん私も儲けたいからですよ。ビジネスはお互いの信頼の上にウィンウィンの関係でならなくてはなりません。そんな関係を築くことが出来るのは・・・あなたを置いて他にはいない」
「随分と私を買って頂いているようですが、それほどの力があるかどうか・・・、今でもゴーツク・ヴァリー商会に押されているわけですし」
「それはゴーツク・ヴァリー商会が既得権力とつながって卑怯にも一部ルートを不法に抑えているからでしょう。あなたの実力とは別の次元にある。そして何より、あなたは商売に誠実だ。だからこそ、この儲け話はあなたと分かち合いたいのです。商店としてしっかりとした基盤をお持ちのあなたとで」
影の一族がみっちり調べ上げてきている。潰そうと思えばゴーツク・ヴァリー商会とつながっている役人たちとの証拠をばらまいてもいいのだが、それは面倒な事になるしな。
「・・・参りました。そこまで私を買って頂けるのであれば、身を正してお聞きしましょう。一体私に何をさせたいのです?」
「実はですね・・・」
それから一週間後、公都にはこんな張り紙が張られた。
この世界の演劇は大衆向けではなく、貴族が高いお金を払って時間をかけて観覧するものであった。そのため演劇を担当する劇団も専門の組織が組まれ、演劇場も決められている。それを全て根底からひっくり返すような張り紙が張られたのである。
「第1回公都歌い手オーディション開催!
公都内をキャラバンで周り、歌を歌うお仕事です。優勝者には歌手として専属デビューを確約! 移動舞台の上で歌と踊りを披露します。準優勝、3位の2名は優勝者の後ろで専属ダンサーとして踊り手の契約を行います。振るってオーディションのご参加申し込みをお待ち致します。今回のオーディションは女性のみ、8歳から25歳までの年齢制限があります。申込料、お一人様銀貨1枚。オースティン商会」
この張り紙に公都全土がどよめいた。
演劇のなり手を希望する者は決して多くはないが、それでも狭き門だ。その上、演劇を生業とする組織は少ないため、コネで雇われたりしても長い長い下積み時代が続く。それがいきなりオーディションで、優勝すれば歌い手として契約してもらえるようになる。つまり歌でお給料がもらえるようになるのである。
夢のような話であった。あまりに夢のような話のため疑う者もいたのだが、対応商会が公都でもナンバー2であるオースティン商会のため、その点の信頼度は高かった。そのため、申し込みが殺到したのである。
「新太殿!いやー申し込みが止まりませんぞ!張り紙だけで銀貨がこんなにも集まるとは!」
商人として、正しく仕事をしての対価が報酬になる事が身に染みているゼブルにとって、張り紙だけでこれから選別などの対応をしていく、所謂仕事未完了状態なのにお金がどんどん集まるこの状況が信じられないようだ。
「もちろん、これでオーディションを開かなければ詐欺になってしまうよ。一次選抜でたくさん集まってくる女性を見極めなければならない。選別の方法は面接と歌を一節歌ってもらうことだ。これも公開オーディションとして、天気の良い日に講演に借り舞台を作り、申込者を集めて対応しよう。申込書を持ってきた者には銀貨1枚と引き換えにオーディション参加権を渡しているよな?」
「もちろんですよ。この引換券を後で告知するオーディション実施日の会場で提出しないとオーディションを受けられないと説明しております」
「ならいい。早速オーディションを開催する準備をしよう」
新太はニヤリと口角を上げるのだった。
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