第24話 戸隠新太、冒険者ギルドでやっと登録す
「スマンな、少し話を聞かせてくれ」
出て来たのは、大柄ないかにも歴戦の戦士といった男だった。壮年と言った年頃か、新太から見ても相当腕の立ちそうな感じがした。
「盗賊を撃退したと言う事だったが?」
問いかけてくるギルドマスター。落ち着いているように見えるが、何事も見逃さぬという審美眼が見え隠れする。
「そうだな。初めから話すと豪華な馬車が横転して、その周りを白いフルプレートを来た騎士たちも倒れている状況で、馬車から少女が連れ去られそうになっていたな」
「な、なに!?」
盗賊を退治したと言った話だったので、どのあたりでの事か、規模がどれくらいかを確認しようと直接話を聞きにきたギルドマスターだったが、とんでもない証言が出た。
「確か、聖女様とか言われてましたよね? その少女」
「な、何だと!?」
ガタンッ!
勢いよく立ち上がったのでギルドマスターの座っていた椅子が後ろに倒れる。
「ギルドマスター、大丈夫ですか?」
椅子を起こして声を掛けるシエラ。
「ああ、すまない。かなり重要な話だぞ、それは。本当の事なのか?」
「まあ!新太様が嘘をついているとでもおっしゃるのですか!」
ドーラがぷりぷりし出したので、手を添えて落ち着くように伝える新太。
「そうだな、とにかく盗賊は30人くらいはいたな。馬車も横転して壊れているようだったぞ。騎士たちもほとんど倒されている状態だった。そして聖女と呼ばれていた少女が盗賊に連れ去られそうになっていたとこまで話したかな。だから、俺は「何をしている!」と声を掛けたんだが、まともに会話にならず、連れのドーラまで狙うという発言もあったし、実際襲い掛かって来たので反撃した。具体的には刀で盗賊共の利き腕の手首を切り落とした。それでも抵抗をやめなかったので、魔法で強力に熱した水球を連中の股間にジャストミートしてやった」
「カッコよかったですわ!新太様!」
両手を胸の前で組んで目をハートマークにしているドーラ。
「わああ~、すごくお強いんですね」
新太を見て感心しているシエラ。
(いや、強いなんてもんじゃないぞ・・・。コヤツ何者なのだ・・・)
ギルドマスターはとんでもないヤツが登録に来たものだと思った。
30人の盗賊を完封・・・無傷で撃退など、例えCランク冒険者でも無理だろう。戦闘力だけなら確実にBランク以上の実力があるということだ。
(それよりも、聖女のキャラバンが盗賊に襲われただと! そんな報告は受けていない。国にもその情報は挙がっているのか? 至急確認が必要だな)
「それで、盗賊共は殺したのか? その場合は首か何か奴らの証明できるものがあれば報奨金が出るぞ。生きて連れ帰れば報奨金の他に犯罪奴隷として買取も可能だが」
「そんな感じではなかったのです!」
と言ってまたぷりぷりし出すドーラを宥める新太。
「どういう事だ?」
「実は、盗賊は一人も殺していない。最も手首を切り落としたので、止血しないと命が危ないだろうがな。その後が問題だ。騎士たちが起き上がって来て、聖女とやらに近づけようとせず、しかも助けてやったのにお礼も言わず、挙句に盗賊たちと示し合わせて聖女に近づくのが目的だったなどと、まるでこちらが仕組んだかのような言い草だったのでな、もうほっぽり出してさっさとこの公都にやって来たというわけだ」
「なんと・・・」
あまりな騎士団の不誠実な対応にギルドマスターも顔を顰める。
まるで冒険者に助けてもらったのが屈辱だと言わんばかりではないか。
新太の話ではどう見ても壊滅寸前だったにも関わらず。
「まあ、報奨金が出ないのは残念だが、盗賊がいなくなること自体は少しは平和につながるだろう。今回はそれで良しとするよ」
「スマンな、そう言ってくれると助かる。俺の方でも少し調べてみるよ」
「ところで聖女ってなんだ?」
「ん?聖女というのはこのラインハルト公国の南にあるヤーウェイン・リー王国のさらに南に位置するウィリバアル・メルカー神聖国の大教会が認定する人物の事でな。神聖術に秀でる神秘的な人物だけが認定されるため、各国の外遊では普段治せない病気やけがの治療を行うとかでかなり重宝される。最もそれに対する対価も相当なモノらしいがな」
新太は改めてあの少女を思い出す。聖女と呼ばれた、それほど年行かぬ幼さを残す少女の事を。
「ひてててて・・・」
いきなりほっぺたを引っ張られた新太は涙目で引っ張っている相手を見る。
「にゃにひゅるの、ドーラ・・・」
「何を思い出しておられるのでしょうか、新太様?」
「にゃんにも、にゃいでふよ?」
「ウソです。あの聖女の事を思い出していましたでしょ」
「うぉもい出ひただけでふ」
「・・・ならいいのですが」
やっと話してくれたドーラ。
いたたたとほっぺを擦る新太。
「うふふっ、お二人とも仲がよいのですね」
嬉しそうにシエラが口を押えて笑った。
「そう言えば、シエラの事、こんなにも時間をかけて対応してくれたこと、礼を言う」
そう言って頭を下げるギルドマスター。
「この子は俺の姪っ子なんだ・・・。このまま接客できないままだと、いくら何でも働かせておけなくなるところでな・・・。本当に助かった。適切な指導だったよ。本来なら俺がやらねばならぬことだったのだろうがな」
「まあ、向き不向きもありますし。ご協力できたのなら何よりですよ」
にっこり笑って伝える新太。
「すまない、事項紹介がまだだったな。俺はこのラインハルト公国公都ライイーンにおける冒険者ギルド総督兼ギルドマスターのライディーン・バルドフェルドだ。よろしくな」
「改めまして、戸隠新太です。ああ、こちらで言うとアラタ・トガクシですね」
「私は新太様の連れ合いでドロステラと申します」
ぺこりと頭を下げるドーラ。つ、連れ合いって!?
「とりあえず、通常はFランクスタートになるのだが、俺の裁量でEランクスタートにしておくよ。活躍を祈ってるぜ」
ニヤニヤしながらギルドマスター・ライディーンが手を差し出す。
「ご期待に沿えるよう頑張りますよ」
ギルドマスター・ライディーンと新太はガッチリと握手を交わすのだった。
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