第21話 戸隠新太、聖女との邂逅
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2018/8/20 護衛騎士隊長の名を変更しました。 コラッド隊長 ⇒ ゲスガー隊長
俺はドーラをお姫様抱っこしながら夜の空を優雅に飛行していた。
「月が綺麗ですわ、新太様」
首に手を回し、うっとりと呟くドロステラ。二人っきりになったからドーラと呼ぼうか。
「新太様、どこに向かっているのですか?」
「ラインハルト公国の公都を目指している。最も直接近くまで飛んでいくわけにもいかないからな。朝日が昇るころにはどこかの街道に降りて歩いて向かうことになる」
「新太様とならば、どんな旅も望むところですわ!」
嬉しそうにそう語るドーラ。かわいいね~。
そのまま夜通し呼び続けた俺だが、かなり飛ばしたので公都近くまで来ることが出来た。もちろん魔法で風圧は軽減してあるのでドーラの綺麗な髪がボサボサになる事もない。
「さて、このあたりで地上に降りよう。太陽が昇ってくる」
俺は街道の横、少し茂った森を目指す。
「ずっと新太様の腕の中に抱かれていたなんて、まるで夢のようでしたわ」
そう言ってにっこりと微笑むドーラ。マジ天使。サキュバスだけど。
「さて降りるか・・・ん?」
高度を下げ降りようとした新太だったが、街道から戦闘しているような音とともに馬車が大破する状況が見えた。
馬車の横には白色の鎧を着た騎士が何名かいる。
「どうやら馬車や騎士が盗賊に襲われているようだな」
「ええっ!?それでは早く助けませんと」
何の躊躇も無く救出を提案するドーラ。マジええ娘や~。
「じゃあ助けようか」
森の陰に降りた新太とドーラは街道に飛び出る。
「何をしている!」
声を張り上げる新太。その後ろで「カッコイイ・・・!」と目をハートにしているドーラ。
・・・若干場違いな感じを醸し出している。
「なんだテメェは!ぶち殺すぞ!」
「お頭!後ろの女メッチャイイ女ですぜ!奪うしかないですぜ!」
「ガキの来るところじゃねーんだよ!女置いて失せな!」
馬車が横倒しになり、馬車の周りには倒れている騎士たち。
そして馬車からは高貴そうな女性が引きずり出されそうになり、今まさに連れ去られようとしていた。
「いやぁぁぁぁ!!」
引きずり出されそうになっている女性が叫び声を上げるが、騎士たちも動けるものがいないようだ。
現在の馬車側の人員ではどう見ても30人近くいる盗賊には勝てそうもない状況だった。
「知性の欠片もない連中だな。会話にならんぞ。何してるって聞いてるのに」
「仕方がございませんわ、盗賊とはもともと知性の欠片も持ち合わせていない下等な動物にございますれば」
如何にもどうしようもない、といった仕草で話すドーラ。
「いい度胸だ、そこの死にぞこないの騎士たちより先にテメェを地獄に送ってやる!」
お頭と呼ばれたリーダーらしき男が標的を新太に切り替える。
「ドーラ、盗賊の処遇ってどんな感じだ?」
「国によって違うと思いますが、概ね死刑で問題ないかと思いますわ」
笑顔で悪即斬を告げるドーラ。わかりやすいと新太はニヤリとする。
「妖刀ムラサメブレード!!」
新太は抜刀術の構えを見せたまま、30人近い盗賊の位置を目だけで確認してゆく。
「てめえ一人で何が出来るってんだ! みんな、やっちまえ!」
盗賊の頭らしき男の号令で一斉に襲い掛かってくる盗賊たち。
だが、
「飛燕斬!」
チィィィィィィィィィン!!
納刀した際の大きな鍔なり音が一度だけ響く。
大半の人間には新太が技名を叫んでから微動だにしないように見えた。
しかし、
「ギ、ギャアアアアアアアァ!」
盗賊すべてが武器を持った利き腕の手首を切り落とされていた。
今まさに止めを刺される寸前だった騎士たちや、連れ去られようとしていた女性も
全く理解できない。
「き、貴様ァァァァァ!」
お頭とその他数人が左手にダガーを持ち替えたり、発動体であろう杖を握っている。
(おやおや、しぶといねぇ)
新太はこれ以上剣を振るうと確実に死に至らしめてしまうと思い、魔法に切り替える。
「クックック・・・<創造魔法>・・・・<ホットショット>!!」
唱えた新太の周りにソフトボール大の水球がいくつも浮かび上がる。
だが、ただの水ではない。グツグツと煮えたぎったお湯である。
100℃の煮えたぎったお湯の球が盗賊たちの股間にジャストミートする!
「ギャァァァァァァ!!」
再び盗賊たちの絶叫が木霊する。
盗賊たちの股間はもはや焼け爛れ大変酷いことになっていた。
二度と女性に悪さが出来ないであろうことは明白だ。
それでも現状一人も死者を出していないことに新太は満足する。
「フム・・・、まずまずこんなものか」
もはや何がこんなものなのか全く理解できないが、とりあえず新太が危なげなく盗賊を退けたことに安堵するドーラ。
よく見ると横転した馬車から可憐な女性が顔を覗かせていた。
先ほど盗賊たちが馬車から連れ出そうとしていた高貴そうな少女のようだった。
新太を見るその目は完全にいろんな意味でロックオンした状態のようだ。
「あ、あの・・・、お助け頂きまして誠にありがとうございます」
横転した馬車からよたよたと降りて来た可憐な少女がお礼を述べながらこちらに寄ってきた。
だが、
「聖女様!近づいてはなりません!」
いきなり大声をあげて盗賊に殺されかかっていた騎士の中でも隊長格っぽい男が聖女と呼ばれた少女と新太の間に入って新太に剣を向ける。
「ゲスガー隊長!何をするのです!この方は私たちを助けてくださったのですよ!」
聖女と呼ばれた少女がゲスガーと呼んだ騎士を叱責する。
「聖女様!助けられたとはいえ、この男は正体不明!その上相当な力を持っているようです。詳細が分かるまでお近づきになりませぬようお願い致します」
そう言って後ろへ手を向けてこれ以上来るなとジェスチャーする。
「貴殿は一体何者だ? これほどの剣術、只者ではあるまい?」
剣を向けたままゲスガーと呼ばれた騎士は問いかける。
「フム、礼節ある者であれば、命を救われた際にまず「ありがとう」から始まるのではないのかね?」
どうみても16~18歳程度の若造が喋る口調ではない。
それがより怪しさを爆発させる。
「通常であれば君のいう事ももっともだ。だが、今我々が護衛している方は非常に特別な方でね。わずかな危険の可能性も排除せねばならない。まずは君が何者か教えて欲しい」
相変わらず剣を向けたまま尋ねるゲスガー隊長。新太はいい加減腹が立ってきた。
「戸隠、新太。旅の剣士だ」
(うわ~~~~~、さっきホットショットとかいうオリジナル魔法ぶっ放しておいて、剣士だって! 魔王様は面の皮がとってもぶ厚すぎますぅ!)
ドーラはハラハラして冷汗をダラダラと流す。
新太様~、その対応は怪しまれますよ~と心配のオーラを出しまくる。
よく見れば聖女と呼ばれた少女はドーラを厳しい目で見ている。なぜ?
「貴殿はただの剣士ではないだろう? 先ほどは魔法も操っていたようだが? それに妖刀?とも言ったな。その剣をどこで手に入れたのだ?」
新太は溜息を吐く。
「なぜこちらの手の内をそれこそ素性の知れぬお前たちに明かさねばならんのだ。だいたいこちらは田舎から出て来たばかりで、冒険者ギルドにこれから登録に行くつもりだったから、身分証と言ったものも持ち合わせていないしな。正直お前たちなど助けずにほおっておけばよかったよ」
肩を竦め、オーバーに両手の平を上に向ける。
「何だと、貴様!」
剣を向ける右手に力を込めて声を荒げるゲスガー隊長。
それを聖女が窘める。
「ゲスガー隊長いい加減になさい!いかに素性不明といえど、こちらが命を救われている事実に変わりはないのです!」
「し、しかし・・・」
言い淀む隊長に、さらに寄ってきた部下の一人が口を挟む。
「盗賊を囮にして、退治することによりこちらの信用を得る作戦やもしれません!」
「なるほど!」
意味不明な盛り上がりを見せる騎士たちを横目に、もう付き合っていられないと新太が歩き出す。
「ばかばかしい。イミフだな。盗賊たちは一人も殺してはいないのだから、疑うなら勝手に取り調べるがいい。最も早く手当てしないと出血多量で死ぬかもしれんがな。行くぞ、ドーラ!」
「は、はい!新太様」
「ま、待て貴様!」
追いかけようとするコラッド隊長だが、先ほどまで盗賊に取り囲まれて激戦を戦っていた身だ。相当な疲労と多少のケガがあり、思うように動けない。
去り行く新太に聖女が声をかけた。
「あ、あの!大変申し訳ありませんでした! お名前だけでもお教えいただけませんでしょうか?」
聖女が胸の前で両手を組んで祈るように問いかける。さっき騎士隊長にぶっきらぼうに答えた時には聞こえていなかったようだ。
「新太。戸隠新太だ。あ、君たちの国風に言えば、アラタ・トガクシと言えばいいのかな?」
じゃ、と左手をさっと振り去っていく新太。
その後ろを慌てて付いていく衣装の薄い女。
だが、聖女の目には女は映っていないようだった。
「アラタ・トガクシ様・・・」
胸の前に組んだ両手を離すことなく、祈るように名前を呟く聖女。
この二人の邂逅が今後どのような運命をもたらすのか、今の二人にわかるはずもなかった。
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