第19話 ゼゼコペンギンと提携しよう
「さて、商人最初の戦略は「行商人ゼゼコペンギン」だな」
先日はドロステラを伴って城下町を散策してみた。
なかなかどうして、優秀な人材は在野にもいるものだ。
「信〇の野望」とか好きだったしな~
在野の優秀な人材はすぐに登用したくなるのだ。
だが今日、俺は宰相ドラグロアを伴って商人を訪問して回っている。
その商人最初の交渉にゼゼコペンギンを選んだ。
ゼゼコペンギンは文字通りペンギンのような恰好をしている種族だ。
結構丸眼鏡をかけている確率高し。後、ソロバンちっくな道具を愛用しているらしい。金勘定が大の得意だとか。
「ゼ、ゼゼコペンギンと提携するのですか・・・?」
「わかってないなドラグロア。ゼゼコペンギンと提携するのは当たり前の事だよ。というか、キャツらこそ現状唯一人間国で活動できるキャラバン隊なのだからな」
俺の説明にドラグロアは顎を擦りながら頷く。
「確かに、人間の言葉を操り、比較的見栄えもかわいい感じの雰囲気であり、何より商人気質が強く金勘定が得意と来てますからな。気候変動にも比較的強く、大陸どこでも出かけて行きますから、信頼も厚いとか。それにかなり珍しい物も取り扱うとか」
「だからこそのゼゼコペンギンキャラバン隊なのだよ。現状ですでにこちらから人間国へゼゼコペンギンキャラバン隊を通じで販売がすぐに可能となる」
「ま、まさしく! 例の外貨獲得というやつですな」
宰相ドラグロアは前のりになって食いついてくる。
「その通り」
「して、信用をゼゼコペンギンが請け負うのならば、魔香草や魔鉄を出すのですか?」
取引は信用と宰相には沁みついてしまったようだ。
少し苦笑しながら答える。
「それもわずかな分量であればよいと思うのだが。目玉としてはもっと数をさばいて儲かる物がいい」
「そのようなものがありますか・・・?」
「なければ作り出せばいいのだ。早速ゼゼコペンギンに売り込みに行くとしよう」
といいつつ、俺は小脇に抱えた木の箱3つを大事そうに擦る。
「・・・それが、その作り出したアイテム・・・ですか?」
「そうだ、後で説明してやるから試して見るといい」
「はあ・・・?」
ドラグロアは訳が分からないといった感じで生返事を返した。
(くっくっく・・・遊戯アイテムは異世界転移の必須アイテムだぜ! これで何とかうまくいくといいがな)
俺は先日職人たちの工房に出向き、テスト用に何セットか作らせたうちの3つを売り込み用に持ってきたのだ。
ゼゼコペンギンのキャラバン隊はちょうど今魔国に来ていた。
「忙しいところあい済まぬ。このキャラバンのリーダーはどちらかな?」
「あてが大将やらしてもらってるヘイジっちゅーもんですが・・・って魔王様でっか!?」
「そう、魔王」
「いや、そんな挨拶ありますか?魔王様」
「いや、魔王って聞かれたから」
ドラグロアの苦言も軽くスルーしておこう。
「何か思ってたイメージとだいぶ違いまんな・・・。もっといかつーて怖い方かと」
「よく言われるけど、実際はこんなもんだから」
「だから、あれほど威厳を大事にといつも言っているではありませんか!」
ドラグロアに怒られてもどこ吹く風の魔王様。
ヘイジは不思議と魔王様がいい人に思えて来た。
「で、魔王様が何の御用でっしゃろ?」
「実は、大いなる儲け話を持ってきたのだ!」
最初、ゼゼコペンギンのヘイジはえらい胡散臭い話を持ってきよったなーと困り果てた。
魔王様という人物柄、当然無下には出来ないが商人として無駄に損を出すわけにもいかない。ところが・・・
「実はこの遊戯アイテムをいろんな国で売り捌いて欲しいのだよ」
と言って魔王様が取り出した遊戯アイテムとは・・・
『魔王様の戯れ』
いわゆるリバーシ。黒と白の駒を交互に置いていき、同じ色の駒同士で挟んだ相手の駒をひっくり返し、色を揃えて行く。8×8マスの盤面で勝負する。
一番安い物は木製で表面に防腐処理を施して磨き上げた物。
貴族向けの銀製品(磨いた銀と酸化銀製作)、上位貴族、王族向けの金銀合成製品、超特別製のアダマンタイト(黒)とミスリル(白銀)の合成品なんていうとんでもない希少価値の物もある。これは世界に3つだけ。
『魔王様の嗜み』
いわゆるチェス。緩やかな時間を嗜みたい魔王様が考案という設定。ハマりすぎて政務に支障が出ないように「嗜み」と名付ける。やりすぎて仕事に影響を及ぼしてしまうと魔王よりも遊び人、という恐ろしいレッテルを貼られることになる。
これも一般向けの木製、白ニスと黒ニスで仕上げ磨き上げた物が中心。貴族向けの銀製(黒は酸化銀を鏡面仕上げにしている)、王族向けの金製と銀製のセットがある。
これも世界に3つだけあるとされる、アダマンタイト、ミスリル製の物がある。
『魔王様の大戦略』
いわゆる将棋である。魔王様が戦略を練る時に使用したという逸話が残っているとされる。
もちろん一般には木製。銀製、金製もあり、これも他に漏れず世界に3つだけとされるアダマンタイト、ミスリル製の物が存在する。
「こ、これは何ちゅうオモロイもんをつくたんでっか!」
「どうだ、なかなかハマるだろう?」
「なかなかなんてもんやおまへんで!魔王様。そこそこの生活が出来るもんたちはみんなヒマしてるんや。こんなもん売ったらえらい騒ぎになりまっせ! それこそどこぞの王都にでも持っていけば飛ぶように売れまっさ!」
「フムフムなるほど、製作はすべてこちらで持つ。とにかく全国に飛んで売り歩いてくれ。さすがに魔国産と大手を振るわけにもいかんが、魔王様が発案したとは言っていいぞ。版権を欲しがる奴には魔王様怒らしたらどうなるかわからんくらいの話をしてもかまわん」
「マジでっか!? 魔王様の名前を出すのはさすがにヤバイんじゃ・・・」
「逆に魔王は戦争より遊びを考えるのに忙しいくらいの噂が広まってくれた方がありがたいわ。戦争なんて誰も得をせん」
「かー、あんじょうわかってらっしゃる! わてら行商人にも矜持ってもんがありまっさ。
武器防具も扱うよって、戦争に賛成してるわけじゃおまへん! いいもん売って買って、みんなが幸せになれるのが最高の行商人ってもんでさ!」
「その通りだ!さすが俺が見込んだゼゼコペンギンだ。ところでヘイジよ、利益配分の件なのだがね・・・」
ゼゼコペンギン、ヘイジの首に手を回し、こしょこしょと指を立てたり折ったりしながらコミュニケーションをしている魔王様。傍から見たら明らかに不審者が闇取引をしているようにしか見えない。
「・・・ふっふっふ、いい取引が出来たようだ」
「・・・さすがは魔王様、感服仕りましたぞ」
2人して悪そうな笑いを浮かべながらニヤつく。
「それでは大至急1000ロットずつ用意する。3日後に引き渡すからよろしく頼む」
「まかせてもらいまひょーか! それより追加分もどんどん準備忘れんといてや、魔王様。別動隊に常に在庫補充のために魔国と往復させるよってに」
「任せておけ!」
こうしてゼゼコペンギンのキャラバン隊と交渉し、遊戯アイテムを広めて外貨を稼ぎつつ、魔王様は戦争より遊んでいる方が好きですよーとそれなり機にアピールしようと画策する魔王様であった。
「こういう物は売り方にも工夫が出来てな・・・」
と言ってまた首に手を回して抱き込む魔王様。
「フムフム・・・なんと! 騎士の決闘の代わりに・・・悲恋で可憐なお嬢様を泣かせんでええと・・・!」
やたらと嘘くさい話に盛り上がる2人だった。
「・・・大丈夫なのだろうか・・・?」
宰相ドラグロアは一抹の不安を拭えないでいた。
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