第18話 報酬とこれからの対応
ドシャア!
金貨がパンパンに詰まった革袋をギルドマスターのドーガはテーブルに勢いよく置いた。
「約束の報酬だ。金貨で350枚ある」
キースの前に勢いよく置かれた革袋。フォレストウルフの群れと盗賊100人以上を殲滅とは言え、報酬額は破格だ。
「いいのか?」
キースが素直に尋ねる。
「ああ、もちろん。最もこれからの期待料も含まれていると思ってもらえるとありがたいが」
ニヤリと凶悪な笑みを浮かべるドーガ。懐が温かくなったからと言って、村でのんびり休暇など楽しんでくれるなよ?といった雰囲気を出している。
「ふふっ、分かった。任せてくれ」
苦笑しながら応じるキース。
大盤振る舞いも、ギルド管轄内の溜まった依頼を一気に片付けてもらいたいという希望が透けて見える。最も、あの御方の依頼で外貨を稼がねばならない身だ。依頼が多いに越したことはない。
「それで、休暇中だったか。いつまでここに居られそうなんだ?」
ドーガは肝心な事を聞く。長ければ長いほどありがたいというオーラが出まくっている。
「安心してくれ、一ヶ月ほどは居られそうだ。それに俺の後輩たちがタイミングをずらして休暇を取る予定でな。俺たちがうまくギルドとやれるようなら連中にギルドの事を話して、冒険者の仕事を引き継げたらいいなって思っているんだ」
「ホ、ホントか!」
ドーガが身を乗り出すのも無理はない。キースははっきり言って一騎当千の猛者。信じられないほどの実力者であり、その仲間たちもそれに近い力を持っていると推測される。そんな連中が休暇といえ、一ヶ月もこの冒険者ギルドにいてくれるだけで僥倖なのに、休暇が終われば別の後輩たちが来てくれるという。
それはうまくすれば継続的に騎士団の協力が非公式にでも受けられるということに他ならない。
最もこれはあの御方こと、我らが魔王様の計画通りであった。キースの部隊からまず3グループ選出し、少し離れた町でそれぞれに冒険者活動をさせる。一ヶ月ほどで休暇が終わったと称して次の町に移動、離れた町には別のグループが来る。つまり3グループが順繰りでそれぞれの町に間を空けずに通い、依頼をこなして信頼を積み重ねようという作戦である。
この作戦は冒険者の絶対数が足らず、依頼処理に苦悩していたギルドマスター・ドーガにすれば渡りに船の対応であった。
「感謝するぜ!これからもよろしく頼むぜ、キース。お前の後輩たちにもぜひよろしく言ってくれ。もちろん優遇させてもらうぜ」
そう言って手を出してくるドーガ。
「ああ、任せてくれ。期待に応えて見せよう」
そう言ってキースはドーガの手をがっちり握り握手した。
・・・・・・・・・・・・・
ところ変わって、ここはウォルフガング王国 南部 ビーグルの町。
狸人族のマコたちが冒険者ギルドに登録している。
すでに二度薬草取りの依頼を達成していた。
今日は三度目の薬草取りの依頼に加えて、ゴブリンの討伐も合わせて依頼受理を行っている。魔物討伐は今回が初めての事になる。
「今回は薬草だけでなく、ゴブリンを狩って納品するのです!」
ふんすっ!と両手でグーを握って気合を入れるマコ。
ミーナ、ムーコ、メイナ、モモカの4人も初めての魔物討伐ということでだいぶ気合が入っているようだ。
「魔物と言ってもゴブリンだし、あまり気負わないようにね」
そう声を掛けるのはEランクパーティ<探索者>のリーダー、トマスである。
確かにギルドマスター・ランディスには面倒を見るように言われたトマス達だが、一体いつまで一緒に依頼をこなすつもりなのか。
今のところマコたちが疑問にも不審にも思っていないようなのが救いである。
いつもの薬草採取場所よりもさらに奥地に分け入る。
「あ、依頼の薬草なのです!」
マコが喜んで採取に走る。奥地に入ったため、今までよりもたくさん生えている群生地に来た。
「マコ! 来るよ!左奥、ゴブリン5匹!」
「! 了解なのです!」
マコが薬草をポシェットに仕舞い込み戦闘準備を整えると、すでにムーコは両手にハンドアックスを装備して飛び出した。ミーナが風の精霊術で援護する。
「風よ!この身を守り給え!<風防御>!」
マコ、ムーコの二人に風の援護が舞い降りる。
「はあっ!」
ハンドアックスを両手に持ったムーコの連撃にゴブリンが2体同時に倒れる。
その隣にマコが駆けつけ、ショートスピアを突き出し、ゴブリンを1体屠る。
「後2匹なのです!」
ゴブリンたちは粗末な槍で反撃を試みるが、モモカのショートボウから放たれた矢が右目を直撃し、悶絶する。矢に気を取られたもう1匹もムーコの一撃が綺麗に首を飛ばした。
一度もピンチになることなく、ゴブリン5匹を完封するマコたち。
「・・・すごいね、見事な連携だ」
トマスは嘆息する。正直自分たちよりよほど戦闘力が高い。
冒険者としての基本をマスターすればきっと自分たちなどすぐ追い抜いてランクを上げて行くだろう。
見事だと認めるトマスの心に、一部の嫉妬にも似た羨ましさが沸き上がるが、それを押し殺してマコたちに声を掛けようとした。
「・・・マコ!大物が来る!」
モモカが警告の声を上げる。
「ブモーーーーー!!」
森の奥から飛び出て来たのは、話に合ったワイルド・ボアであった。
まっすぐこちらに突っ込んで来る。
「いけない、直線状に構えないで!早く逃げるんだ!」
トマスは叫ぶが、マコたちはすでに臨戦態勢に入った。
「ムーコ、正面から囮に!ミーナ、モモカ!私とロープであの作戦行くよ!」
「あいよっ!」
「「りょーかい!」」
ムーコが両手にハンドアックスを構え、ワイルド・ボアの突進のあろうことか真正面に立つ。
「危ない!」
トマスは叫ぶが、ムーコは微動だにしない。
素早くモモカはショートボウにセットしたロープを縛った矢を放つ。
ロープを縛った矢はワイルド・ボアの前を横切る様に空気を切り裂き近くの大木に突き刺さる。
「おっけーなのです!」
マコは大木に突き刺さった矢に結ばれたロープを手に取ると、矢を放ったモモカも反対側のロープを手に巻き付けた。
「今なのです!」
ムーコに向かって突進したワイルド・ボアの足が引っかかる様にロープを引く!
ズバッ!
鋭くロープが張られ、ワイルド・ボアは足を引っかけられ、勢い余って顔から転ぶ。
「ブモモモモ!?」
完全に顔を擦り付けるように転ぶワイルド・ボア。そこへムーコがワイルド・ボアに向けてダッシュ。宙を飛び、その脳天に両手アックスがクロスして打ち込まれる。
「ブモモーーーー!」
派手な断末魔で絶命するワイルド・ボア。転ばせたとしても、両手一撃でワイルド・ボアを屠るムーコ、恐るべしである。
「やったのです!ワイルド・ボアを仕留めたのです!」
「いえいっ!」
「ナイス一撃」
マコの宣言に、止めを刺したムーコが喜びを表し、モモカがムーコの一撃を褒める。
「私、全然活躍してない~」
「まあまあ、メイナが楽なのはパーティがピンチになっていないからだから」
メイナの泣き言にミーナがフォローを入れる。
早速血抜きの準備をして、ワイルド・ボアを持ち帰る準備をするマコたち。
「はぁ・・・、何というか、非常に逞しいね・・・」
以前自分が一撃でぺしゃんこにされそうなほど怖い目にあったワイルド・ボアを真正面からぶつかり、ねじ伏せた上に、早速獲物の解体準備をするマコたちを見て、改めてトマスはマコたちがとんでもないグループだと認識するのであった。
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