第17話 盗賊退治の後片付けにて
時は少し遡り、ここはラインハルト公国 セガンタルの町冒険者ギルド。
ギルドマスターのドーガは公国の騎士団を名乗るメンバーを2方向に派遣していた。
なんとかなってくれ・・・と神にも祈るような気持ちで報告をまっているのだが・・・
ほどなくしてフォレストウルフ討伐に向かった2人の騎士が戻って来た。
「まいど~」
「今戻りました」
何でもないようにさらっと帰還報告を行う騎士2人。
「な、何?もう終わったのか?」
ドーガは信じられないと言った表情で確認する。
「ああ、終わったぜ」
「所詮狼ですからね」
全くもって2人の騎士にはフォレストウルフが脅威に感じられないようだ。
「ぜ、全滅させたのか・・・?」
「ああ、一匹も逃してないぜ」
正直ある程度仕留めた上で追い散らせばいいと考えていたドーガ。大体にして、フォレストウルフは賢い魔物であり、だからこそ集団で行動し、危険があれば逃げることもある。
追い散らされたフォレストウルフはまた群れを作るだろうが、それはまた時間をかけて討伐して行けばいいと思っていたのだ。それを一匹残らず殲滅させるとなると、ただ、倒すのではなく、逃げる暇さえ与えない圧倒的なスピードでの攻撃をこの2名の騎士が可能にしているという事の証明になる。
「フォレストウルフの死体は回収に来てくれた冒険者が居たから、そのうち届くと思いますよ」
「あれ、荷車2台だったけど、全部積めるかねぇ?」
「あ~、もしかしたら無理ですかね? 積んだとしても3人だったし、動かないかも?」
とんでもない事を言い出す2人。
しばらくすると町の西側入り口を守っている衛兵が馬で冒険者ギルドまで駆けつけて来た。
「ギルド長はおられるか?」
なかなかに慌ててやって来たその衛兵を見て、何かあったのかと心配するドーガ。
「俺がギルドマスターのドーガだ。どうした?」
「町の西門にEランクの女シーフでチーという者が走って来てぶっ倒れたんだ。
なんでも、フォレストウルフの死体を持ち帰る仕事を請け負ったらしいんだが、数が多くて荷車2台に乗せきれないうえに、たくさん乗せた荷車が他の男性冒険者1名で動かせないくらい重いらしいぞ。ギルドマスターに連絡して至急応援がいることを伝えに来たようだ。あまりに急いできたのか、西門でぶっ倒れたんで、理由を聞いたらそんな話だったんでな。俺が代わりに伝えに来た」
「なんだと・・・」
「あ~、やっぱり載せきれなかったか」
「というか、載るだけで帰ってこないのは結構義理堅いですねぇ。その場を離れてしまえば他の者達や他の動物にも狙われて持っていかれてしまうかもしれないし」
「あいつら、無理しないといいけどな」
「我々が帰還する時、魔物の気配はなかったので大丈夫だと思いますが、他の人間の動向はわかりませんからね・・・」
「シムス、ケンディ!」
「「は、はいっ!」」
お前達のグループでやつらを助けに行ってやってくれ。これはギルドマスターからの指名依頼だ。あまり金は払えんがギルドの貢献ポイントはサービスしておく」
「了解です」
「裏の倉庫の荷車2~3台は持って行って対応してくれ」
「わかりました早速向かいます」
2人が早々にギルドを出て行く。
シムスもケンディもどちらもDランクの冒険者パーティだ。各々5名のパーティを組んでいるので総勢10名、これでなんとかなるだろう。
「は~、すまん、伝言助かった」
「なに、気にするな」
そう言って衛兵は西門へと戻って行く。
「それにしてもとんでもねぇな。一体何匹狩ったんだ?」
「ん~、数えてないねぇ、めんどくさいし」
「そうですねぇ、視界の端から仕留めましたしね~」
嘆息していると、ルーカスが飛び込んでくる。
「大変だ!」
今度は何だとドーガが見れば戻ってきたのはルーカス。あまりにも早い。
「どうした!トラブルか!」
ドーラがまさか返り討ちにでもあったのかと心配したのだが、
「盗賊があっという間に全滅だ!あいつら、ホントにトンデモねーぞ!」
「盗賊を全滅させただと・・・? この短時間でか? 一体どうやって?」
「正直わからん。真正面から名乗りを上げて真っ向から突っ込んでいった。それも3人だけでだぞ!」
「さ、3人だけでだと!? 他の連中はどうしたんだ?」
「わからん、ただ、人質を連れだしてきた盗賊たちが謎の光線で頭を吹っ飛ばされて次々死んでいったんだ。おかげで人質として捕らわれていた人たちは全員無事に救出されている」
「・・・じゃあ、結果は万々歳なんだな?」
「その通りだが・・・人質とお宝を運ぶ用意をお願いすると騎士隊長のキース殿が伝えてくれと。そのために俺は先行して帰って来たんだ」
「・・・もうギルドに荷車はねーぞ・・・、ソーニャ、ジーニア」
「「は、はいっ!」」
受付嬢の2名、金髪が美しいソーニャ、黒髪メガネのジーニア。2人は同時に返事をして立ち上がった。
「ソーニャは馬車屋に行ってギルドの名前で緊急依頼を出して3台借り受けてきてくれ。ジーニアは商業ギルドに行って荷車を借り受けてきてくれ。作業員は不要だ。Eランクパーティに緊急招集をかける」
「「わかりました!」」
元気よく返事をしてギルドを飛び出して行く受付嬢たち。
問題が片付いたら片付いたで処理に問題が出る。だが、少しばかり贅沢な悩みだとドーガは気持ちを落ち着かせるように呟く。
「・・・とりあえず落ち着けるか・・・それにしても・・・あの連中・・・」
ドーガは再び溜息を吐いた。
所変わり、盗賊たちが巣くっていた旧砦―
「なんだか、いろいろ貯め込んでますね、隊長」
副隊長のケインがキースに話しかける。
「そうだな。盗賊の持っていたお宝は盗賊を倒した者に所有権があるんだったか?」
「そうですね。ただ、助けた人質の中にめんどくさそうなのが居ましたからね…ひと悶着あるかもしれませんね」
救出した人質は若い女性だけでなく、身なりの良い太った男もいたのだが、かなり喚き散らしていた。
「確かに面倒だが、そこはギルドマスターにでも任せるとしよう」
「ですが、我々は少しでも多くの外貨を稼いであの御方に送る使命がありますからね・・・。不当に報酬を削られるのは我慢ならないっすけどね」
少々剣呑な雰囲気を出すケイン。キースももちろんあの御方への期待に応えることを至上としている身だ。だが、ギルドマスターのドーガは信頼できる気がしていた。
「あのギルドマスターは信頼が置けると思う。まあ、報酬の心配は納得できない状況になってからにしようか」
「りょーかいでっす!」
おどけたように敬礼するケイン。
「・・・ボス部屋かな? いろいろ散らばってるが・・・」
建物内を回っているキースとケインは奥に位置する部屋に書類の類を見つけた。
「なんスかね、コレ?」
ケインがキースに書類の束の中から一部を渡す。
「ん~~~、読めないな。コレを使うか」
そう言って胸元からモノクルを取り出す。
「なんスか?それ」
「魔王様からお借りした魔道具だ。<翻訳の片眼鏡>という」
そう言ってモノクルをセットし、内容を確認する。
「こいつぁまずいな・・・」
「なんて書いてあるんスか?」
「ここの盗賊団の首領はどうもゲンプ帝国という国から送り込まれたスパイのようだな。このラインハルト公国内での盗賊活動を通じて国内攪乱を指示しているようだ」
「結構重要な資料じゃないですか?」
「だが、俺たちは休暇を取って勝手に旅をしている騎士団の設定だからな。国レベルの問題に首を突っ込むわけにはいかんからな。ギルドマスターに丸投げしよう」
「それでは、財宝と一緒に書類の束も何かの情報があるかもってことで、中を見ずに持ってきましたよって程でいいですか?」
「そうしよう」
一通り回って、財宝と書類の束、集められた武器防具以外に特に特別なものを見つけられなかった2人が砦から出ると、ちょうど助っ人たちが到着していた。人質たちは馬車に乗せられてセガンダルの町へ早々に出発する。
荷車で来た作業員に集めた財宝を回収するように指示を出したキース。
「初仕事としては十分な成果かな?」
あの御方によい報告が出来そうだと安堵するのであった。
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