第15話 パペット・マスターとの出会い
「魔王様とデート~♡ 魔王様とデート~♡」
るんたった~るんたった~と妖しい鼻歌を歌いながら魔王様の少し前を華麗なスキップで進んでいくドロステラ。
俺は今、サキュバスのお嬢様、ドロステラ・フル・レミントルグさんと城下町を散策中だ。
正直、王都、というにはこじんまりとしているので城下町と呼んでみた。
今、外貨獲得のために、魔国12将軍の1人、キース率いる軍団と亜人グループの選抜チームを人族の町へ送り込んでいる。そのうち活躍報告とともに獲得した外貨の一部が魔王城に届く予定だ。もちろん一部なのは彼らにも生活や給料の一部として外貨を渡しているからだ。
「魔王様~早く早く~」
といってドロステラが俺の手を取る。シルエットから意識して手だけは出しているのだ。
ドロステラに手を握られる。
国内の立て直しのために、町の状況を視察しに行くという話をしたら、ドロステラが「ぜひ私に町を案内させてください!」と申し出て来たので案内をお願いしている。
「ドロステラはどこか見たいところがあるか?」
俺がとりあえず聞いてみると、ドロステラはほっぺをプクッと膨らませる。
「魔王様、ドーラと呼んで欲しいのですわ」
ドロステラ、いや、ドーラが満面の笑みを浮かべて握った手に力を込める。
「じゃあこれから二人っきりの時はドーラと呼ばせてもらおうかな」
俺もにっこり?してそう伝える。さすがに12将軍が揃っているところでドーラとかなかなか呼べないよな。
「二人っきりの時だけ・・・」
顔を真っ赤にしてクネクネするドーラ。マジでかわいいな。
「さあドーラ、町を見て回ろうか」
俺はドーラの手を握りしめて歩き出した。
子供たちの元気な声が裏通りから聞こえてくる。
俺はドーラを伴って裏通りを覗いて見る。
「はーい! みんないい子でいたかなー?」
何やらテーブルらしきものに布が被せられ、台のようになっていた。人形劇でも始まるような雰囲気だ。
「「「「はーい!!」」」」
子供たちが元気に返事をする。結構集まっているようだな。こんな娯楽があるとは知らなかったな。
「それでは始まり始まり~」
パチパチパチパチ~と子供たちの拍手とともに、人形劇が始まる。
「がお~~~~~!」
明らかに魔王と思われる角の生えた黒ローブが端から出てきて乱暴な動きを見せる。
その後ろにいかにも悪魔ですと言った人形も続く。
「あれはパペットですわね。ゴーレムと似たようなものですが、パペットの方は自我を付加できない代わりに多くの数を別々に操ることが出来ると言われます」
ドーラの説明をフムフムと聞く、・・・え?そうするとゴーレムは自我を持たせることも出来るって事か?
「ええ、ただゴーレムに自我を持たせるレベルの魔法はかなり上位魔法に分類されますわ。通常はゴーレムでも簡単な命令しか付与できませんわ」
そのうち劇は魔王が人間を追いかけまわして意地悪をしているような感じになってきた。
「なんですの!?これ! ちょっとクレームを入れてきますわ!」
といって乗り込もうとするドーラを止める。結構気が短いな。
「ちょっと待て待て。面白いじゃないか」
俺は明らかに魔王様を悪者にしようとする劇に逆に惹かれるものを感じた。
劇中ではどんどん他の種族をやっつけていく魔王だが、最後に出て来た勇者のパーティにボコボコにやられてしまった。
「なっ!? なんてこと!」
人形劇の舞台に突撃しそうになるドーラを羽交い絞めにして引き留める。
ドーラは両手を子供のぐるぐるパンチのようにぶん回している。
ちょっとかわいい。
その後、魔王様と勇者が仲良く握手して肩を組み合い、ともに世界の平和を作ろうという話になっている。
「魔王様はやられちゃったの~?」
子供たちが次々に質問していく。
「魔王様はたくさん戦ったから疲れちゃったんだよ」
「勇者後から出てきてずるい~」
「でも勇者、魔王様殺さなかったね~」
子供たちがわいわいと色々意見を言っているのを見ながら満足そうにうなずく人形使い。
「そうだね。勇者は話し合いをすることが出来る人だったね。魔王様も頭が良くて話し合いが出来る人だったから、最後は話し合いで疑問を解消することにより仲良くなれたんだよ」
「魔王様は頭がいいんだ~」
「そうだね。戦争しないってみんなの前でお話ししてたし。みんなの事も守るって言ってたしね」
「そうなのです!魔王様は頭がすごーくいいのですよ!」
フンス!と胸を張って威張るドーラ。なぜ君がどや顔?
それにしても・・・この内容、脳筋派が見たら激怒モノだよな。
でも俺は面白かったね。何より、話し合いで何とかなるって子供に教えてるのがいいね。
実際唯の話し合いで何とかなることなんて数えるほども無いだろうけどさ。
子供たちが「バイバーイ!」と手を振って帰っていく。
早速俺たちもアプローチ開始だ。
「やあ、こんにちは」
気さくに俺様はあいさつする。
「はい、こんにちは」
人形を片付けながら挨拶を返してくる青年。結構若いかな。
「素晴らしいパペットですね。実に多彩だ」
俺は手放しで褒める。
「ありがとうございます。これでもパペット・マスターですので。多くのパペットを操るのはお手の物ですよ」
爽やかに笑う青年に好感触を得る。
「まあ、パペット・マスターでしたの? その若さでスキルをマスターまで昇華させたのですか?素晴らしいですわね!」
ドーラがテンションを上げて声をかける。なぜ俺の右腕を抱えている?
「子供のころから、友達が少なくて、パペットばかり動かしてましたからね。ウチは貧乏でしたから、家の手伝いをパペットにやらせたりしてましたし」
すげーな、パペット。万能だね。
「パペットはどうやって作るの?自由なデザインとか出来るのかな?」
「もちろんデザインは自由なんですが・・・。パペットを製作する土はある程度粘土を含む土を用意したうえで魔力を浸透させていくので、あまりに大きいものは作れません。出来た後のコントロールも大きいほど難しくなりますし」
「フムフム、それでは小さめで同じデザインの物をたくさん作って、同じような動きをさせることは可能かな?」
「そうですね。同じ動きならたくさんあっても大丈夫ですよ・・・もしかして、何かの勧誘ですか?」
笑いながら青年が問いかける。
「おっと、申し遅れました。私こういう者で」
といって名刺を渡す。
つい先日業者とあいさつするのに便利だと思って作らせたのが即役に立つとは。
「・・・ええっ!? 魔王様なんですか!?」
名刺を受け取って目を白黒させる青年。シルエット状態って、実は魔王って認識しずらい隠微状態にすることもできる。その逆に魔王アピールのため魔王オーラ全開で駄々洩れさせることもできる。とっても便利!
「私もこういう者ですわ」
ドーラも名刺を渡す。そういえばずいぶん気に入って一緒に自分の物も作ってたな。
「魔王様の秘書!?」
「魔国12将じゃないんだ?」
「もちろん、私は魔王様の秘書が優先ですわ!」
元気に答えるドーラ。
「それでは、先ほどのパペット劇はお気に障ったのでは・・・」
魔王である俺が劇の内容に不満や怒りを覚えていないか心配のようだ。
「いやいや、とんでもない。素晴らしい劇でしたよ。できれば、現実の世の中でも劇の如く話し合いで円満解決と行きたいところなんだけどね」
俺は苦笑しながら言った。
「あ、自己紹介がまだでした。私パペットマスターのトニーと申します。それで、私に御用とは・・・?」
それでも少し心配なのか用を聞いてくるトニー。
「実は、君のそのパペットを操る能力でぜひ依頼仕事があってね・・・」
俺はトニーの肩を抱き、コソコソと打ち合わせを始めた。
「こーいうパペットを連続で・・・」
「それだと魔力が苦しいので、これはこう変化させて・・・」
「それならばパペットでこう空を飛ばして・・・」
「なんだが、怪しい取引を行っているように見えますわ・・・」
ドーラは少し心配になった。
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