第14話 偽りの騎士団、馬鹿正直な騎士道精神を発揮する件につき
暑い日が続きますね。室内でも熱射病になる方もいらっしゃるとか。
しっかり水分をお取りになり、体調管理には十分お気を付けください。
「あそこが、盗賊団の根城だ。これ以上近づくと向こうの斥候に見つかる可能性が高くなる」
ルーカスに案内された場所は街道から3時間程度、打ち捨てられた旧砦だ。
「ふむ、盗賊団の斥候もぱっと見10名近くいるようだ。やはり大所帯のようだな」
キースは砦を見ながら呟く。
「隊長、どうします?」
副隊長格のケインがキースに聞いてくる。
「砦の内部はどうなっているのかわかっているのですか?」
ケインに回答せず、キースはルーカスに問いかける。
「いや、砦は古く内部構造が分かるようなものは残っていなかった」
「そうか・・・。ケイン、フォーメーションRだ」
「りょーかい、隊長。振り分けは?」
「トルネラ、クエントの2名はフォレスト・ウルフの討伐に向かっているからな・・・。
俺と、ザンバ、ヤンバルの3名が正面に立つ。ケイン、お前はトーレスとともに狙撃担当だ。内部遊撃にソピカを当てる。人質や奴隷など建屋内の調査を進めてくれ」
「あいよ。聞いたな、お前達」
「「わかりました」」
「ラジャ!」
「お任せを」
全員全身鎧に銀仮面を装備した格好だが、体格にある程度違いがあった。ザンバ、ヤンバルと呼ばれた2名はどちらかというと大柄な体型であり、ケイン、トーレスは中肉中背、ソピカと呼ばれた男は少し小柄なイメージだ。
「それでは盗賊退治に出かけようか」
実に何でもない事のようにキースが声をかけながら砦に向かう。
その後ろにザンバ、ヤンバルが続いていく。
「え・・・、真正面から行くのか・・・?」
ルーカスが信じられないと言った感じで呆れていた。
「騎士たるもの、当然正々堂々正面より敵を打ち破る」
キースが実に当たり前の事のように言う。
相手は非道な盗賊団100人以上だというのに。
僅か3人で砦に向かう騎士たち。
「とにかく、無事に帰って来てくれ・・・」
ルーカスはもう祈ることしかできなかった。
「ふぁぁ~、見張りは暇でしょーがねーよ」
「おいおい、敵なんざ来ねえからって油断するんじゃねーぜ」
「この前の商隊についてきた冒険者なんざ、まるっきり目じゃなかったじゃねーか」
「そりゃそうだけどよ」
「あーあ、今休憩中の連中はこの前攫ってきた女でお楽しみかよ~、早く俺たちも休憩にならねーかなぁ」
砦の見張り達は暇を持て余していた。そこへ僅か3人の全身鎧で固めた騎士がやってきて、まさかの口上が聞こえてくる。
「やあやあ我こそは流れの騎士キースである! 盗賊たちよ、大人しく縛に着くのであれば命の保証はしてやろう。返答はいかに!」
背中に背負うこれまた銀色のグレードソードを片腕で掲げるキース。
「「「はあっ?」」」
見張り達は大慌てだ。
奇襲されたわけでもなく、軍隊が攻めてきたわけでもない。
たった3人。3人の騎士がやって来て、俺たちを捕まえるという。
「「「ぎゃはははは!」」」
「おーい、馬鹿なお客さんがきたようだぜ!」
「ぶち殺せ!」
カーンカーンと警報のようなものが鳴り響き多くの盗賊が弓矢を持って出てくる。そして大量の矢が放たれる。
だが、
カンカンカンカン。
全身鎧に銀仮面を纏った騎士3人に対して全く矢が通用していない。
そのうちに盗賊団のボスが出てきたようだ。
「弓矢が効かねーなら魔法を打て!5人とも戦闘に参加させろ!早くしやがれ!第一陣は魔法を放った後突撃だ!」
キースは盗賊団の首領が出す指示を聞いていた。思ったよりもまともな指示を出している。
首領はもしかしたらどこかの騎士団で経験を積んでいたのかもしれない。
待っているうちに魔法が飛んでくる。
「<火球>!」
「<火矢>!」
火炎系の魔法が飛んで来る。キース達3人に直撃する・・・が、全く効いていない。
「なっ・・・」
明らかに異常だ。弓矢が効かないのは全身鎧の装備なら理解できる。
だが、炎の魔法も全く効かないとなると、相手の騎士の全身鎧は魔法の鎧か魔法耐性の強化が掛けられているかのどちらかだ。
そして騎士が動く。
「我らに敵対するということか。それでは仕方ない」
「気配感知、魔法感知、砦の一階手前あたりには人質はいないようです」
ザンバがキースに耳打ちする。
「剣技<地平斬>!」
キースが掲げたグレードソードを横なぎに振るう。
凄まじい衝撃波が広範囲に放たれる。
あっという間に胴が離れ離れになる盗賊たち。今の一撃で20名以上が屠られた。
「剣技<斬岩剣>!」
「剣技<両頭断>!」
ザンバ、ヤンバルも剣技を放ち、盗賊を屠って行く。
「なな、なんだこいつら・・・!」
盗賊の首領はただ、意味不明な正義感で騎士が紛れ込んできただけかと思っていたのだが、この3名の戦闘力は異常だった。まともに戦えば全滅も免れないかもしれない。
「おい!人質を連れてこい! 正面に押し出せ!」
盗賊団の首領は砦の奥に押し込んでいた人質たちを真正面に押し出すよう指示を出した。
それでも首領の不安はぬぐえなかった。
「ようトーラス。準備いいかよ?」
「いつでもOKですよ、ケインさん」
声を掛けられたトーラスは、背中に背負った大剣を鞘ごと肩に担いでいる。鞘先を砦方向に向けて構えたままの姿で待機している。
「魔王様より預かりしこのアーティファクト:<砲撃の剣>。しっかり使いこなせるようマスターしてますよ」
トーラスはいつでも発射できる態勢を取って、その瞬間を待つ。
「フォーメーションRだしな。必ずその瞬間は訪れるだろーよ。キース隊長の読みは外れねぇ。わざわざ救出しなければならない人質を目の前に連れてきてくれる瞬間がな」
キースたちは派遣される騎士全員が魔王より<砲撃の剣>を直接下賜された。
こんなアーティファクト、伝説級の武器を大量に用意して、あっさり部下に与える。
一体魔王様はどれほどの懐の深さを有しているというのか。
「来たぜ」
気負うでもなく、ケインが事実を淡々と述べる。
「いつでも」
トーラスが肩に<砲撃の剣>を構えたまま答える。
「てめえらぁ! この人質が見えねぇか! 人質を殺されたくなければ、今すぐ武器を捨てて・・・」
「ファイア」
ケインの言葉に2人同時に<砲撃の剣>を撃つ。
キュバッ!
白い光線となったエネルギーが人質を取っていた盗賊の頭を直撃、ザクロのように吹き飛ばす!
「なあっ!?」
そして人質の近くにいる盗賊たちも寸分たがわず狙撃していく。
キュバッ! キュバッ! キュバッ!
そしてバタバタと倒れて行く盗賊たち。
そこを逃さずキース達が砦に接近して行く。
もはや盗賊たちにはキース達騎士団との接近戦で対応できる戦闘力も無く、次々一刀のもとに切り捨てられていく。
「ななな・・・なんだこいつらは・・・」
盗賊団の首領は信じられないものを見るような気持だった。目の前で次々吹き飛ばされ切り裂かれていく部下たち。謎の光線の狙撃で頭を吹っ飛ばされる部下たち。人質など何の効果も無い。今すぐ逃げなければ!
だが時すでに遅し、首には大剣が付きつけられていた。
「どこへ行こうというのかね? 首領殿」
騎士団のリーダーらしき男が目の前にいた。
「・・・へへ、俺を殺すかい? だが俺を殺すと砦の中の仲間が人質をどうするかわからんぜ」
脂汗を浮かべながらもニヤ突く首領。だが騎士団のリーダーらしき男は取り立てて反応を示さない。
「おいっ!どうするんだ! 俺を殺せば大変なことになるんだぞ! 早く引け!」
首領は騒ぎ出すが、目の前の男は微動だにしない。
「ソピカ。どうだ、終わったか?」
「隊長、オールクリア。砦内制圧完了。残りの人質も安全確認済みだ。砦内に残っているのはわずかだったが、すでに片付けている」
「なあっ・・・!」
首領は二の句が継げなかった。すでに砦を制圧? 一体いつの間に・・・?
「ソピカご苦労。ケイン達と合流して救出した人たちをセガンダルの冒険者ギルドまで案内してくれ。俺たちは一応砦内の確認を行ってから戻るよ。案内人のルーカスを先に冒険者ギルドまで返してギルドマスターのドーガにまた荷物を運ぶ冒険者を寄越してくれるよう頼んでおいてくれ」
「アイアイサー」
おどけるように答えるソピカ。
こうして砦に巣くった盗賊団はあっさりと壊滅することとなった。
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