第11話 影の一族
「メリッサ、少し相談したいことがある」
俺はそばに控えるメイド長メリッサに声をかけた。
「なんでしょうか、魔王様」
「諜報活動に秀でたメンバーがいれば推挙してほしいんだが」
そう、諜報活動。これ大事。
何といっても国内外の情報を集めなければならない。
そのためには諜報活動に秀でたメンバーを多くそろえなければならない。
取得した情報を元に今後の対応を検討していかねばならない。そのためにも
精度の高い情報が必要だ。
ピィィィィ!
メリッサが唇に華麗に指を2本当てて口笛を吹く。
メリッサマジかっこいい。俺にはできない芸当だ。なんせ口笛吹けないからな。
ゆらりといつの間にかメリッサの後ろに2名のメイドが傅く。
「お呼びでしょうか?メリッサ様」
2名の問いかけには答えずにメリッサは魔王の方を向いたまま説明する。
「レン、ランの2名にございます。二人とも隠密活動に秀でており、魔王様のご期待に沿えるものと考えます」
「「何なりとお命じくださいませ、魔王様」」
レン、ランの2名も何のために呼ばれたのか即座に理解したのか、魔王への忠誠を見せるかの如く答える。
「メリッサの手の者か。かなり期待できそうだ。ぜひ協力してもらいたい。追ってメリッサには調べてもらいたい内容を纏めて伝えるようにする。頼むぞ」
「「ははっ!」」
「それとは別に、諜報部のように大人数で世界情勢を調査に行ける集団に心当たりがあるか?」
メリッサにさらに問いかける。実はメリッサの手の者にこんな諜報活動に優秀そうなメイドがいると思ってなかった。もっともメリッサの片腕何だろうから、長期に国外に諜報活動に出かけるには不向きだろう。そういう意味では諜報活動を専門とする部隊を新設しなくてはなるまいな。
メリッサは頬に手を当てて少し考え込むが、何か思いついたのか表情が明るくなる。
「それであれば心当たりがございます。以前の脳筋な魔王様の時には重要視されなかった一族がおります。専属の使命を与えると言えば喜んではせ参じるでしょう」
「そうか、それでは手配よろしく頼む」
「かしこまりました」
それにしても・・・、以前の脳筋な魔王様って。俺をディスってるならまだいいけど、まるで魔王様の中身が別人に入れ替わった・・・なんて考えてないよね、メリッサさん?
― 後日
「お前達がメリッサ推薦の者達か」
「ははっ! 影の一族にございます」
傅く先頭の男が答える。全身黒ずくめ。どっからどう見ても忍者。それ以外に見えないし。
某黒ずくめの組織とも違う。明らかに忍者。
「名前は?」
「はっ! 我ら影の一族に名前などございません。陰に潜み陰に生きる者たちにございます」
「Oh・・・」
名前すら無いと来た。お互い呼ぶときどーするのよ?
「名前がないと、俺が呼ぶとき不便だな」
「それでは僭越ながら一族の長である拙者に名前をお与えいただければ。部下には私から指示を出します」
ふむ、とりあえず影の一族の長に名前を与えるとしよう。諜報活動に0O7・・・いやいや、和風な感じだしね彼ら。
「わかった。お前に『ハンゾウ』の名を与える。古来より忍びの一族の頭領が名乗る由緒ある名である」
もちろんテキトーだ。前世の世界での知識から拾ってみた。
忍びと言えば服部半蔵だよね! やっぱり。
「ははっーーーーー! そのような名があるとは存じ上げませんでした。身に余る光栄にございます。一族郎党身命を賭して魔王様にお仕えいたします!」
ふふふ、これで忍者ゲットだぜ!
今一番俺に足りていない、他の国の情報を何としても手に入れねば。
情報を制する者は世界を制す!
大魔道の研究に、メリッサの子飼いの2人。さらにこれで諜報部として忍者部隊を確保だ。メリッサの子飼いには国内情報をメインにしてもらって、忍者部隊に国外の情報収集活動を頑張ってもらおう。
「お前たちが影に紛れて情報を収集する能力があるのは十分に理解できるところだ。だが、それ以外に人間の国に出向いて、人間族の生活の中で情報を収集できるか?」
俺は元の世界での忍者は戦闘力が高く俊敏で闇に潜むイメージとは別に、変装も得意で人々の生活の中に溶け込んで隠れた情報を引き出していくことが出来ると知っていた。だからこちらの世界の影の一族が見た目まんま忍者だったから、いろいろ出来るか期待して聞いてみた。
「もちろんでございます。今はこのような黒装飾でございますが、人間の世界で活動できる格好に変装することも可能でございます。ぜひお任せください」
頭を垂れたまま自信を持って回答するハンゾウ。よし!大期待だ。
「よし!ハンゾウ。それではすぐに情報収集にかかってもらいたい。優先的に欲しい情報は各国の国力を判断するための材料だ。その国の指針、政治形態、防衛能力、軍事能力、傑物した注目すべき人材なども頼む。王都などの大きな町だけでなく、辺境での町や村での情報収集も頼むぞ。特に辺境では魔国へのイメージ、基本的な町や村での人間族の生活レベルなども情報として掴んできてくれ」
「わかりましてございます」
「月に1回は直接報告が欲しい。それ以外でも逐次情報を送ってくれ。もちろん緊急性の高い情報は即報告頼むぞ」
「ははっ!」
力強く返事をするハンゾウ。頼もしいね。
「それでは、早々に情報収集に出向いてまいります」
言うが早いか、自分の影に沈み込み、そして消えてしまうハンゾウ。
・・・マジか。
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