第4話:毎日の日課~レッツハローワーク!~
昼食を食べ終えて一息ついた後、俺は毎日散歩がてらにハローワークに足を運ぶ。
ハローワークは自宅から歩いて二十分ほどの距離にある。
ボスと結婚してこの土地に引っ越して来た時には、ハローワークのご厄介になるとはゆめゆめ思わなかった。
昨年末に玩具会社をリストラされて以来この半年間足繁く通うようになり、今ではハローワークで働く職員さんとも顔なじみだ。
ハローワークへ向かうと入口の階段脇で求人票を片手にしかめっ面をしている顔なじみを見つけた。元金型職人の玄さんだ。俺は玄さんに声をかけた。
「こんにちは、玄さん。良い仕事見つかった?」
「おう、竜ちゃんか。ダメだねぇ。からっきしダメだねぇ……」
「そっか……」
「竜ちゃんはこれからかい?」
「うん、これから。カミさんに今日から専業主夫になれって言われちゃったよ」
「専業主夫かぁ。専業主夫も大変だよ。それでもここに通うとはご苦労なこったね」
「まだ初日だから大したことしてないけどね。ま、仕事が見つかるまではここに通うつもりだから」
「そうかい、頑張んな!」
「うん、玄さんもね」
俺は玄さんとの短いコミュニケーションを終えるとハローワークの入口に向かった。
ハローワークの入口を通ると正面に検索端末機の利用窓口がある。俺は窓口の職員から検索端末機の番号札を受け取り、番号札に記載されている利用可能な検索端末機の席に向かった。
検索端末機の利用可能時間は三十分、求人票の印刷できる枚数にも制限がある。いかに早く希望条件に沿った良い求人票を探し出せるかがポイントだ。
俺が狙っている求人は警備員やガードマンなどの職種だ。
俺は一見華奢に見えるけど、自分で言うのも何だが細マッチョで、こう見えて空手三段、柔道二段の腕前だ。
希望条件を次々と入力していき検索ボタンを押す。検索すると該当件数は一件、該当した会社の会社名は平和玩具株式会社。昨年末に俺をリストラした会社だ。毎回同じ検索結果だ。検索結果を見るたびに怒りがこみ上げてくる……。
俺が平和玩具株式会社に勤務していた頃はお客様相談室に在籍していた。
平和玩具株式会社では、おもちゃの製造・販売だけではなく、お客様にちょっと変わったサービスを提供していた。
そのちょっと変わったサービスというのは、ベビーシッターの派遣、お子様向けのボディガード派遣サービスだ。俺は空手三段、柔道二段の腕前を買われてボディガードをやっていた。
ボディガード派遣サービスの用途は、裕福な家庭のお子様の学校への送り迎えや、小学校での集団下校時の通学路の監視がメインだった。
落ち着け、竜作。クールにいこうぜ、竜作……。
俺は希望条件を少し低く設定して再度検索ボタンを押した。検索結果は該当なし、ゼロ件だった。
「今日も空振りか……」
検索端末機の画面を見つめながらつい独りごちてしまった。
俺は席を立ち窓口に向かい、検索端末機の番号札を職員に返却してハローワークを後にし自宅へ戻った。