第3話:侘しい昼食
時計は十二時を過ぎた。昼飯時だ。腹が減った。
俺はキッチンに向かい冷蔵庫を開けた。
冷蔵庫の中には昨日の晩飯のおかずは残っておらず、腹の足しになるような食材は見当たらなかった。
いや、正確には野菜室にはキャベツやニンジンが、冷凍庫には冷凍されている牛肉や豚肉、冷凍食品が、キッチン脇に置いてあるバスケットの中にはジャガイモやタマネギがある。食器戸棚の引き出しの中や、食料庫の中にも調理して食べられる食材はたくさんあるのだが、新米主夫の料理スキルは極めてゼロに近く、元来のものぐさな性格が何かを調理して食べようという気を起こさせなかった。
「アレ」しかない。
これまでも幾度となく俺の窮地を救ってくれた「アレ」しかない。
炊飯ジャーの中には飯が一人前残っている。
冷蔵庫の中には生卵がある。
俺の今の料理スキルとモチベーションで作れる料理は一つしかない……。
俺は丼に炊飯ジャーの中に残っている飯を一粒残らずぶち込むとレンジでチンした。
レンジで温めた丼飯をすかさず取り出し、生卵を割り入れ醤油をほんの少し垂らす。
今日の昼食はこれで完成、「竜作特製卵かけご飯」のできあがり!
「いただきます」の挨拶をするやいなや、飯をかきこむ。ただひたすらに一気にかきこむ……。
今ひと時だけの飢えがしのげればそれでいいとでも言わんばかりに無心で食った。
飯の一粒たりとも残さず食べ終えた時、俺の心中に去来したのは侘びしさだった……。
侘びしさを感じながらもコップ一杯分の水を飲んで一息ついた。
他の家事なら一人暮らしの時に経験済みだ。なんとかできるはず。
しかし、料理に関しては目玉焼きとカレーが作れるくらいだ。
ボスに料理を教えてもらおう。
カレールウの買い置きがあったはずだ。今夜の晩飯はカレーにしよう。
俺は侘びしさを紛らわすため食後の一服を吸うためにベランダへと向かった。