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第30話:新国王誕生

 八月二日土曜日の午後四時。ガルジヤ王国の国王専用ジェット機とイブリース王子を護送する小型ジェット機が羽田空港に降り立った。その二時間前に俺の自宅マンション前にお迎えの黒のミニバンがやって来た。住崎さんとボスと俺はミニバンに乗り込み、エドガーの運転で一路羽田空港に向かった。

 昨晩の大使館から自宅までに帰る車中の中で、慣れないガルジヤ王国での執務を考慮して、虎之介の提案で当分の間住崎さんを俺の秘書に付けてくれることになった。

 ボスは「私には仕事があるから、竜作が勝手に国王になるって決めたんだから、ガルジヤ王国へは一人で行ってちょうだい!」と、ガルジヤ王国への同行をあっさりと断られた。

 羽田空港の出発ロビーに着くと、虎之介が俺の到着を待っていた。イブリース王子の部下だったゴツい体格をしたネクタイゴリラ達を従えての登場で、虎之介は容易に俺を見つけることができたと言っていた。

 午後四時半。住崎さんと俺は六人のネクタイゴリラ達の警護の中、ボスと虎之介に見送られ、国王専用ジェット機に乗り込みガルジヤ王国に向けて飛び立った。時を同じくしてイブリース王子を護送する小型ジェット機もガルジヤ王国に向けて飛び立った。

 日本とガルジヤ王国では三時間半の時差がある。およそ十時間のフライト時間を経てガルジヤ王国に到着すると、現地の時刻は午後十一時だった。住崎さんと俺は国王宮殿に招き入れられ簡単な夜食を食べるとすぐに眠りについた。




 翌日は、午前十一時から国王宮殿内で新国王の即位式が執り行われた。即位式が行われたことで俺は正式にガルジヤ王国の国王になった。

 即位式の三日後にはガルジヤ王国の首都、ガルジスにおいてオープンカーに乗り新国王即位のパレードが行われた。ガルジヤ国民は俺の国王即位に対して歓迎ムード一色のようだった。




 ガルジヤ王国の国王に即位してから二ヶ月が過ぎた。エドガーとシュウゴとロウは俺の専属のボディガードの任務に付いている。国王の仕事は退屈で俺は暇を持て余していた。

 それと言うのも、ほとんどの執務は住崎さんとハデス国王補佐官の間で執り行われ、ごく稀に住崎さんが俺に対してお伺いをたてるくらいだった。

 俺は毎日住崎さんに「帰りたい。恭子に会いたい。トミーズキッチンのジューシーハンバーグが食べたい」などと駄々をこねていた。

 そんなある日、俺はとうとう我慢の限界を超えた。

「……、住崎さん、俺、もう我慢の限界! 今すぐにでも日本に帰りたい! 国王の執務を誰かに代わってもらえることはできないか?」

「……、そうですね。ガルジヤ王国の法律では、国王の命令により複数人の第三者に国王の権限を移譲することができるそうです」

「そ、それを早く教えてよ、住崎さん! 早速エドガーとシュウゴとロウをすぐここに呼んで来てくれ!」

「りょ、了解しました」

 およそ五分後、エドガーとシュウゴとロウの三人が国王執務室に入ってきた。

 エドガーとシュウゴとロウの三人は片膝をつき頭を深く下げた。

「竜作国王、オ呼ビデショウカ?」

「三人を呼んだのは他でもない。エドガー、シュウゴ、ロウ、お前達三人を次期国王として任命し、俺の持つ国王の権限を移譲する! お前達三人なら俺以上の国王としてガルジヤ王国の役に立つはずだ! ハデス国王補佐官、異論は無いですよね?」

「竜作国王、ヨ、ヨロシイノデスカ?」

 俺の言葉にシュウゴが質問した。

「三人ハ優秀ナ者達デス。私カラノ異論ハゴザイマセン」

 ハデス国王補佐官がエドガー、シュウゴ、ロウの三人を後押しする言葉を述べた。

「それじゃ、決まりだな!」

「微力ナガラ謹ンデ拝命イタシマス!」

 エドガーが丁寧な口調で言った。

「最後に俺からの国王としての命令だ。すぐに国王専用ジェット機を用意してくれ! 今すぐ日本に帰る!」

「ハッ! スグニ手配イタシマス!」

 俺の命令に対してロウが即座に答えた。

 こうして俺はおよそ二ヶ月間に及ぶ国王生活にピリオドを打ち、住崎さんとともに国王専用ジェット機に乗って一路日本に向かった。




 ボスに会いたい。ボスを思い切り抱きしめ濃厚なキスを交わしたい。俺の一物はおよそ二ヶ月間の禁欲生活で暴発寸前だった……。

 俺の乗る国王専用ジェット機が、あと三十分ほどで日本に到着するというところで、キャビンアテンダントが機内電話を持ってやって来た。

「竹田様、奥様からお電話が入っております」

「ああ、ありがとう」

『竜作、元気? 私、今ガルジヤ王国に着いたところ。竜作を驚かそうと思って内緒で来ちゃった!』

『へっ? 俺、今日本に戻ってる最中だよ!』

『あらら、すれ違っちゃったのね……』

『俺、今すぐガルジヤ王国に引き返すから恭子はガルジヤ王国で待っていてくれ!』

『うん、わかったわ!』

 機内電話を切ると俺はキャビンアテンダントに叫ぶように伝えた。

「CAさん、今すぐガルジヤ王国に引き返すようにパイロットに伝えてくれ!」

「竹田様、それは無理でございます。このジェット機には日本とガルジヤ王国間を往復する分の燃料を積んでおりません。日本到着後、このジェット機はメンテナンス作業に入ります」




 なんだって? そりゃないぜセニョリータ……。




 国王専用ジェット機が使えないとわかった俺は、日本に到着後すぐにガルジヤ王国行きの飛行機のエコノミークラスのチケットを入手してガルジヤ王国にとんぼ返りした。




 ボス、エロい下着を着けて待ってろよ! ガルジヤ王国で情熱的で濃密な夜を過ごそうな!

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