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第14話:「ココデース」~ボスを守る大切なお守り~

 午後三時。俺は虎之介と別れた後、駅前のデパートのおもちゃ売り場に足を運んだ。

 理由は二つ。俺につきまとう奴らの人数の把握と「お守り」の購入だ。

 昼間のデパートのおもちゃ売り場に黒スーツにサングラスをかけた奴らは自ずと目立つ。俺に張り付いてるのはゴツイ体格をした奴が三人だ。

 俺はおもちゃ売り場のキャラクター商品コーナーで「ココデース」を選んでいた。

 「ココデース」とは、平和玩具の大ヒット商品でGPS機能搭載の防犯ブザーのことだ。本体のボタンを押すと、けたたましいサイレン音を発し周囲に危険を知らせる。付属の専用ソフトをパソコンにインストールすると、ココデースを持った対象者の位置情報が地図上に表示されるという優れものだ。

 元々は子供向けの商品なのだが、若い女性が防犯用として購入するのも少なくない。姉妹商品の男の子向け商品「ココデッサー」も同様にヒットしている。

「よし、これにするか!」

 俺は陳列棚から気に入った一つを手に取りレジへと向かった。

 会計を済ませ自宅へと向かう。奴らは付かず離れず俺の後を付いて来る。

 自宅に戻ると自室の俺専用のデスクトップパソコンとノートパソコンにココデースの専用ソフトをインストールした。

 動作確認。ココデース本体の電源スイッチを入れ、専用ソフトを起動させる。今俺のいる位置情報が地図上に表示される。次にココデース本体の防犯ブザーボタンを押す。すると瞬時にけたたましいサイレン音を発した。俺は即座に防犯ブザーの解除ボタンを押した。よかった、俺の買ったココデースは正常に動作している。

 ココデースの動作確認を済ませるとたばことライターと携帯灰皿を持ちベランダに向かった。

 たばこを吸いながら階下を覗くと、自宅の前の道路脇の電柱に隠れて俺の方を見ている黒スーツにグラサンの奴を見つけた。俺と目が合い奴は慌てて電柱の陰に隠れる。ゴツい体は電柱の陰には隠れずバレバレだ。

 一体奴らは何者なのだろう?

 たばこを吸いながら考える。しかし、これといって心当たりはない。

 虎之介と虎之介の部下達が調査を進めていると言う。俺はしばらく目立った行動はしない方が良さそうだ。

 吸い終えたたばこを携帯灰皿にもみ消し、二本目のたばこに火をつけた。




 たばこを吸い終えた俺は自室に戻り、たばことライターと携帯灰皿を置きキッチンに向かった。

 今夜の夕食はカレーだ。専業主夫を始めて一ヶ月、俺の料理スキルは全く向上していない……。

 ボスからもらった俺専用のエプロンを着けてカレーを作り始める。

 カレーを作っておけば翌日の昼食にも食えるので昼食に何を食おうかと困ることはない。その気になればカレーうどんにもアレンジができる。

「明日の昼飯はカレーうどんにしよっかな~」

 俺はカレーを作りながら独りごちた。

 カレーやハヤシライスを作った日には、必ずボスに携帯電話でメールを送ることにしている。

『カレー作ったよ。残業は早めに切り上げて帰って来てね。』

 およそ五分後、ボスからの返信メールが届いた。

『ありがとう。今日は忙しくて夕食作る気力が失せてたの。本当に助かるわ。疲れているので今日は残業しないで帰ります。』

『ああ、待ってるよ。今日は恭子にプレゼントを買ったんだ。帰って来たら渡すよ。』

 プレゼントを買った旨のメールをボスに送ると即座に返信メールが返ってきた。

『わぁ、なになに? 楽しみ~♪』

『帰ってきてからのお楽しみだ。気をつけて帰って来てね。』

『は~い!』

 ボスの勤めている会社はまだ就業時間中だ。

 就業時間中とわかっていてメールを送る俺も俺だが、即座に返信メールを返してくれるボスもボスだ。就業時間中の私用の携帯メールのやり取りをボスの上司に咎められないのだろうか……。

 カレーを作り終えると、自室に戻りたばことライターと携帯灰皿を持ち、再びベランダに向かった。

 たばこを吹かしながらさりげなく階下を覗く。相変わらず黒スーツにグラサンの奴は道路脇の電柱の陰に隠れて俺を見張っている。

 やれやれ、ご苦労なこった。それにしても奴らは腹が空かないのかね?

 たばこを吸い終えると俺は、ダイニングテーブルの椅子に腰をおろしテレビの電源をつけ、夕方のニュース番組を見ながらボスの帰りを待った。




 午後七時過ぎ。ボスが無事に会社から帰宅した。

「ただいま~。竜作、プレゼントってなになに?」

 帰宅するやいなや、ボスは俺にプレゼントについて聞いてきた。

「おかえり。プレゼントは飯を食った後に渡すよ。俺、腹ペコだ。早く部屋着に着替えてきなよ」

「は~い」

 今日のボスは機嫌が良い。俺のプレゼントに期待しているようだ。

 ボスが部屋着に着替えている間に俺は皿にカレーライスを盛り付けた。

 部屋着に着替えたボスがダイニングテーブルの椅子に座ると、早速「いただきます」の挨拶をしてカレーライスを食べ始めた。

 カレーライスを食べながら俺は、ボスに「何か変わったことはなかったか?」と質問した。その質問に対して、「特に変わったことはなかったわ」というのがボスの返事だった。




 夕食を食べ終えた後のまったりタイム。俺はボスに「ココデース」をプレゼントした。

「これ、プレゼント。防犯ブザー機能付きのキーホルダーだ。会社用の鞄に付けてくれ」

「うわぁ、かわいいキーホルダーね。ありがとう、竜作!」

「物騒な世の中だからね。ちょっとしたお守りだ」

「ふふふ……」

 俺からココデースを受け取ったボスがにわかに笑い出した。

「どうした? なんで笑ってんの?」

「竜作がデパートのおもちゃ売り場でこれを選んでいる姿を想像したら、なんだか笑いがこみあげてきちゃった」

「まぁ、場違いと言えば場違いだったな……」

「ふふふ、ありがとう竜作。明日からこれを付けて出勤するわ」

「ああ、そうしてくれ」




 食器洗いを済ませ風呂に入り歯磨きを済ませてベッドに入り込む。

 午前三時、俺は寝付けずにいた。

 ボスを起こさないようにダブルベッドからそっと抜け出て、自室からたばことライターと携帯灰皿を持ちベランダに向かう。

 たばこに火をつけ目を凝らしてそっと階下を覗く。

 黒スーツにグラサンの奴は道路脇の電柱の陰から姿を消していた。

「ふう……」

 ため息一つ。俺は外壁にもたれかかりながら夜空を眺めた。

「頼むぜ、ココデース。ボスのことを守ってくれよ……」

 下弦の月を見つめながら俺は小さく独りごちた。

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