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――姫、またこんな所に来て。何かあったのですか?
誰も来ないだろうと思っていた、城からは死角となる場所。
何度目かにそこに訪れた時に、私は彼に出会った。
エニシダの花のような金色の髪と血のように赤い瞳。
初めて彼を目にした時私はその目を怖く思ったけれど、力なく笑った彼にどこか惹かれてしまったのだ。
「あまり良い状況とは言えません。どうされますか?王よ」
城の一室に数人が集まって何やら話している。
重い雰囲気に包まれた中、一人だけ椅子に座っていた男性が口を開く。
「仕方ないが、降伏するしかない・・・だろうな」
「やはりそれしか方法はありませぬか・・・。しかし相手方がそれを飲んでくれるかは」
「おそらく反故にされるであろう」
男性の言葉に誰も反論出来なかった。
部屋の中を沈黙が支配し、時間だけがゆっくりとしかし確実に過ぎていく。
沈黙に耐えかねたかその中では比較的若い男性が発言しようと手を挙げた時、部屋のドアが勢いよく開けられる。
部屋の中の全員の視線が入口に向く。
入口に一番近かった人物が入ってきた兵に問う。
「何の用だ?」
「会議中失礼致します。先程戦地で召喚師が現れてこちらに味方しているとの報告が入りました」
「状況はどうなんだ」
「見た目は若いのですが高位の者らしく、徐々に押し返しつつあると」
兵の報告に誰かが安堵の息を吐く。
「ならば、気を緩めず戦闘を続けるように伝えろ」
王の言葉に兵は頷き、部屋を出ていった。
仕掛けられた大国との戦争は一人の人物によって大きく変えられる事になるのであった。