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キギ  作者: 白信号
3/6

葉内小鳥 ―人食い図書― そのに

 事の発端は三日前の事でした。


 私と友人は放課後、本を借りに図書室まで来ていました。

 最近ドラマ化した小説の、原作が読みたいと私が言ったことがそもそもの原因です。

 図書室には他の生徒もいなく、司書の先生も不在でした。

 私たちはそのことを気にすることなく、図書室の中で本を物色していました。

 一時間くらい経ったときでしょうか。時間はそう、丁度今と同じぐらいだったと思います。

 友人が図書室の奥にある本棚の、とある一冊の本を手に取ったのです。


 その本の題名こそ、『人食い図書』。


 他の並べられた書籍に比べて、薄い本でした。同時に、随分古めかしい本でもありました。

 明らかに怪談話の本だとは思いましたが、彼女は別段、怪談が好きという訳ではありません。むしろ、怖い話は避けて通るような性格でした。

 しかしその時の彼女は何を思ったのか、その本を開きました。それも初めのページではなく、本の中腹くらいの場所を開きました。

 彼女が何を思ってそんな行動に出たのか私には分かりません。もしかするとその子は既に何者かに操られていたのかもしれません。


 そして彼女が本を開いたその次の瞬間でした。開いたその本が、まるで意志を持った生物でもあるように、いきなり友人の手を挟んだのです。

 いえ、実際に目撃した私から見れば、噛みついた、という表現がぴったりだったと思います。

 その本は、まるで獣のように、友人の体に噛みつきました。

 彼女は悲鳴を上げて驚き、その本を振りほどこうと腕を振り回しましたが、それは全く、離れることはありませんでした。


 そうして次にその本は、友人の体をどんどん呑み込んでいきました。

 最初に腕が呑み込まれました。

 次に頭が消えました。

 同時に悲鳴も無くなりました。

 更に胴が飲まれました。

 明らかに本の見開きよりも大きな彼女の胴は、しかしそんな些細なことなどどうでも良いだろうとでも言うように、まるでそれが当たり前の法則であるかのようにざくざくと彼女の体は本の中へ引きずり込まれて行きました。


 最後に足が飲まれて、ついに友人は跡形もなく消えてしまいました。



 友人が呑み込まれるのにかかった時間は恐らく1分程度ですが、その間私は有り得ないことが起こった驚きと、友人が消えてしまう恐怖で何もできずにいました。


 それから数分後、やっと現状を認識した私は、友人を呑み込んでからはぴくりとも動かないその本を恐る恐る開きました。

 本を開いても、私が本に呑み込まれるということはありませんでした。


 中を見てみれば、なんの変哲もない、唯の書籍のようにしか見えません。

 その本の内容を見てみると、題名通り、人食い図書について記されてありました。人食い図書と言われても本当なら何の事かもわからぬ私でしたが、ついさっき経験した出来事が、そうでない筈も無く、正にその本に載っていたのは、私が、私の友人が今体験したことのそのままでした。

 とはいえ当然主人公の設定など、細部は異なります。


 しかしその人食い図書には続きがありました。

 薄いとはいっても百頁を超える書籍です。一つの物語だけでは余ってしまいます。

 その次の物語は、同じく人食い図書に関するものでした。先ほどとは主人公や時代背景が違うようでしたが、やはりあらすじは変わりませんでした。


 更に次の物語も、人食い図書でした。

 更に次の物語も、人食い図書でした。

 更に次の物語も、人食い図書でした。


 私は恐る恐る次のページを開きました。恐らく、残りページで考えると、次が最後の物語のようでした。


 そして私の予想通り、次の物語も今までと同じように、人食い図書でした。


 主人公は私の友人。そして私も登場します。あらすじはそのままで、私たちの今までの出来ことが事細かに記されてありました。

 そこで私は気付いたのです。



 その本、人食い図書は、最初に発見した時よりも少しだけ厚くなっていたのです。


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